第三十九話 十字架、燃ゆる 前編
いらっしゃい。
森から離れた場所の、戦争の話。凄く長くなっちゃったから、前後編。
挿絵も待ってね。→挿絵入れました。
補足説明
この世界はな、土地を統治する人とは別に、精霊が勝手にその土地の強い人を認定する『領主』がおるんや。悪魔なんかは力の強さが地位に直結しやすいから、両方を兼ねてたりする事が多いで。
何で領主と呼ばれてるかと言うと、その土地の住人が領主に協力的やったら、精霊が力を貸してくれて、魔力を貰えたり魔術が成功しやすくなんねん。だから戦争では、領主のいる方が絶対有利で守るほうが強いんや。統治者は幾らでも変わるけど、領主は変わりがおらん、死んだら次が見つかるかどうかもわからん。だから、その土地に住む人間にとっては、精霊に認定された、よく分からんけど強い奴の方が大事であり、絶対なんや。
情報は小出しにしてるけど、流石に二十万字超えて、何か月も前の情報とかだと絶対忘れるし、余りにもややこしすぎるから説明しとくんや。
ほんま魔法世界の弊害やで。まあ、本当は二日で設定考えて、ネーミングを適当にしてしまった所為なんやけどな。ごめんな。
鬼の国ネフレスクの西方には広大な草原が広がっている。この地では、幾度となく人と鬼との間で争いが繰り広げられてきた。
鬼が人の領域に初めて足を踏み入れた時、周辺の有力者は大半が戦いもせず逃げ出し、土地を明け渡した。久しく大きな戦が起こっていなかったこともあり、戦いと言えば数十人規模で小競り合いをする程度だったのだ。そこへ、膂力魔力、共に人を超えた存在が千も現れれば、まさしく驚天動地、しからば脱兎の如しであった。
油断しきっていたのである。長大な壁の中で、奴らは今までずっと閉じ籠っていたのだからと。人里に出没した鬼が排斥されるという出来事が各地で起き、生き残りの多くがネフレスクを目指したことなど知らないし、興味もなかった。その傲慢さが、次第に膨れ上がった鬼の怒りを招くこととなったのだ。
しかし、鬼の進出はアマンドラ王国まで届くことはなかった。
後に悪魔との戦争でも名を馳せることとなる地方豪族、スタイ家が、巧みな騎馬戦術を用い、勢力を広げた鬼を各個撃破していったのである。広大な草原を縦横無尽に駆ける騎兵に、力押ししか知らぬ鬼達は対する術を知らなかった。
亡霊の如き姿を掴めぬ敵は、いつ何時後背を狙ってくるか分からず、密集隊形での遅々とした進軍を強いた。そうして、視界を狭められた結果、スタイ家の早馬による先触れと案内によって、アマンドラ王国とヴァリエンテ公国より援軍が到着し、包囲が完成していた。勝機を完全に失ったネフレスク軍は、急ぎ転身し、多大な犠牲を払いながらも何とか退却に成功する。
以後、ネフレスクは雪辱を誓い、機を窺い続けている。再び壁の中にまで押し込められても、外に出る意志が潰えることは、決してない。
この戦地の名はザッツカーク。鬼より取り戻した領地は糾合され、そう名付けられた。
この地は、逃げ出した者ではなく、真に相応しき統治者に与えよう。鬼を撃退せしスタイ家に辺境伯の地位を。大陸一の勇猛たる一族に、大陸で三番目に大きな土地を。
草原の中、小高い丘の上。ネフレスクに聳える巨大な壁を睨む、城郭都市が一つ。質実剛健、決して煌びやかとは言えない、戦いの為に作られたスタイ家の居城。都市を十字型に壁で囲った、古の城郭である。その名を十字城と言う。
城壁に掲げられた紋章旗が翻る。十字架を意匠として用いたスタイ家の紋章。
草原を駆け抜ける風には、鉄の匂いが混じっていた。
「観念せよ、マスティリオ! もはや戦いの趨勢は決した、これ以上兵の命を散らして何とする!?」
「ほう、大公自ら降伏勧告に来たか。正々堂々というには甚だ数が多かったので、てっきり後ろに隠れでもしているのかと思ったぞ」
