51.夜上との謁見②
やっと核心に……迫って来た、のかなぁ?
昨日投稿する予定だったのに、誰かがネトゲするんで途中でやめてしまったノデスヨ。
ネトゲとか懐かしいなぁ。もうゲーム廃人には戻れない。戻りたくもナイけどさ、多分、きっと……。
とか言ってそもそもこの子はゲーム機……。
新汰は声を荒げたが、北斗のその物言いにやはり最初から力を試すために仕掛けたのだと気付き、徹は唇をかみしめる。
簡単に挑発に乗ってしまうのは自分の欠点だ。瞬間湯沸かし器と陸に揶揄されるくらい、自分が短気だということは自覚だけはしている。
自覚したところでどうにかなるものでもないのが徹らしいところではある。
「私の所に愚痴を言いに来たのであるまい。時間の無駄だ」
「言いたくなるようなことをするからこうなっているんですよ」
新汰は軽く北斗を睨みつけたが、北斗が動じた様子は見られない。
諦めたのか、ため息を付いて――その呼吸分自分を落ち着ける時間が必要だったということか――問い掛けた。
「今回の件、どれくらい把握しているんですか?」
「……どの辺りまでが繋がっているのか私も把握しにくいところだ……」
「答える気はないってことです?」
新汰の言葉の中にはいつもより棘がある。
「そう捉えてもらっても構わない」
ちらりと新汰の視線が北斗を射る。
そのやり取りを聞きながら、徹も冷静に二人を観察している。
「今回の件に『夜上』が関わっている可能性はあるんですか?」
「俺の命で動いている者がいるのかと言う意味なら否だ」
「それ、実質的にはイエスって言ってるように聞こえるんですけど」
新汰の視線がさらにキツくなる。
対する北斗は足を組み替えて、僅かに斜になった体を治すでもなく。
「本来の役割を担う『夜上』はもう存在しない。今代の夜上当主の命を聞かぬ、影使いも少なくはない」
「貴方の命を聞かないのなら、誰も影使いを止められる者はいない」
「その通りだ。……彼らにいう事を聞かせたいのならば、力でねじ伏せる以外にない」
「判ってて放置しているんですか……?!」
とうとうこらえきれずに新汰は椅子を蹴って立ち上がり机にバンっと手を付いた。
「……今のところ、闇の術が行使された気配はない」
数秒の時が流れ、頭に血が回った新汰がその言葉をかみ砕くことができる頃に、静かな声がそう追加した。
「北斗さん……」
「まあ座れ」
ほんの僅かに北斗の口角が上がっているのが見て取れる。
怒りを抑えきれないのか、がつっと大きく音を立てて椅子を治し、どさっと椅子に腰を下ろす新汰。
眉の間に皺を深く刻んだ険しい表情は、徹には見せたことのない新汰の側面なのだろうか。
「俺をからかって、楽しいですか」
新汰の声はどこか暗く深い。
「新汰さん、落ち着いて」
思わず徹が声を掛けてしまうほどに。
その声に改めて徹がその場にいたことに気付いたように、徹の方を振り返り頭を掻いた。
ふっと新汰の肩から力が抜けたのが、誰の目にも判る程に彼の雰囲気が変化した。もう一度大きく息を吐き、新汰は徹に小さく微笑みかける。
「ありがとう、徹君。彼はいつもあんな感じなんだよ」
その口調はいつも通りの新汰のもので、徹はそれを確認してほっと胸をなでおろす。
逆にそれを見て北斗はつまらなそうに、徹に視線を投げかけている。
「安心するといい。この場所には俺以外の誰の術力も作用できない。主様以外はな」
「え?」
「何だ、気付いていなかったのか?」
「何のことですか?」
徹よりも先に新汰が声を上げた。
「お前も気付いていなかったようだな。まあ、致し方あるまいよ。一つ教えておこう。戸上の三男坊の誰かの近くに、冥の力を持つものがいる」
彼の者であれば、戸上に力を悟られることなく、術を行使することも可能だろう、と。