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バラバラ死体の春

 バラバラ死体の春


『今日は何にもなかった。

 え?強いて言えば、なにかなかったかって?

 う~ん・・・そうだな・・・

 そう言えば、朝っぱらから、修治の創作に手伝わされてたっけ?創作ってなにをしてたかだって?それはな・・・

 あと、数学の鬼の大久保先生からお叱りを受け、放課後に生徒指導に呼び出されました。とてつもなく、辛かったです。これからは精進していきたいです。どうせ三日で終わるだろうけど』


 その日は驚くほど静かな、いや、静かすぎるほどの朝だった。

 朝から妹が部屋の扉をぶち蹴る音で目を覚まさずに、自然と目を覚ました。昨日、いや、正確には今日だが、遅くに寝たにも関わらず、自然と目を覚ましたのである。

 そして、何事もなく学校へと行きついた。

 そう。俺が学校に着くまで、正確には、津島修治が訪れるまでは不気味なほどの静けさだったのだ。

 俺はこの不自然さを何事もなく享受していた。享受ってどういう意味?

 気が付いてもいいはずだったんだ。それが嵐の前の静けさだったのだということに。

 後に、カトリーナ級のハリケーンが俺のもとに上陸してくることを俺は予期できたはずなんだ。

 そのお陰で、俺の今日一日は、最悪となってしまった。

 俺は教室の自分の机に座った途端、眠くなってしまった。

 小木は相変わらず俺より早く教室に来ている。

 頭痛がする。

 完全に寝不足の症状だ。

 この時、俺は気が付いた。

 朝、不自然に目が覚めたのは、よく眠れなかったからであることに。

 眠ろう。

 というか、眠らなくては死ぬ。

 俺が机に突っ伏して、就寝体勢に入ったころ、ヤツは訪れた。

 悪魔は来たりて笛を吹く。

 このことわざは本当だったんだな。

 え?ことわざじゃない?いいんだよ。細かいことは。俺は意外と適当だからな。ん?以外ではないって?お前、俺をどんな人間だと思ってたんだよ。まあ、いいけどな。

 津島修治は口笛を吹きながら俺の教室へ入ってきた。

 ちなみに口笛の曲は『21世紀のスキッツォイドマン』。

 和訳すると、二十一世紀の精神異常者。朝っぱらから不吉だな。歌詞と音楽自体はそんな不吉な代物ではない。確か、湾岸戦争を批判した曲じゃなかったかな?歌詞にナパーム弾とか出てきた気がするし。

「舞い戻ってきましたよ。」

「お前はなんだ、片目に漢数字でも刻まれていたりするのか。」

「よし。じゃあ、行こうか。」

「どこに?というか、俺のツッコミを無視するだと⁉」

 そう言って、修治は俺の手を引っ張って教室から連れ出す。

 俺は連れ出される直前に小木の方を見る。

 助けてくれ、小木!

 俺は声にならない叫びを小木に発する。

 しかし、小木は文庫本から目を離そうとはしなかった。

 小木にはなにも認識できていなかったのだろう。もしくは、小木にとってはどうでも良かったのか。もしくは、小木も修治には関わりたくなかったのか。

 もしくは、いつものことだからか。俺が修治に巻き込まれることが。


 修治は俺の手を引いて、校舎を出た。校舎を出たところで、ようやく手を離す。

「で?今度はなんだ?」

 俺はうんざりしながら修治に聞く。ろくでもないことしか修治は言わないから、俺は聞きたくもなかったのだが、なにをするか聞いておいた方が、心の準備ができる。

「いやあ、今ね、ミステリー小説を書いてるんだけどね、トリックが一つも思いつかなくってね。」

 普通、ミステリーってのは、トリックを思いついてから書くものなんじゃないのか?別にミステリー作家じゃないから、分からないけどさ。

「ホント、コ×ンくんはすごいね。毎週誰かを殺してるし。」

「ちょっと待て。別にコ×ンくんが毎週誰かを殺しているわけではないだろうが!青×先生に謝れ!全国の名探偵コ×ンファンに謝れ。」

「ちょっと待ってよ、又兵衛。コ×ンくんが絶対に毎週誰かを殺していないっていう確証は何一つないんじゃない?それにコ×ンくんの死亡事件の遭遇率は異常だよ。それに、コ×ンくんは多くの場合、事件の発生前に被害者と接触しているんだ。ここから導き出される真実はいつも一つだよ。」

