表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

girls side

 僕は一体誰でしょう。

 自分は一体何者かなんて、きっと誰にも分からない。

 自分に分からないことを他人が知っているわけがない。

 夢を見ている時、夢を見ていることを自覚することが、僕にはよくある。

 今回も、僕は夢を見ているのが自分で分かっていた。

 でも、これは少し、いつもの夢とは違う。

 僕は過去の記憶を見ていた。


 日本は平和な国だ。

 僕は大勢の外国人に囲まれたとき、そんなことが分かった。日本が平和だってことに気が付かなかったことに気が付いた。

 僕と両親は殺された。

 アメリカの狭い路地で、僕らは殺された。

 殺される直前のことなんて、覚えていない。大勢の外国人に囲まれた時点で、僕らの中で冷静な判断をすることが出来た者はいなかった。

 僕は死んだ。

 そのはずだった。

 でも、僕は生き返った。

 いや、僕は誰かに蘇らされたのだ。

 十四の夏、海外旅行先のアメリカ。

「君はまだ生きていなければならない。」

 僕を蘇らせたヤツはそう言った。

 顔を見ることはできなかった。

 声だけが聞こえたからだ。

 僕は探している。

 僕を生き返らせた人物を。

 そいつはもしかしたら人間ではないかもしれない。もしかしたら・・・

 そうして、僕は夜の王となった。


「起きろ、千秋。朝だぞ。」

 いつものように、大家さんの娘である紫さんの声で僕は目を覚ます。

 目を覚ましたのは僕だけだ。

 この狭い七畳間には、僕を含め、四人の人間が寝ている。

「ほら。朝だよ。」

 僕は同居人である三人の女の子の身体を揺さぶる。

 全く、胸の鼓動が速くなって、苦しくなってくる。

 三人の中、二人の寝相はとてもいい。女の子らしい寝相だ。

 しかし、ある一人の女の子の寝相は、とても悪い。

 キャミソール姿で寝ているのも、僕としては困ることなのだが、寝相が悪いせいで、ラグジュアリーがほとんど脱げそうな状態になっている。見えてはいけないところが見えそうで・・・