鬼の軍勢と対峙すべく築かれた城が、人の軍勢によって包囲されている。城郭の四方に築かれた塔の一つから、スタイ家当主マスティリオが身を乗り出し、白馬に跨った敵陣の総大将を睨みつける。
「ぬかせ、我らの掲げる大義の旗の下に人が集うのは、当然の理であろうが」
「大義だと? そう言って兵を騙したのか? 先に義を失したのは、ビュッヘルトの阿呆ではないか」
「貴様! この期に及んで、まだ私の父を愚弄するか!」
総大将ミストラン・マルマーゼオの隣で、ベツェクオール家当主ザスヘンが激昂する。
この戦は、前ベツェクオール家当主ビュッヘルトがスタイ家によって殺害されたことに端を発する。故に、出陣した兵の数こそヴァリエンテ公国が最大であったが、最も士気盛んであったのは、ザスヘン率いるベツェクオールの軍勢であった。
「落ち着いてくださいザスヘン卿。私達は今、ここへ口論しに来たのではありません」
戦場にそぐわない軽装の男がザスヘンを窘める。
「し、失礼致しました宮中伯。しかし、我が父の名誉を汚されては……!」
「ザスヘン卿、私は知っています。貴方の父君は忠義という言葉が形を成したような、立派な方でしたよ。しかし、誰にでも間違いを犯すことはあるのです。我がセスカでも調査を行いましたが、マスティリオ卿の示す証文は確かでした。貴方の父君は間違いを犯した。それを認めた上で、貴方は名誉を取り戻さねばならないのです」
「……確かに、その通りです。私は、父の為したことの全てを、把握してはいなかった。されど、我がベツェクオールは戦いの中でしか誉を得られませぬ。なれば、この場はお任せ致します宮中伯」
ザスヘンが陣の中に下がる。マスティリオの言葉にいきり立ったベツェクオールの重装兵団を宥め、城兵の警戒に専念させた。
「少し言い過ぎではないか? まだ若いのだ、父の罪を認めよなどと言われても納得いくまい。かくいう儂も未だ心の整理がついておらんのだからな」
「私も認めたくはありません。その間柄が親しいほどに、この気持ちは大きいでしょう。しかしながら、私は問題の解決の為に来たのであって、敵討ちが目的ならば、私の軍は退かねばならない」
「相変わらず厳しいな、ラスよ。よかろう、頭に血が上った老人も下がるとしよう。儂はどうも、昔からマスティリオとは反りが合わんでな」
恰幅の良い老貴族が装飾を凝らした鎧飾りを揺らし、城に立て籠もる唯一と言っていい同輩を見上げた。
「聞こえるか、マスティリオ!? 儂とお前とでは会話にならん! ラスに任せる故、自らの置かれた立場をよく理解して物を申すがいい!」
大公が握っていた手綱を勢いよく引き、大柄な白馬がいななきと共に身を翻した。
「やれやれ、そちらの話が終わるまで待ってやったというのに、勝手な男だ。だが、ようやく話の通じそうな相手が来たな」
「ほぉ、貴方に認められていたとは、素直に嬉しく思いますよ、マスティリオ卿。久方ぶりに顔を合わせることになったのが、このような場とは、残念で仕方ありません」
「一々言葉を飾るなラス、用件を話せ。決まりきった文句を垂れ流すのだろうが、聞くだけはしてやろう」
マスティリオの鋭い眼光が、ラスの体を射抜く。対して、ラスは一切の表情を作ることもなく、まるで日常と変わらぬ平時であるかの如く、それを受け流す。
ラス・ミレスの領するセスカは、ザッツカークと面している。
長き歴史の中で、強大な軍事力と権限を持ったザッツカークが武力衝突を起こした回数は、一度や二度ではない。アマンドラの国王陛下に仇なす、夜郎自大に陥った小国に槍を突き入れ、ベツェクオールとも考えの相違によって幾度も刃を交えた。時には、国力に差があるヴァリエンテであろうと、野心有りと見るや立ち向かった。
スタイ家のアマンドラへ対する忠義は揺ぎ無かった。だが、過ぎた愚直さは、曲がったものを許さず、大陸を炎に包まんとする勢いであった。大陸中に剣戟の音が響き渡る。そんな時であった、ミレス家に白羽の矢が立ったのは。
