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50.夜上との謁見①

茶番は大好物。茶番だけで話が進めばいいのにネ。


北斗先生のペースから徹が抜け出せるのはいつかな。

 う~んどうしても、時々徹と陸を書き間違えるなぁ。まだ、見付けてないとこあるかも。

 もうしわけないっす。


  本日のGBMは陰陽座の『邪魅の抱擁』

  知っている人ってどれくらいいるんだろうなぁ。

「面白みのある方って……」


  風はやみ静かになった部屋の中で、つまらなそうにうそぶいた声に、北斗ほくとの物言いに頭痛を感じたのか、新汰は頭を抱えたくなった。


 最悪の事態は回避できたが、室内は文字通り『台風が去ったような』惨状だった。


 不機嫌な態度を隠そうともせず、とおるは倒れただけで壊れていない椅子を起こし、どっかりとそこに据わった。腹立たしくて断りを入れる気にもならない。


「片付けなんてしなくていいんですよ、新汰さん」


 床に散らばっている椅子の破片やら何やかやを、片付けようとしている、新汰あらたに向ける声も少し語気が荒い。


「まあ、こうなることが判ってて連れて来た俺にも責任も……」


「判ってたんですか?!」


「あぁ、なんて言うか、この人ならやりかねない的な?」


 徹に言われて新汰も片づけをあきらめたのか、同じように倒れていた椅子を起こして近くに腰を下ろした。


「的な、じゃないですよ……」


 安心して全く力を抜いた風を装って、徹は北斗を盗み見た。


 徹と新汰の会話を気にしてもいない様子で、北斗は砕けた椅子の残骸を足で彼の後ろの壁際に寄せ、その隣の無事な椅子に腰かけた。椅子は4脚あった。最初から一つは壊すつもりだったということなのだろうか。


「改めて、紹介するよ。北斗さんは、夜上やがみ一族の現当主だよ」


「えっ?!」


 がたりと思わず腰を浮かしかけて、椅子を蹴り倒してしまう。それにも気付かずに、新汰は目前の男を見下ろす。


 日本人離れした外見の青年は、その様子にも動じることなく悠然と座したまま、こちらに視線を注いでいた。


「申し遅れたな。()()()()()()だ」


 しばら口をぱくぱくさせて、何かを言おうとする徹だったが、かけるべき言葉がなかなか見当たらない。


 徹は思わず北斗を上から下まで――否、上から上までと言うべきか――見回した。たっぷりと数分もかけて。


 ある意味でそれはあり得ない事だった。北斗が当主である筈がない。闇の御神が彼を選ぶとは思えない。何故なら、闇の神は黒い色を愛するからだ。


 より黒い髪、より黒い瞳、より黒い肌。そういったモノを愛するのだ。勿論見た目の造作は美しいに越したことはない。この男は、美しい以外に闇の神に愛される要素が、少なくとも外見では見て取れなかった。


 それは日上一族だけが知る事実だったが、徹はそれを知らなかった。当然の様に新汰もそれを知っていると思い、金魚の様に口をパクパクさせて、北斗と新汰を交互に見た。


 隣に並んで座っていた新汰が吹き出すのを堪えるような表情で徹の方へ振り返った。


「ボスって……」


 こらえきれず思わず吹き出し、けらけらと盛大に笑う。


「ゲームのやりすぎじゃ……」


 このやり取りには流石の北斗も毒気を抜かれたのか僅かにあきれ顔になっている。


 恥ずかしくなった徹は、気分を変えるように倒れた椅子を起こして据わり直す。その頬も少し赤らんでいる。


「北斗さんは『夜上』だけど、さっき言ったような人たちとは一線を画すというかね、これでも統括者だから。信用できる人だよ」


「……ああ、『血に酔って』喧嘩を吹っかけて来たわけじゃないってことね」


 嫌味だなと思ったが、それでも文句の一つくらい言ってもばちは当たらないだろうと、徹は思ったことをそのまま口にした。


「それに関しては僕も悪かったよ、ごめんな」


「なんで新汰さんが謝るんですか」


「いや……この人のこういう性格を判ってて警告してなかったから」


「悪いのは私だということを、強調しているだけのようにしか聞こえないんだが」


 さらりと新汰の言の後半を浚う様にして、北斗が言う。


 腰掛けた姿のまま、視線だけを徹から新汰に移していた。威圧的などころかいっそ優しい声色だというのに、その音はまるでこの空間の支配者かのように辺りを震わせる。


「まあ、そう言ってるんですけどね」


「手荒なことはしていない。約束はたがえていない筈だが……?」


「十分手荒ですって!」


 声を上げる新汰。普段の自分の役割を取られた徹は、北斗が加わると新汰が突っ込みを入れる立場に変わるんだな、などとどうでもいいことを考えていた。

R06-06-27 一部加筆

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