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50.戦いの兆し④

 矜持きょうじ ポリシーってルビふってもいいかなって思ったんだけど。プライドとは違うのでご注意ください。


 相変わらず戦闘シーンはきらいきらいきらい。戦った勝った。戦った負けた。で済んだらいいのにって前にも言ったような。多分気のせい(じゃないけど)


 北斗先生は夜上ですけど、風しか使ってこないってとこがミソね☆

 じりっとほんのわずか足をずらす音がやけに大きく聞こえる。


 とおるに今までもたらされたいろいろな事柄も、それに心を痛めていたことも、何もかも今は全て吹っ飛んで、心の中はやけに静かだ。


 傍らに立っている筈の新汰あらたの存在ですら今はどうでもいいような気がしていた。


 血がたぎる。その高揚が徹を別人に変えたかのようだ。


 周囲を気遣きづかいおどけて場を盛り上げる優しい青年はそこにはいない。白人の刃の上に立っているような、細く長い緊迫きんぱくに攻め立てられるような感覚さえも快感だった。


 見詰める先には、未だ悠然と腰掛けたままの黒衣の青年。けれどそれはもう見せかけで、彼の周囲にもゆっくりと超自然の力が集結しつつあるのが『視え』た。


 どこまで本気なのかといぶかしむ気持ちと、先に動くことへの躊躇ためらいはまだあった。


 北斗ほくとの視線は徹だけに注がれている。


 草色とも緑青りょくしょうともとれる虹彩こうさいの色は、まるでそれ自体が宝石であるかのようにきらめき、その色にかれるようにして術力が集結してくるようだった。


 日本では神と称するそれは、こと美しいものを好む。なるほど、この特異な色彩ならば惹かれて神もすらも集まってくるだろう。


 北斗の元に力が集まれば、徹が不利になることは判り切っていた。


 それでも先に手を出すことは出来ない。それは徹の矜持きょうじでもあった。


「来ないのか?」


 いっそ優しいとさえいえる声色。その口者には笑み。この状況を心から楽しんでいるのだろう。


 微動だにしない北斗から、一切の予備動作なく風が巻き上がる。


 巻きあがる刹那は優しく、しかしすぐに小さな竜巻となって室内を暴れまわる。


 徹は集まっていた力の気配から攻撃の属性を予測できていた。風の刃が彼に到達するより僅かに早く、属性を持たない術力ちからそのものを自分の前に出現させていた。


 その力は徹の前に大きく展開して、新汰の身も守っていた。


「余裕だな」


 未だ室内に吹き荒れる暴風だというのに、その声はかき消されることなく徹の耳に届く。


 遊んでやがる。徹は心の中で舌打ちする。


「遊んでいるのはあんたの方だろう」


 思わずと言った風に声を上げ、その声と同じタイミングで徹の足は血を蹴って北斗に肉薄していた。


 暴風の影響を受けていない様な身軽さで繰り出された拳は、瞬時に立ち上がった北斗の椅子に当たって砕けた。


 立ち上がれば北斗は180センチを超える徹より、更に高い位置に北斗の瞳を見ることとなる。


 勢いのままに体を回転させて、叩きこまれた回し蹴りは、流石に避けようがなかったのだろうか。北斗の腹部付近に命中し、流石の北斗も最後に飛ばされる。


 徹の足に感じた手ごたえは残念ながら硬質で、人体を叩いたようなモノではない。術を練らなくても自然体でシールドを張っているのだ。おそらく()()


 それを裏付けるように北斗は空中に高く滞空しその後ろ、隣の部屋の壁付近まで飛んで着地をした。


 薄笑いさえ浮かべている北斗。全くダメージを与えられていない事に苛立ちを隠さない徹。


 しかし、その数秒後には拳を下ろし、臨戦態勢を解いた。


「もういいでしょ。俺で遊ぶの楽しそうですけど。本気でやるつもりもないのに、こんなところで消耗戦なんて何の得にもならない」


 最初から北斗に殺気がないことなど判っていた。だからこそ、苛立っていた。


 徹の言に、僅かに不満そうに鼻を鳴らしたのは北斗だ。


「新汰。どうせならもっと面白みのある方を連れてこい」


 徹を無視して、その裏で結界を維持することだけに専念していた新汰に苦言を言ったのだ。

H06-06-27 一部加筆

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