「これで何度目になるのでしょうかね。我がミレスの家が貴方達を説得するのは」
「それがセスカに与えられた役目なのだろう? しかしそのいずれも、たいして意味を為さなかったようだが。……いや、そう言えば、セスカとの戦はこれが初めてだったな」
「セスカの狭き土地で配せられる軍勢など高が知れています。刃を向ける必要性も感じなかったのでしょう」
「そうか、それがミレス家のやり方なのだな。我がザッツカークの監視と抑えの役目を期待されていただろうに、軍の拡張は控え、交渉と調停に専念している。だが、臆病なわけではない。妙な奴らだと思っていたが、貴公ら、均衡を作り出して周囲の矛がセスカに向かわぬように画策していたのだな? なるほど、この状況を残念と言うのにも納得がいく。我らが滅べば、次はヴァリエンテと張り合わねばならん。せいぜい、あの酒太りした猪殿に調子を合わせるのだな。ほら、今もお困りのようだぞ、新しい馬を送って差し上げろ。重い荷物をもって今にも馬が潰れてしまいそうだ!」
マスティリオは白馬に乗った巨漢を嘲笑するように、わざとらしく視線を向け、高笑いした。城兵がそれに合わせて笑い、囃し立てる。城内から響く大音声は、短気な老貴族の顔を瞬時に紅潮させた。
「……マスティリオ卿、セスカにいくら兵を蓄えようと、領土に差がありすぎて焼け石に水なのは、分かり切ったことでは? 下手に武力を持てばいたずらに周囲を刺激してしまう。なればこそ、国王陛下の鎮座する大地まで戦火が伸びぬよう、武力に頼り切らぬ方法で計らったまでのこと。我がセスカの後背にはアマンドラがあるのですから」
「ほう、表情が乏しく、玉虫色の何を考えているのか分からん奴だと思っていたが、その言葉が誠であるならば、一端の忠義心はあるようだな。だが――」
眼下の男は、顔に汗一つ掻いておらず、表情に一切の変化が感じられない。マスティリオは、一度だけ深く溜息を吐いた。
「……ラス、貴公が本当に陛下への忠義を果たすというのならばな、我ら選定侯の役目を正しく行使すべきだった。あの方は繊細過ぎるのだ。その身に過ぎた重圧を真正面から受け止めて、常に疑念の渦を彷徨っておられる。あの方は王になるべきではなかった」
その言葉を聞いた一瞬、ほんの少しだけ、ラスの視線が泳いだ。
「マスティリオ卿、……その言葉は、取り消しなさい。口にしてはならない」
「ラス、貴公はそれが駄目なのだ。その態度が王を惑わすのだ。ただ首を垂れるだけが忠義ではあるまい」
「……何を、言うのだ。今まさしく陛下を御困りさせているのは貴方の方ではないか」
「私は果たすべき義によって動く。今ここに立つ姿こそが真であり、誠であり、これこそが私なのだ。私に陛下の心は分からん。だが、陛下は私を理解しているだろう。たとえ心に真があろうと、言葉行動なくして、その姿は見えんのだ。貴公は何を思い王を選定した?私にはそれが分からんし、陛下も分からぬだろう」
「……まるで陛下の代弁者気取りですね。しかし、何と言おうと今現在、事を荒立てているのは貴方だ。貴方自らの足でアマンドラの刑場へ向かうべきです。それが、真に陛下を思うということではありませんか?」
再び溜息が漏れる。
「その言葉の何処に、貴公の姿があるというのだ? 本当に陛下がスタイ家の処罰を望んでいるならば、何故王の軍勢が見当たらんのだ? ラスよ、真に陛下を思うというのならばな、貴公はあの時、サリエンの家を助けるべきだった」
マスティリオの言葉に、ラスは口を噤んだ。。
「バルメニヒトは陛下の友となれる男だった。気取り屋で軽口は叩くし、隠し事もする。しかし、揺ぎ無い信念があった。その姿が見て取れたのだ。誰よりも王の近くにいるべき資質があったのだ。それを、ビュッヘルトめ、下らぬ嫉妬心を出しおって……」
「……どうすべきだったと? 私は、事がより穏やかに済む選択をしたまで」
