間劇 消せぬ哀惜(あいせき)
なかなか進まないなあ。文字数ばかりが嵩んでいく……。何で……?
本来なら気絶していない陸と正樹の二人で木の神様の封印地へ行って状況を確かめに向かい、その途中か後に操られた吉良に襲われる展開だったのに……。
吉良の襲撃が早すぎる&吉良が正気。つうか、ここで吉良死ぬか重症を負う筈だったんだけど、このままだと死なないぞ。
しかも回復術者がないのはデフォとしても、二人ともアタッカーで頼みの支援系が気絶中ってどうなんだこれwwww
あっ……こんなとこで、ネタバレしたwwww
清藍は大丈夫かな。
新汰と別れ道を歩きながら、何となく清藍の顔を思い浮かべた。新汰は次の約束があるため、テーブルに千円札を二枚置いて、慌てて店を出て行った。
特に空腹を感じていなかったが、返す暇を与えずに去って行ってしまったため、手者にはほぼ丸々残っている。
「小遣い……か?」
徹は崎宮市の東側にいる。現在清藍がいる筈の戸上本家は、崎宮市の西で中心街からは10キロ近く離れている。
歩きで家まで帰るのは少ししんどい。帰るならばバスに乗るか自転車を使わねばならない。一応自転車は持っているが、このまま家に帰るのも味気ない。
新汰が渡してきた小金に、交通費も含まれていることに今更気付いたが、自転車を愛用している身では使い道がない。
臨時収入を得たことに気を良くして、少し街をぷらぷらしようかなどと考えながら、のんびり駅方向へ向かっているところだ。
駅から東側に明るくない徹は、駅までは難なく来れたものの、その後結構迷ってしまい一度北方向に行きかけた。
だから行きと比較して半分の時間もかからずに駅についてしまった。
「あ~……」
自転車を押す手を片方離して頭を掻く。
どうしたものか。まだ午後三時を回ったくらいで空は明るい。このままではあと一時間足らずで戸上本家についてしまう。
異常な暑さもひと段落して気持ちいい風が吹き抜けている。どうせならもう少しこの気持ちいいよう気を満喫したい。
徹は近くのコンビニで珈琲のペットボトル500MLサイズを購入してそのまま、塙緒山公園、藍良の眠る場所へ向かった。
塙緒山公園は名前の通り小さな山に作られた公園だ。起伏に富んだ地形に、いろいろな遊具が遊具が設置されており、ミニ動物園や高低差を利用した大きな滑り台がある。中でも人が集まるのが、崎宮タワーとそこへ至るつり橋だ。
徹は人が賑わう場所を割け、裏通りから駐車場へ入る道から登って行った。急な坂が続くため自転車は押してだ。
暑いと感じはするが、汗は掻いた傍から風にさらわれて乾いて行く。秋と言う季節を実感できる一瞬だった。
さして息も乱れずに頂上まで登って来て、徹はそのまま休みもせず公園の奥まった方へ歩いて行く。
遠くで子供たちの歓声が聞こえてくる。まだ小さい子供たちなのだろう、声は高く切れ切れだ。
走り去る子供たちを眺めながら、ゆっくりと歩く徹の髪が風でふわふわと揺れている。優しい愛撫に僅かに徹の心が揺れた。
切ないと感じるのは時の流れがさせることなのか。以前はこの場所に来ることができなかった。悲しすぎて。苦しくて。やっと来れるようになってからも、暫くの間は涙をこらえるのに必死だった。
今は――。ただ。ただただ切なかった。ここに貴女がいることが。
「藍良」
久しぶりに来たよ。心の中で呼び掛けた。
何かを言おうとして、何を言っていいかわからず口を閉じる。そんなことを数度繰り返した。
最後には口の端を軽く上げて笑みを作った。
「守ってやってくれているんだろう?俺らは大丈夫だから、せいらを頼むな。俺らも……頑張ってるよ、多分」
つんと鼻の奥が痛くなる。優しい嗚咽を微笑みで噛み殺して下を向く。
石碑の下には青い花がまだいくつか可憐な花びらをみせている。
果たされた約束のその先に何が待っているのか、まだ誰も知らなかった。
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