 ま、まさか、本当にコ×ンくんが・・・

 そう言えば、不自然だ。

 そう。コナンくんしかトリックが分からない。後は犯人しか。しかし、それは、コ×ンくんが犯人である可能性も・・・

 眠りの小×郎のおじさんの言ったことを誰も疑わないということは、つまりは・・・

「かのシャーロック・ホームズも言ってたよ。自分が犯罪者の側だったとしたら、誰も手が付けられなかっただろうってね。」

「って、そうじゃないだろうが。ミステリー小説のトリックを考えてるんだろ?で?なんで俺を校舎の外に連れてきたんだ?」

「そんなの当たり前じゃないか。」

 さも当然だよ、という表情で修治は言う。こんな時の修治はろくなことを言わない。嫌な予感がする。

「殺人事件を見つければいいんだよ。」

「学校でどうやって殺人事件を見つけるんだよ。というか、そんな物騒なことをさも当然のことのように言うな。」

「でも、的を射てると思わない?」

「思わんな。」

 殺人事件にコ×ンくんであるようなトリックが使われる可能性など、皆無に等しい。ドラマやアニメのような事件なんて現実に起こるはずがないのだ。

「真実はいつも一つ!」

「じっちゃんの名にかけて!」

 修治が叫んでいる。

「何を言ってるんだ?」

「いやあ、名探偵のセリフを叫んでたら、なにか事件でも起こるんじゃないかと思って。」

 バカだろう。

 登校中の生徒にまじまじと見られているのが分かる。非常に恥ずかしい。

「盆踊りだ。ワトソンくん。」

「なんで盆踊りなんだよ。ホームズはそんなことをワトソンに強要していたのか⁉」

「うん。してたよ。」

「嘘だ。絶対に嘘だ。」

 といいながらも、俺はシャーロック・ホームズを読んだことがないので、真偽は分からないのだが。

「うん。嘘だよ。」

 そう言って、修治は表情一つ変えない。

 コイツは嘘を吐くのに慣れてるな、と俺は思った。

「おばあちゃんは言ってた。」

「それはもう、名探偵でもないぞ。」

「というわけで、探索でもしようか。」

「だから、頼むから俺のツッコミを無視しないでくれ。それは関西人として一番残酷な仕打ちだぞ。」

 修治は俺の言葉を聞かずにどこかへふらふらと行ってしまう。

 仕方がないので、俺は修治の後を追う。

 このまま教室に戻っても良かったのだが、修治をあのまま放っておいたら、誰かが被害を受けるだろうから、俺が付き合ってやるしかないのだ。

 はあ。全く手のかかるやつ。


「なあ、文化部にそういうミステリー系の部活ってなかったのか?」

 俺は修治にそう聞いた。

 俺と修治は文化部棟と四百号館との間に来ていた。

「いや、なかったと思うよ。文化部はただでさえ目立たなくて、どの部が廃部になっているのかさえ不明なのだからね。」

 校舎は校門の近くから順に、百号館、二百号館、三百号館、四百号館、と建てられている。そして、文化部棟は旧校舎を利用しているので、四百号館の更に奥に建っている。

 文化部棟は別名、天岩戸と呼ばれ、その実態は生徒会はおろか、教師さえ把握していない。いや、生態というべきか。

「去年暴れまくった部活はそんな感じの部じゃなかったか?」

「それは超常現象解明部だよ。ミステリーとはちょっと違うみたいだよ。オカルト研究部みたいなものらしい。」

「はあ。というか、よくもそんな部がまだ続いてるな。」

「高校が出来たころからあるらしいよ。」

 それはいつの時代だろうか。明治とかから続いてるのだろうか。

「はあ。ここにも死体は転がっていないのか。つまらないね。」

「いや、それはそれで非常に困るんだが。」

 ポン!

