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Number  作者: ささみ紗々
3/16

#3 転校生はお決まりの

なんか淡々と続く文章ですよねえ、、と思いつつ。ゆっくりゆっくり皆様に感動を与えたいのですよ、ハイ。

「なぁ舜ちゃん転校生だってよ?」


「あぁ、うん」


「女子かな? 女子だといいよなあ〜」


「うーん」


「どしたんだよ、つれないなぁ」


「眠れなくて」


「転校生が楽しみで?」


「……そういうことにしとくよ」


 翌朝。家を出ると、友人の竜太郎が待っていた。こんな寒いのによくもまぁ、と手を挙げると、竜太郎は真っ赤にした鼻をこすって笑った。


 高校二年。思春期真っ盛り。

 毎朝とまではいかないが結構一緒に行くことが多い僕達は、いいのか悪いのか非リアである。……こいつ、顔はいいんだけど。僕と一緒にいすぎるせいか疑惑出てるし。受け止めきれる自信ないよ、僕。



 担任はまだ若い男性教師で、目元のホクロが少々色っぽい。去年も彼にお世話になった。つまり二度目の担任だ。

 生徒と歳が近いからか、なんでも話せる空気感を作ってくれている。見えない配慮が感じられると、僕まで惚れそうだ。


「ほら、席つけー」


 先生はわざと気だるそうに言葉を並べ、口元を隠す。

 新しい服だ。新しいかどうかは知らないが、少なくとも僕達が見たことない服。なにかが始まる朝は、たいてい先生は新しい服を着てくる。


 先生に続けて入ってきた転校生は、黒髪ロングの……って、え。あれ?


「うみちゃん?」


 周りがみんなこっちを見る。何あいつ、知り合い? どういうこと? ヒソヒソとこっちを見ながら話す声が聞こえる。うん、全部聞こえてるよねー。


 やらかした、と口元を引きつらせた僕がうみちゃんの方を向くと、あぁ、案の定。彼女はいかにも迷惑そうに眉間に皺を寄せていた。僕、総攻撃受けてない? 自己紹介する前から団結してどうするの。



「池水 うみです。好きなことは歌うことです。よろしくお願いします」


 淡々と語る彼女の顔は少しの緊張も見せることなく、けれど昨日よりだいぶ柔らかい雰囲気だった。

 ぺこりとお辞儀をしたとき、彼女の艶やかな黒髪が揃って揺れた。男女問わず息が漏れた。



「それにしても……同じ学校だなんて思わなかったよ。年上みたいだったから」


「そう? 年上ならなんで最初からタメ口だったのか気になるところだけど」


「そういうの、気にする人なんだ」


「別に気にはしないけど」


「どっちだよ…」


 僕が苦笑すると、うみちゃんも少しだけ笑った。



 何故かは知らないが、先生は僕の隣にうみちゃんを座らせた。確かに僕は教室の隅っこで、廊下側に隣はいなかったけれど、それにしてもこんな偶然あるだろうか。

 僕の前の席の竜太郎がたまに熱い視線を送っている。……なんか、面白くない。



 月曜の五限、授業が始まる一分前になっても先生はなかなか来ない。そのため僕達はとりあえず席について、おしゃべりを繰り広げている。

 数分前まではうみちゃんの席に人だかりができていて、僕は追いやられそうになっていた。

 人当たりの良さそうな笑顔を浮かべて、うみちゃんは槍のように飛んでくる質問に答える。あぁ、なんだか漫画みたいだ。




「ねぇ、連絡先教えてよ」


「ファッ!?」


 しばし見つめ合うこと数秒。

 廊下の向こうでは知らない顔や知った顔、ついでにおじちゃん先生や巨乳美人が行き来している。大きな声で話す女子達の、時折耳に刺さる甲高い笑い声。これは現実だ。


「いいよ、うん」


「今の間はなに」


「ううん、なんでも?」


 僕達は携帯を取り出してラインを交換する。……うみちゃんのアイコンは有名な絵師のイラスト。僕も知ってる。

『やっとここまで来れた』という意味深なステータスメッセージの意味は、聞かない方が無難だろう。


「ありが……」


 とう、まで言おうとして、隣を向いてやめた。

 だって、え、笑ってる。うみちゃんが! 笑ってる!


「なに」


「いや……」


 元の顔に戻りやがった。





 十二時前。

 課題の途中で寝てしまったようで、広げた英語のプリントにはべったりヨダレが付いている。やっべ。

 しかも解きかけの問題。解答には何を書いてるのかさっぱりの暗号が並ぶ。まるでウジ虫のような字だ。



 息を吐いて携帯を手に取ると、うみちゃんからのラインが一件。


『舜くん起きてる?』


 ……? これは。


『今起きた』

 返信すると、秒で既読がついた。


『は?』


『課題しながら寝てた』


『へぇ』


 なんだこの人。用ないのかな……?


 僕は基本、用のないラインはあまりしない方だ。好きな子なら別だけど……って、いや、僕は別にうみちゃんのことが好きとか、そういう訳じゃない。


『舜くんさ、運命って信じる?』


 どき。


 えーと。うみちゃんは一般論を聞きたいから僕に尋ねてきただけで、僕への純粋な疑問ってわけじゃない、よね。


 タイマーをつけておいたエアコンはもう切れて、部屋の中はだいぶ寒い。しかし、僕の体は熱を帯び始める。



『うーん、わからない』


 当たり障りのない返事をすると、またしても秒で既読がついた。


『だよねえ』



 なんて返せばいいかわからなくて、僕はそのまま迷う。指がキーボードの上を滑るけれど、言葉はうみちゃんの元に届く前に消える。悶々とした中で、画面は更新される。


『ありがと、それだけ!』


感想、ブクマ、待ってます!

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