日々2
「お兄ちゃん‼急がないと遅刻するよ」
「オケオケ!今から行くよ」
「鞄持った?制服着た?ネクタイ忘れてない?財布は?定期持ってる?」
「大丈夫、ちゃんとポケットに……肝心のズボン履いてなかったわ」
「やめてよね一‼変な噂立てないでよ?只でさえお兄ちゃん変なんだから」
妹のハルリの大声がユージロウへと投げられた物と共に飛んでくる。
「いやいやいや、これは君のスカートだろ⁉お前から変な噂たてようとしてるよな?」
「えっ?お兄ちゃんそんな趣味あったの?ヤバイよさすがに……」
「おい……」
ハルリは人さし指を立てて再度ユージロウに釘を打った。
ポカンとユージロウは見ていた。
「良い?もうこんな危なっかしいことやめてよ?ハルリが嫌な思いするんだからね」
「それはお前が間違え……」
「返事は?」
「いや、だから……」
「返事は?」
しつこく返事を求めるのでユージロウは仕方ないから折れた。
「……はい」
「声が小さいぞ?」
「はい‼」
「うるさい、声が大きいよ‼」
「言ったの君だよね?」
あまりの理不尽さに言葉を失う始末だ。
こうなってしまえば完全にハルリのペースだ。
対抗してもまるで女王のように会話を支配してしまう。
「もういいや、俺もう行くな?」
深くため息をついて
ネクタイを締め、食パンをくわえて玄関に向かった。
「あっ‼待って、動かないでこっち向いて」
ハルリの突然の言葉に上手く答えれた自分がそこにいた。
「ほらぁ~。ネクタイ曲がってるよ?」
手を伸ばし、結び目に触れて整える。
妹の上目遣いというべきか、ただ頑張って締めてくれているのか検討もつかない。
「出来たよ。これでその残念な面がコンマ1だけ上がったよ」
「ポ⚪モンでもそんなに経験値であがりもしない」
と軽く毒づいた。
「行ってきます」
「うん、ハルリもすぐ向かうから」
手を振る妹を見てから扉を開けた。