 修治が手を叩く。

 これは修治の癖だ。

 とんでもないことを思いついたときの、修治の悪癖。

 きっと、世界が終わる時はそんな音がして終わるんだろうな。

 俺は漠然とそう感じていた。

「事件が起こらないのなら、自分で起こせばいいんじゃないか。なんだ。至極たやすいじゃないか。」

 俺は耳を疑う。いや、疑うのは俺の耳だけでは不足だな。修治の頭と正気を俺は疑った。

「本気か、お前。」

 問うまでもない。コイツはいつも本気だ。

「ねえ。又兵衛。死んで。」

 ひょええええええええ。

 コイツはどこのヤンデレだ。

 修治は手を広げて俺の首を狙って襲いかかる。

 俺は急いで逃げ去った。


 このとき、俺はまだ知らなかった。これが事件のプロローグであったことに。


 一限目は数学。

 しかし、俺の体力は限界を超えていた。

 俺はいつの間にか意識を失っていた。

「いってえぇぇぇぇ!」

 俺は額に強烈な痛みを感じて目を覚ます。

 その直後、後頭部にも痛みを感じる。

 何が起こったのだろうか。

 俺の目の前には教室の天井にあるはずの蛍光灯が見える。

 つまり、今、俺は床に倒れている?

 後頭部に痛みを感じたことから察するに、俺は椅子と共に後ろへ倒れたようだ。

 ひとまず上体を起こして状況を確認する。

「私の授業で居眠りをするとはいい度胸だ。」

 まさか、その声は・・・

「お、おはようございます。大久保先生。」

「顔を洗って出直して来い!」

「はい!」

 俺は兵士のような返事をして、教室を出て行こうとする。

 その時、

「放課後、生徒指導部に来い。」

と大久保先生は言った。

 死刑宣告。

 俺はどうやら、放課後に死ぬことになるらしい。

 朝から命を狙われてばかりだな。二度あることは三度あったりして。冗談じゃない。そう何度も命を狙われてばかりでたまるか。

 しかし、この死刑を逃れるためなら、死んでもいいと俺は思った。


 昼休み、俺が額に出来たたんこぶを気にしながら沈んだ気持になっていると、修治が俺の教室に駆けてきた。

 最悪だ。

 一限から大久保先生に投げつけられたチョークでたんこぶが痛むのに、その上昼休みまで修治に付き合わされるのか。それに、俺はまだ弁当だって食ってないんだぞ。

 しかし、修治はいつものふざけた修治とは違っていた。

 息をきらせ、呼吸が整わないまま、修治は俺になにかを言おうとしている。

「・・・し・・・・たい・・・・ロキ・・・が・・・こ・・ころ・・・」

「落ち着け、修治。どうしたんだ?」

 必死の修治の様子に、クラスメイトがざわめきだす。ただごとではないことを悟ったようだ。

「ロキが・・・死んだ・・・」

 なんだと⁉

 どういうことだ。

「文化部棟と四百号館の間でロキが殺された。」

 まさか、朝に行ったあの場所でか⁉

 俺は一目散に現場へ向かう。

 嘘だ。どうせ、修治の冗談に決まっている。

 しかし、俺は胸騒ぎが治まらなかった。

 嫌な予感が胸の中に溜まって晴れることがなかった。

 嫌な予感なんて外れてくれ。

 俺は生まれて初めて心から神に願った。

 しかし、神には俺の願いは届かなかった。


 信じられない光景。

 ドラマってのは、意外と現実と忠実に作ってあったんだな、なんて場違いなことを考えってしまった。

 現場に着いた俺を出迎えてくれたのは、見るも無残な親友の変わり果てた姿だった。

 トマトジュースのように鮮やかな液体の中に、ピクリとも動かない物体がある。

 もう、それは人間じゃないんだ。

 でも、そんなことを俺は信じられなかった。

 ロキだった物体は、真っ赤な血液の中心に仰向けで倒れていた。ロキの身体には右斜め上から左斜め下まで、ぱっくりと傷跡がついている。刃物かなにかで殺されたのだろうか。しかし、こんな傷、ナイフでは絶対につけられない。もっと大きな刃物でないと、内臓が飛び出るほど深く大きな傷はつけられないはずだ。