 僕はその女の子から目をそむけながら、身体を揺さぶり起こす。

 その後、僕は素早く後ろへ身を引く。

 すると、先ほどまで僕の身体のあった場所に、彼女の足が空をきる。

 明らかな蹴りだ。

 しかも、彼女自身、自分が蹴りを行っているという自覚がない。

すこぶる質が悪い。

僕は彼女を揺さぶって、蹴りをかわして、を何度か繰り返す。そうして、やっと彼女は目を覚ます。

他の二人も起きてはいるが、半分寝ている。

 まだ、眠気が覚めていないようだ。

 僕は三人を一階の居間に連れて行く。

 居間に入る頃には、おおむね、彼女たちは目が覚めている。

「おはようございます。大家さん。」

 僕は居間の食卓に座っている初老の女性にあいさつをする。

「みんな、おはよう。」

 大家さんが僕たちに言う。

「「「おはよー。」」」

 三人はだるそうに、大家さんにあいさつをする。

「紫さん、おはようございます。」

 先に紅鮭を箸で崩しながら食べていた若い女性に僕はあいさつをする。

「この家ではその呼び方でもかまわないが、向こうに行ったら、きちんと呼び方を正すんだぞ。」

 紫さんは固い表情で言った。

「えぇー。別にいいじゃん。ゆっきゅん。」

 寝相の悪い女の子が紫さんに言った。

「その呼び方は止めろと言っているだろうが。」

 紫さんが怒っている時の声だ。

 ヤバい、と僕が思った時にはすでに遅かった。

 先ほど紫さんの手元にあった箸を、寝相の悪い女の子が右手で握っている。

「ふん。さすがは体育会系。お頭は足りないが、運動能力は超人的か。」

 紫さんはそう言った。

「箸を返せ。明。」

 寝相の悪い女の子、明と呼ばれた、胸がこれでもかというほど突き出している女の子は紫さんに箸を返す。

 紫さんの機嫌は治ったのかは知らないが、紫さんは頬を緩めながら紅鮭を口に運ぶ。

 紫さんは紅鮭が好物である。

「ほら。みんな座って、朝ご飯を食べなさい。」

 大家さんにそう言われて、僕らは食卓に着く。

 その時、ちょうどテレビで占いが始まる。

「やった。水瓶座、一位だ。」

 銀色の髪を座った状態で床に着くまで伸ばした女の子、響希が無邪気に喜ぶ。

 しかし、一同は不機嫌だ。

 自分の星座が一番ではなく、一番である人間がいたときの苛立ちといったら、なんとも言えないものだ。

「私、三位。」

 短いボブヘアの女の子、来未が言った。相変わらず、感情を面に出さない女の子だ。

 僕の星座、魚座はまだ出てこない。

 蠍座の明と双子座の紫さんもまだだ。

「やった。魚座、六位。」

 空気が張りつめている。

 どうも、僕は軽率だったらしい。

 紫さんと明との間の闘争心が場の空気をガラリと変えたのだ。

「蠍座、十一位!」

 明は歓喜の声を上げる。

 まずい!

 また紫さんがキレる!

 僕の懸念とは裏腹に、紫さんは深く落ち込んでいるようだった。

「大丈夫ですよ、紫さん。占いなんて気にしない、気にしない。」

「一位のヤツに言われると余計悲しくなる。」

 響希の言葉に、紫さんはガクリと肩を落とした。


「で、なんでみんなはそんなに張り切ってるのかな?」

 僕は三人の女の子に言った。

 三人は臨戦態勢に入っている。

「今日から三年生はいませんから、敵から攻撃を受けるかもしれません。」

 明が言った。

 僕はそんなことはない、と思っているが、この三人はいかんせん、僕の言葉に耳を貸さない。

「よう。千秋。」

 僕のよく知る男子の声が聞こえた。

 肌を突き刺すような感覚を感じる。これは、殺気だ。

 気が付いたときには、男子は三人に包囲されてしまっていた。

 明は男子の喉に手刀を突き付け、響希は男子の背後に人差し指を突き付けている。未来はスタンガンをビリビリ言わせている。

「みんな、又兵衛は人畜無害なチキン野郎だから大丈夫だよ。」

 僕はそう言って、三人の又兵衛に対する警戒を解こうと試みる。

 しかし、未来は人畜無害なチキンの男子、後藤又兵衛の髪をスタンガンで焦がそうとしている。もしかして、面白がっている?