「ラス、この世で最も重い罪は、名を汚すこと、名を奪うことだ。貴公の考えなど聞かなくても予想がつく。新興貴族のサリエンよりも、王家に次ぐ歴史を持つ上にヴァリエンテとも関係良好なベツェクオールの肩を持った方が、有益で角が立たない。それが大きな戦を回避できる選択だったのだろう。だがな、サリエンの名は汚されたのだ! 友人の名を汚されて何も出来ず、信頼すべき人間を失った陛下は、貴公の選択をどう見る?! 陛下の友人を救えと言う話ではない、貴公が真実ではなく、予想される結果だけを見ていたことが問題なのだ!」
表情無き男の顔に、赤焼けの空が影を落とす。
「……マスティリオ卿、どうやら貴方は私に言いたいことがあるようだ。しかし、今日はもう日が落ちる。続きは明日にしましょう」
「そちらから話をしに来たというのに、勝手なことだ。だが、まあいいだろう。貴公との会話には意義がある。明日は矛を突き立てるかどうか決めておけ」
そう言うと、マスティリオは城内へと姿を消した。それを確認したラスは城へ一礼し、陣の中へ戻った。憤慨した大公と比較的冷静なザスヘンが近付き、馬を併せ野営地へと向かう。
「まったく、呆れた男だ! あれが城を包囲された男の物言いか?!」
「確かに、私も父を侮辱され腹が立ちました。しかし、今は肝の座り方にただ驚いています。流石は名高きスタイ家といったところでしょうか」
「辺境伯を侮ってはいけません。この戦、数で圧倒していながら、被害は我々の方が遥かに大きい」
「むう、確かに此度の戦は誇れるものではないな。よもや、我らの魔術師団が、あれ程に翻弄されようとはな」
「ええ、古き戦い方と侮る者が多いようですが、ザッツカークは間違いなく大陸一の兵団を持っています。対して、我々は戦から離れすぎた。魔術に傾倒するあまり、剣の戦いを忘れて浮足立った」
「まともに戦えたのは、古来の戦い方を伝統として守っていたベツェクオールのみ。皮肉なものだのう。……思えば、ベツェクオールは、今なお鬼と対峙するザッツカークと違い、悪魔との戦争が終結したことで、とうの昔に城拍としての役目を終えてしまった。ここ百年は大きな戦も起こっておらぬ。ビュッヘルトは何を思い、兵を調練していたのであろうな」
今は亡き友人を思い、大公ミストランは顔に刻んだ皴を深めた。
「父は、寡黙な人でしたから……。ただ、陛下に認められたいと考えているようではありました。旧来の訓練に加えて、戦術に魔術を組み入れる研究も進め、教皇様が危篤であると聞けば、自国で最も優秀な魔術師を差し出そうとも……」
「……私もしましたが、陛下はそうした世話を嫌うようです。マスティリオ卿は、ビュッヘルト卿には、嫉妬心があると言っていました。同じ古来の戦術を重んじていても、陛下の心にあるのは新興のサリエン家ばかりで、認められようとするほどに陛下の御心からは遠ざかってしまう。もしかしたら、ビュッヘルト卿の心中を唯一理解していたのは、マスティリオ卿だけだったのかもしれません」
「……本当に、皮肉が過ぎるな。ビュッヘルトもマスティリオも馬鹿な事をしおって……。こうして友のために戦を仕掛ける儂も、同じく大馬鹿なのだろうがのう……」
ミストランは後ろを振り返り、堅牢なる古の城郭を見やった。
「のう、ラスよ、奴の騎馬兵団は草原でこそ真価を発揮する。兵の損耗が少ないとはいえ、城内に追いやり包囲したのだ。攻めれば決着は着く。早々に終わらせるべきではないか?」
「勝てはするでしょう。しかし、向こうはオーリアンが健在です」
ミストランが髭をいじり、唸る。
オーリアン・ジストニール。当代一の呼び名も高い、ザッツカークの領主たる大魔法士。
ミストラン率いる連合軍は、ヴァリエンテより歩兵12000、魔術兵5000、騎兵2000。ベツェクオールより重装歩兵2000、重装魔術兵700。セスカより上級魔術兵300。総勢22000の大兵団であった。
