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45.小さな軋轢③

こんな時間にこんばんわ。書き終わったので寝ます。修正があったら後日…Zzzzzzz

「良く知ってたね。本家の戸上とかみは傍流の家系なんて気に掛けてないのかと思ってたよ」


 ゆっくりと時間を掛けて正樹まさきはそのような趣旨の言葉を吉良きらに投げかけた。


 目前でベンチに腰掛け、電子タバコをくゆらす正樹の背中を眺めながら、吉良はその言葉になんて返したものかと思案する。


「言い方が良くないかも知れないけど……」


 そう前置きしてからさらにもう少し時間をおいて。


「数十年ぶりに出た『疾上とかみ』だから。多分、あなたが思う以上に噂は本家の中でされてると思う」


 その吉良のげんに嘘はなかったが、少しだけ言葉――説明が足りていなかった。


 風と共に生きる、とか風のような心を持つと称される『疾上』は、権力にも金にも縛られない。いわんや宗家のしがらみなどに縛られるはずもない。


 疾上を縛るものがあるとしたらそれは、情とか愛とか言ったものしかないのだ。


 その『風』を味方につけた戸上がいるとなれば、一族中で話題にならない筈がないのだ。けれど、そんなことは当の疾上には何も()()はしない。


「……そうなんだ」


 相変わらずの穏やかな口調は、そしてその糸目は何ら吉良に正樹の心情を伝えてはこない。


「興味なさそう、だね」


 僅かにとげを感じるその声音に、何かを察したのか正樹が振り返る。


 それでも吉良と正樹の視線は合う事もなく。


「うん。あんまりね」


 正樹の声は常に一定で小さく穏やかだった。


 吉良の頭の中では、忙しく正樹の情報やその相方の新汰の情報を記憶の隅から呼び出していたけれど、正樹のそんな様子に気が抜けてしまった。


 気付かれないように肩をすくめて、いつの間にか全身に入ってしまっていた緊張を解いて、吉良は正樹の隣に腰掛けた。


 吉良は自分だけが緊張している事実に気付いて、少しだけ馬鹿らしくなったのだったが、それを相手に伝えるのも何だか癪で、まるで最初から自然体で逢ったかのように振舞う。


「そういえば、本家に何か用があって来たんじゃなかったの?」


「あっ……忘れてた」


 いくらかは年上と思われる正樹に対しても、何故か敬語を使う気になれず、そしてそれを正樹は着にする様子もなく気付いたらこんな風に会話は始まった。


戸上とかみ君に用事があって来たんだけれど……あの様子じゃ暫くは難しいかな」


「とか……陸君に?」


「うん。多分、戸上の他の人じゃ話しても多分何のことかわからないと思う……んだ」


 本当は新汰に先に声を掛けたのだが、忙しいのかまだ彼のSNSは既読にはならない。しかしそのことを吉良に知らせる必要があるとは正樹は思っていない。


 陸が調査していた件については、基本は他言無用なのだろうとそのあたりは察している。


 当主から依頼される『戸上の仕事』は、そもそもが表立って行動できるものではないことが多い。そのあたりは吉良も熟知している。


「そっか……」


 だから、敢えて聞き出すようなことはしない。吉良にとっては彼らの動きはある程度確認済みだったこともある。わざわざ吉良の手の内を晒す必要もないだろうと判断した。


「じゃあ、取り合えず陸君の回復を待つしかないのかな。当然、本家には連絡しないよね」


「……そうだね」


 吉良は正樹が煙草を吸い終わったのを確認して、正樹を促すこともせず立ち上がり陸の病室に向かってもと来た通路を戻ることにした。


 きっと、正樹もこのまま帰ったりしないだろう。それは直感だったが、外れることはなかった。

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