「で、俺の髪の毛をスタンガンでチリチリにしようとするのはやめてくれないか。」

 又兵衛の言った言葉に、未来が答える。

「焦がせばチキンはいい味が出る。」

 未来が初対面の人間とこれほど楽しそうに話しているのは非常に珍しい。顔は無表情なので、楽しそうかどうかは、実際には不明だけど。

「それはそうかもしれない。」

 僕はそう言った。ここはのっておいた方がいい。

「おいこら!納得してんじゃねえ。」

 又兵衛は勢いのある、いいツッコミをする。これは将来有望だ。

「じゃあ、意識を刈り取ろう。」

「止めてください。俺は朝から三途の川を渡ったばかりなんです。次、あの領域へ行ってしまったら、俺はもう二度と女性は愛せなくなる。」

 未来の言葉に錯乱したのか、又兵衛は意味不明な言葉を吐く。

「そういえば、千秋。お前、最近電車に乗ってないけど、どうしたんだ?」

 又兵衛がふと、僕に聞いた。

 そう言えば、又兵衛に引っ越したことを言っていなかったことを思い出す。

「ドタバタしてて、言うの忘れてたね。僕たち、この近くに引っ越したんだ。」

「僕たちって言うと?」

 又兵衛は僕に質問する。

 僕は答える。

「この三人と。」

「ラブコメ野郎。トッチメテヤル!」

 ピリッとした感覚が肌を刺す。

 殺気。

 僕は又兵衛をかばおうと、又兵衛に背を向け、防御する。

 案の定、明が回し蹴りを放ってきた。

 しかし、僕が間に割り込んだことに気が付くと、明の蹴りは急速に失速する。

 今の僕では明に蹴られたら最後、体中の骨が粉々になっていただろう。

「明。暴力はいけない。」

 僕は明を睨みながら言った。

「すいません。ご主人様。」

 明は明らかに不満な顔で言った。

 チキンな又兵衛は肝を冷やしたのか、さっさと校門をくぐってしまった。

「なんなの、あの男子。」

 響希が言った。

 はたから見れば、又兵衛はチャランポランでチキンなヤツだ。

 誰も気が付いていないんだ。又兵衛が本当はどんな子なのかを。

 困っている人を放っておけなくって、でも、自分の力で助けられる人なんて本当はいなくて、そのことをよく知っていて、そのことにとても傷付いていて。

 そんな傷付きやすい心を偽るように、チャランポランになっているだけなんだ。

 自分が傷付いていることに気付かれないように。

 そのことに気付かれて、誰かが傷付かないように。


「おはよう。フロイトくん。」

 二年二組の教室。

 僕は友達のフロイトと呼ばれている男子にあいさつをする。

「おはよう。千秋。」

 フロイトは文庫本から目を離し、メガネをクイッと上げながら言った。

 彼は僕の友達の友達だった人物だ。又兵衛の友達で、同じく又兵衛の友達である僕と今年、同じクラスになったのだ。

 ちなみに、本名は不明。どうして分からないのかは不明。普通は分かるはずなのだが。でも、そんなことは僕たちからしたらどうでもいいことだ。彼は特進クラスの子よりも成績がよく、少々話しかけづらい所はある。去年までの僕もそうだった。

 しかし、実際に話してみると、以外にオープンな性格で、僕たちはあっという間に仲良くなった。

「英語の単語テスト、大丈夫?」

 僕は言った。

 僕はフロイトくんがテスト勉強をしていないんじゃないかと思って言ったのではない。フロイトくんはきっちりテスト勉強はしてくる。

 では、何故フロイトくんにそう聞いたのか。

 もしフロイトくんが「今回難しかったよ」と言ってくれれば、点数が悪くても精神的ダメージが軽減できるためだ。

 ちなみに、僕はまだ今回のテスト範囲の確認さえしていない。

「ああ。今回は似ている単語があったから、なかなか面倒だったね。」

「毎日単語テストはキツイよね。」

 僕は言った。

 正確には授業ごとに単語テストがあるのだが、英語は毎日あるので、結果として毎日単語テストとなってしまったのだ。

「僕は慣れたけどね。一年もやってるんだから。」

 さすが優等生。

 ちなみに、毎日の単語テストは一年生のころから続いている。

 ツライね。

 僕はフロイトくんとの雑談を早々に切り上げて、自分の席に戻り、単語帳を眺める。

 三人の女の子はすでに単語帳と睨みあっている。

 ちなみに、三人は僕の席の周辺に席がある。

 単語帳を睨みながら、ふと時々こんなことを思う時がある。

 自分は青春を無駄遣いしているのではないか、と。

 でも、それは仕方がないし、勉強に打ち込むのも青春なんじゃないか、とも思う。みんな勉強は大事っていうけど、僕はそんなことを少しも思ったことはない。

 勉強ができなくたって、勉強ができる人間よりもすごい能力をもった人だっているはずなんだ。僕なんかよりも、ずっと、ずっと、すごい人間が。

 学力を求めるこの世界は少し間違っているのではないか、と感じる。

 みんなは同じように感じているのだろうか。

 この世界が間違っているということに。

 きっと気が付いている。

 でも、気が付いていながら生きていくってことが大人になるってことなんじゃないかな。

 大人がよく現実は厳しいっていうのは、世界に対して抱いている違和感を押し殺しているから、そう言ってしまうんじゃないかな。

 世界はそう簡単に変えてしまってはいけない。変えようとすると、血が流れる。今までの世界がそうだったから。人の血が流れるのは世界を変えようとした時。逆に、世界を変えようとしている時、多くの血が流れる。

