55.奇妙な関係④
遅くなりました。今回は難産でした。と言いたいところですが、お盆の行事のせいで書く暇がありませんでした。ついでに女子会にも行ってきました。
楽しかった!久々に、飲み屋をはしごしたYO!!
桐華はしげしげと陸の顔を眺めていた。気付けば日は傾き、窓の外はいつの間にか真っ暗になっている。
整った顔立ちの青年、陸は見ても見飽きない。ベッドの反対側で同じようにパイプ椅子に腰かける吉良も顔立ちの整った青年だったので、思わず見比べてしまう。
吉良は今は持っていた小さな肩掛けバッグから小説を取り出して読んでいる。漫画くらいしか読まなそうな印象だったので意外だった。
見た目で言うならば自分の方がそういう印象かも知れないと思い直して、桐華は小さく笑う。相変わらず黒やグレーなどの色を好む自分の服装のせいか、派手な作りの顔のせいか桐華は頭が悪いと思われることが多い。確かに高卒で勉強もろくにしなかった桐華だが小説を読むのは昔から好きだった。
年間百冊は小説を読む彼女は、いつの間にかいろいろな知識を吸収して文学――と言うほどでもないが――に関しては人並み以上になっていた。
それから職業柄、法律とパソコンの知識もそれなりに。高校を卒業するまでパソコンのパの字も知らなかった桐華だったが、今は一般的なソフトなら大体の物は使いこなせるレベルになっている。
彼女の将来の夢は小説家だった。今は違う職業についているが、まだ夢は諦めていない。
「なに?」
不意に声を掛けられて桐華は我に返った。文庫本の文字を追っていた吉良の目が桐華に注がれている。
「あー、ごめん。ぼーっとしていたわ」
「そっか。俺の顔に穴を開ける気なのかと思ったんだけど」
「ごめんなさい。とか……陸君と少し似てるかなって思ったから」
{そう?」
よく見ると吉良の顔が少し赤いように見えた。
「あたしにガン見されて恥ずかしくなっちゃった?」
「少し?桐華さん美人だし」
「それサラッと言っちゃうから嘘くさいのよ~」
逆に桐華が顔を赤らめて俯いてしまう。
「んがっ!……ん~……」
隣で先ほどから居眠りをしている正樹が椅子から転げ落ちそうになったが踏み止まる。しかもまだ寝ているらしく目は閉じたままだ。
驚いて桐華は、正樹に顔を向け様子を伺うが、眠り続けていることを確認するとくすりと微笑んで、膝から落ちた正樹の左手を元の場所に戻した。
「優しいんだね」
「え?あたし?」
吉良は頷く。
「あたしの相馬君に対しての態度覚えててそれ言う?」
「俺には冷たいね」
吉良はため息交じりにぼやいた。
「その顔で、ああいう台詞サラッと言っちゃうからよ」
「女の子には受けがいいんだけどなあ」
「私はもう女の子じゃないわよ。四捨五入したら30歳」
「年齢を四捨五入するのって意味わかんなくない?」
「確かにね。けど、そういう人結構多いのよ」
「これからは、俺にもこんな風に話してね」
にっこりと笑って吉良が言った。屈託ない笑顔に、自然な言い回し。こいつはヤバイ。桐華はそう思う。こいつは根っからのタラシだ。天然なのがいけない。
吉良と陸が血の繋がりがあるらしいというのはもう聞いた。戸上の家の中は天外魔境らしく、詳しいことは聞かない方がいいよ。と、言われてしまったので詳しく効くのはやめておいた。
「善処いたします」
桐華はそう言って笑った。
「全然善処してないよね、それ」
吉良は口をへの字に曲げてそう言った。