 どうしてロキが。

 誰がロキを。

 分からない。なんで。なんでなんだよ。

「又兵衛。警察を呼ぶんだ。」

 突然聞こえた修治の声で、俺の心のダムは決壊した。

 自分でもよく分からない叫び声とともに、俺は泣き叫んでいた。


 だんだん、人が集まってきた。

「どいて!どいて!」

 生徒をかき分け、白衣の女性がロキの亡骸のもとに進んでいく。

 俺はその姿を呆然と見ていた。

 もう、涙は出なかった。

「四限目の時に殺されたみたいね。警察はもうちょっと時間がかかるみたい。」

 白衣の女性、昨日俺をからかった保健室の先生が、俺に聞かせるように言った。

 その時だった。

 大きな音と共に、俺の親友の二人目が死体となったのは。


 俺は嫌な予感と共に、音のした方へと急いだ。

 俺が聞いた音は、今まで一度も聞いたことの無い音だった。

 嫌な予感は当たってしまう。

 俺の前には、血の海に沈む古巣と、その古巣の死体の首に手を当てて脈をとっている修治がいた。


 第三の被害者である小木は教室で体中にナイフが刺さった姿で発見された。


「修治。これは、これは、どういうことなんだよ。夢じゃないのかよ。こんな・・・こんなことって・・・」

 小木の心配をして、教室に戻った俺たちを出迎えたのは、屍と化した小木だった。

 ロキに古巣に小木。

 どうして俺の親友ばかりが。

 そして、残るは俺と修治と、最近会っていないフロイトと千秋。

 俺はフロイトと千秋のもとへ向かう。

 しかし、どの教室にも人はいない。

 きっと、ロキと古巣の亡骸を拝みに行ったのだろう。

 はっはっはっはっはっはっは。

 俺は大声で笑い出した。

 笑いが止まらない。

 笑いと共に、今までの状況が頭の中でぐるぐると回転していく。

「犯人はお前だ。津島修治。」


 四限目、修治のクラスである六組は体育であった。その証拠に、修治は未だに体操服のままである。体育は三つの組で合同で行われるため、少しの間抜け出したところでばれることはない。

「ちょっと待ってよ、又兵衛。僕がロキを殺したとして、ロキはあんなひどい傷を負っていたんだよ?それじゃあ、僕の体操服は真っ赤になっているはずだよ。」

「制服を着たんだよ。」

「でも、それじゃあ、僕の制服を調べれば分かるだろう?僕の制服は血に染まってなんかない。」

「古巣の制服をな。」

 監禁していた古巣にロキの血に染まった制服を着せ、屋上から突き落とす。

「でも、僕は古巣の死体のそばに駆けつけていたよね。」

「しかし、お前はロキのそばからいつの間にか離れていた。」

 俺が古巣のもとへ行くのには時間がかかっていた。

 なぜなら、人が多く、通るのが大変だったのだ。

「お前は野次馬が来るより先に俺のもとから離れていた。」

 泣き叫んでいてそれに気がつかなかった俺はバカだった。

「お、小木は・・・」

「小木はロキと古巣との間の犯行だ。」

 俺はロキの死体を見てから十分以上も硬直していた。

 つまり、修治が来たのは十分後。その間、俺は修治が先生でも呼んでくると思っていたが、修治は手ぶらだった。

「お前はクラス中にロキのことを知らせに行った。その時、ロキの死体の場所は別の場所を教えたんだろう?」

 クラスメイトは一斉に修治の教えた偽の現場に移動を始めただろう。

 何事にも動じない小木を除いて。

「お前はあらかじめバッグか何かに入れておいた、血まみれの古巣の制服を着て、小木を殺った。そして、それを着せ古巣を校舎から突き落とした。」

「しょ、証拠は何一つないじゃないか。又兵衛。推理だけでは事件は解決できないんだよ。」

「修治。この国の鑑識の技術はとてつもなく高い。特に、明らかに他殺であるような殺され方をしているんだ。それに、殺されたのは俺たちの親友だ。ばれてしまうのも時間の問題なんだ。」