 ニュースでよく出る殺人事件だって、どちらかが世界を変えようとしたから血が流れたんだろう。

「でも、それでも、と抗い続けろ。」

 いつの間にかフロイトくんが僕のそばに来て言った。

「そうだね。抗うことで人は一歩進むことができるんだもんね。」


 味気ない青春を送っている僕にって、時間の進むのは速く感じる。

「くあああああ。」

 一日の疲れを吹き飛ばすように、僕は伸びをする。

 時は放課後。

 あっという間に授業は終わってしまった。

「ほら、帰るよ。」

 僕は三人の女の子に帰宅を促す。

 外には雪がちらついている。

 昼ごろから雪が降ったのだ。

 四月に雪なんて珍しいもんだな。

 僕たちが校門に向かっている時、肌にピリッとくる感覚がした。

 僕の目の前には五人のメイド服を着た女の子と、その集団に立ちふさがるように、二人の制服を着た女の子が立っている。

 二人の生徒の中、一人には見覚えがあった。

 幼なじみの服部叶である。もう一人は知らない。

 二人と五人の間から、かなりの濃度の殺気が漂っている。

「今度は集団で雁首そろえてきたってわけね。」

 知らない生徒が言った。

 その生徒の周辺から桜吹雪が発生する。

 もしや、あれは超能力・・・

 叶の周囲から電撃が放出される。

 まさか、叶も超能力者だったのか。

「さっさと夜の王を渡してくれないかしら。」

 赤いメイド服に黒いツインテールの少女が言った。

「だから、そんなヤツ知らないっつてんでしょ!」

 叶が苛立った声で言う。

 これはマズい。叶を苛立たせると、碌なことがない。

 夜の王。

 メイド服の集団は確かにそう言った。

 どうも、僕を狙っているらしい。

 なら、無関係な二人を巻き込むわけにはいかない。

「待ってください。ご主人様。」

 明が言う。僕がメイドたちの前に立とうとしたこに気が付いたのだろう。

「僕の運命に、無関係な二人を巻き込むわけにはいかない。力を貸してくれるかな?三人とも。」

「しかし、このまま逃げてしまっても。」

「それはできない。」

 明の言葉に、僕は子拳を強く握りしめて言った。

「逃げてちゃ何も始まらないんだ。待ってても、何も始まらない。僕らはとにかく前に進むんだ。運命を変えるんだ。」

 そう言って、僕はメイド服の集団に立ちはだかる。

「二人は下がっていい。これは僕の問題だから。」

 僕は叶たちに言った。

「千秋、アンタ・・・まあいいわ。私たちは干渉しないから。」

 叶はそう言った。

「すまない。みんな。僕に力を貸してくれ。」

 本来なら、僕が戦うべきだ。

 しかし、今の僕では戦えない。

 夜の王は夜にしか能力を発揮できない。

 だから、僕は女の子に力を借りなければならない。

 未来はサッと草むらに隠れる。そして、メイド服の集団の周辺を駆け巡るだろう。彼女の能力は戦闘向きではない。彼女の役目は情報収集だ。

 明は一直線に高速でメイド服の集団に突っ込んでいく。

 響希は間合いをとりながら距離を縮めていく。

 猪突猛進する明に向かって、赤いメイド服の少女が機関銃を出現させ、銃弾を発射させる。

 あの機関銃は超能力だろう。銃弾自体も恐らく。

 明は映画のように機関銃の弾を走って避け続ける。

 赤いメイド服の少女の髪が少し散る。

 間一髪で響希からの攻撃を避けたのだ。

「ちっ。外したか。」

 響希は舌打ちをした。

 響希の攻撃に気を取られたせいか、銃弾は止んでいる。

 そこを明は狙う。

 明は赤いメイド服に蹴りを繰り出す。

 赤いメイド服は機関銃で蹴りをガードする。

 赤いメイドは明に蹴られて吹き飛んでいった。

 その途端、明の動きが止まる。

 敵の目の前で立ち止まっていたら、狙いの的だ。

「どうした!明。」

 僕は明に叫んでいた。

「目・・・が見えな・・・い・・・」

 明は言った。