対するザッツカークは、精鋭騎兵2000、歩兵1000。そして、オーリアン率いる魔術師団が100の、総勢3100の兵団であった。数は圧倒していた。だが、鬼との戦を幾度も経験していたザッツカークの精兵とは、その質に歴然の差がある上に、連合軍の巨体と比べ、マスティリオ自らが先頭で率いる兵団の統率は恐ろしく速く、強く、勇猛であった。
そして、なにより、オーリアンの戦術魔法『大風陣』の存在があった。
オーリアンは、風魔術を得意とする魔法士である。彼の起こす風は、数戦の人間を容易く飲み込むほど広く流れる。彼は、その風の流れを操り、巨大な壁を作ることが出来る。これを応用し、マスティリオ率いる騎兵団を分厚い風の壁で包み込み、前線へ押し上げるという戦術を作り上げた。これこそ戦術魔法、大風陣。
オーリアンと共にあるマスティリオの騎兵は、大陸で最も速く、最も強い。纏った風は、降りかかる矢を払い、槍衾を撥ね除け、魔術師の攻撃を掻き消した。
七倍以上の兵がいても、その損害はザッツカーク側の十倍以上であった。しかも、ザッツカークの損害は徴募兵を集めた歩兵団が多く、騎兵の損害は軽微。その損害と言うのも、疲労によって馬が潰れた影響が大きく、真っ向から戦って討ち取ったのはベツェクオールの重装兵のみであった。
今こうして、マスティリオの軍勢が追い詰められているのも、城内の民を置いて逃げ回る事を、ザッツカーク辺境伯としての誇りが許さなかったからである。
「いくらオーリアンとて、これだけの魔術兵から一斉に攻撃されては対処しきれんとは思うが、同時に、これだけの兵を動員して、さらなる損害を出せば、儂は国で笑いものになるな」
「ただ包囲しているだけでも、この状況自体が城兵に疲労を与えるでしょう。精強な近衛兵辺りは動じないでしょうが、中には他所から集めた徴募兵もいるようですし、民の不安も大きくなっているはず。今は攻めることよりも、まず周りを固めるべきです」
「周り? 既に方位は完成しているが、奴は伏兵でも用意しているというのか?」
「その可能性もあります。今の世情は、貴族に対する不満が高まっている。ただでさえ公明正大で通っていたマスティリオ卿が、同じ貴族に刃を向けたのです。彼を英雄視する声は多い。味方する者がいても何ら不思議ではありません」
「……ならば、行商人に紛れ、この陣地に入り込む可能性もあるわけか。儂の兵はただでさえ多いからな、必要なものも比例して多い。輸送の護衛も増やしておくとするか」
「それと、我がセスカで集めた情報によると、ザッツカークに忠誠を誓い、代々密偵や汚れ仕事をこなす隠れ里があるそうです。どうも、マスティリオ卿は我々を挑発している節がありましたから、何か策があるのやもしれません」
「ふむ、では、早速陣内の監視を強化させるよう伝えなくてはな。ザスヘン、お前も陣内だからといって一人で動くな。儂の護衛と共に前線の屯所まで来い」
「は、はい、申し訳ありません、大公! では宮中伯、これにて!」
大公は思い立ってからの行動が速い。先代の父と違って、付き合いの慣れていないザスヘンが、若い自分よりも活力に満ちたミストランに急ぎ付いて行く。
一人残されたラスは、陣の奥深くに建てられた、自身のテントへ向かう。そして、引きつれた護衛以外に見られていないことを確認すると、薄暗いテントの中へ入り、闇の中へ目配せした。
「……例の件はどうだった?」
「は、尋問中に自ら命を絶ちました。どうやら毒を隠し持っていたようです」
「そうか。やはり侮れない」
お疲れさまでした。
横書きのセリフは、文字が詰まって目が辛い。だから、長いセリフは良くないと思う。
でも、キャラクターこそ物語の命。セリフこそキャラクターの魂。難しいね、
ぽっと出のキャラが長々と喋ってて読みづらいとは思うけど、ごめんやよ。




