日々6
「ただいま~疲れた~」
玄関の扉をを開け、帰ってきたのは母だった。
仕事帰りに買い物をしたのだろう。両手にビニール袋を持って重たそうにしていた。
「お母さんじゃない?」
居間の扉の向こうからひょっこりと顔を覗かせるモナ。
「あら~モナちゃん。お姉ちゃんにお迎えに来てもらったの?良かったね」
「お兄ちゃん何にもしてないよ」
「え~ウソ~酷いお兄ちゃんだね」
「さっきまで遊んでやったろ」
「違う、お兄ちゃん寝てた。見てたもん」
「嫌なところで気が付くよな……」
母が手荷物を寄越してきたので、手を伸ばした。
無意識に行動に移したため、重さも何も考えていたかった。お蔭でズシンと大きい重圧が腕にのし掛かる。
「なに買ってきたんだよ?」
「今日肉が安かったから。すき焼きにでもしようかなって」
袋の中身はぎっしりと牛肉のパック詰めが重なっていた。
ふと、どうでも良いことを考えた。袋から飛び出している長ネギについてだ。恐らく、武器にできる。単純にそう思った。
「なにボ一っとしてんの?早くいきなよ」
背後にはユージロウの背中が邪魔だと主張するハルリの姿があった。
「ああ。ハルリ、部屋で何してたんだ?」
「勉強以外何があんの?そっか、お兄ちゃんじゃあ思い付かなくて当然か、何かごめん。」
「貶された挙げ句、謎の謝罪を受けてるんだけど?」
「かたじけない。かたじけない」
ユージロウは複雑な念に襲われた。
弄っているのか、真面目に貶してるいるのかわからなかった。それどころか、ユージロウが帰宅して話した進学の件についてが頭を過り、上手く話せなかったのだ。
「次期にお父さんも帰ってくるから、家事手伝ってよね」
玄関から居間までで母とモナの声だけがト一ンが明るかった。