 敵の能力者の能力か。明は敵の能力の範囲に入ってしまったようだ。

「響希!ヤツらを攻撃しろ。」

 しかし、響希もうかつには近づけないのだろう。

 響希の能力に範囲の制限はない。しかし、三メートルを離れると、響希の能力、空気銃は精度が格段に落ちる。

「二人とも、そこから今すぐ離れて!」

 未来の言葉に、僕は反射的に後ろに下がる。

 僕が後ろに下がった瞬間、今まで僕が立っていた場所に変化が起きる。

 アスファルトの地面が泥のようにぐちゃぐちゃになっている!

「なんで分かったのかしら。」

 青いメイド服の少女がそう言った。これはこの女の能力か。

「響希!」

 僕は響希の方を見る。

 しかし、響希の体には蔦が絡まっている。

 いつの間にか、響希のそばには緑色のメイド服の少女がいる。そいつの能力で響希は身動きがとれないのだ。

「ご主人様!避けて!」

「遅い。」

 未来の声を聞いたときにはすでに遅かった。

 僕は強烈な痛みの中、大鎌を振り下ろした後の、黒いメイド服の少女の姿を見た。彼女の顔には赤い液体が付いている。

 どうやら、僕の血のようだ。

 僕は大量に血を吹き出しているようだ。

 あの時と同じだ。

 二年前、僕が死んだときと。

 あの時と同じように声だけが聞こえる。

 あの時と違うのは、声が少女達の声だということだ。

 僕を呼んでいる声が聞こえる。

 泣きながら。

 きっと、あの三人だ。

 敵は僕の命だけが目的だったのだ。だから、三人は能力から解放されたんだろう。

 よかったんだ。これで。

 でも、本当にこれで良かったのだろうか。

 又兵衛なら、きっと満足しないだろう。だって、泣いている人がいるのだから。彼は誰も涙を流さない世界を、誰も苦しまない世界を心から望んでいるのだから。例え自分を犠牲にしても、それでもいいと思いながら。

「バカだった。私はバカだったわ。」

 叶の声だ。

「一番大切な人は誰にだって存在する。千秋は三人にとって一番大切な人だったのに、私たちは、そんなことにも気付かずに、ただ傍観して、千秋だやられるのを見てただけなんて。」

「私たちにとって、後藤くんがとても大切なのと同じように、この三人にとって、その千秋って男の子はとても大切な人だったはずなのに。」

 叶といた、もう一人の制服の女の子の声なのだろう。

 殺気。

 二人から怒りを伴った殺気が湧きおこっているのを感じる。

 僕は三人のためになにをした?

 僕は三人のためにまだなにもしていないじゃないか。

 まだ、僕には生きる理由が残っている。

 僕は、まだ、生きたい。

 全ての体の感覚が戻ってくる。

 この感じは・・・能力が発動した?


 僕は立ち上がった。

 傷は完治している。

「二人とも。ありがとう。」

 僕は僕に背を向けメイド服の集団に対峙している二人の制服の少女に向けて言った。

「千秋・・・アンタ・・・」

 二人は驚いた様子で振り返った。

 それは仕方のないことだ。

 死んだはずの人間が生きているのだから。

「なんで胸があるのよ。それも、私より大きい。」

 しまった。先ほどの攻撃で服が破けてしまったのだ。制服の下に巻いていたさらしも当然ほどけてしまっている。

 僕は女だ。男の恰好をしているが、女だ。

 殺気を感じる。

 これは、二人から発せられているものだ。

 僕に向けて。

 僕は反射的に二人に背を向けて逃げていた。

 二人は恐ろしい形相で僕を追いかけてくる。

「まて、千秋。アンタ、今まで男と偽ってマタちゃんに近づいてたの⁉」

「軽々と後藤くんに女が触れていたなんて・・・滅殺!」

 後ろから電撃と桜吹雪が迫る。

 僕は逃げ続ける。

 まだ日が暮れていないのに、月が輝いている。

 どうしてこうなる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