 そう。だから、俺は黙っていてもよかった。でも・・・

「修治。自首してくれ。」

 これが親友に対する俺の思いやりなのだ。

「はは。はははははははは。」

 修治は口を裂けんばかりに釣り上げる。

「ねえ、又兵衛。いつから気が付いていた?」

「お前が救急車ではなく警察を呼べと言ったときにな。」

 いくら即死が確実でも、普通は救急車を指示するだろう。ロキが死んでいるのを確信していれば別だが。

「じゃあ、又兵衛。その警察が来ないのはどういうことだろうね。」

 俺は警察を呼んでいない。集まり始めた野次馬が連絡したはずだ。

 しかし、それからしばらく時間が経っている。

 なぜだ?

「又兵衛。君は完全に僕の暗示にかかってしまっていたのだよ。君が僕を疑い始めたのは、僕が警察を呼ぶことを指示したからではない。もっと前の出来事が原因だ。」

 もっと前・・・

 朝。修治は「自分で殺人事件を起こせばいい」と言った。

「そして、君の一番の失敗は、一度も死体に触っていないからだ。」

 どの死体も無残で、死んでいるのは確実に思われた。

 いや、違う。

 一体だけ、古巣は屋上から突き落とされた。もしかしたら、生きていたかもしれない。しかし、その生死を判別したのは修治だ。

 ポンポン。

 俺の肩を後ろから叩く人間がいる。

 現場から帰ってきた野次馬か。

 にしては不自然だ。一人だけ帰ってくるなんて。

 それも、俺の後ろは俺の教室、二年四組の教室の扉で、誰かが教室に帰ってきていれば気が付くはずだ。

 では、俺の肩を叩いているのは・・・

 俺は後ろを振り向く。

 ナイフが体中に刺さっている小木の死体が俺の後ろに立っていた。


 結局、誰一人死んでいなかった。

 俺は修治にまんまとだまされたわけだ。

 ロキは特殊メイク。どうも文化部に特殊メイク部とかいう部があったらしくて、修治が話を持ち掛けると、喜んで引き受けたという。小木も同様に特殊メイク。

 古巣はというと、あの屋上から落ちた音は録音だったそうだ。血は血糊ね。

 そして、野次馬は、俺が走ってロキのもとに行った直後、クラス中に動画の撮影だと言いまわったらしい。その時に、警察に電話をかけるフリをするように頼んだんだとか。

「で、あの保健医もグルだったのか。」

「いやあ、又兵衛を騙すつもりだって言うと、目をギラギラさせて協力させてくれって言ってくれたよ。」

 あの美人め。あの女ならやりかねん。

「ばっちり撮影もしてくれたしね。」

 え?それって、まさか・・・

「朝のシーンからばっちり撮ってあるよ。制服の胸ポケットを探ってごらん。」

 俺は胸ポケットを探る。すると、見たこともない機械がでてきた。

 修治はそれを俺の手からサッと奪い去る。

「おい。それって、まさか・・・」

「うん。録音機。」

 まてやこらあ。

 俺は逃げていく修治を追っていく。

 大丈夫。これでもまだマシなおふざけだ。修治にしてみればな。


「今日は散々だったね。」

「お前が言うな。」

 俺と修治、並びにロキ、古巣、小木は学校に最寄りのファストフード店で打ち上げと称してハンバーガーを頬張っていた。

「で、又兵衛。鬼の大久保の説教はどうだったよ。」

 ロキは同情の一つも見せない笑顔で聞いてくる。

「もう思い出したくもないよ。昼のことでいじってもいいから、大久保のことは聞かないでくれ。」

 もう、思い出せない。そう。思い出せないんだぞ。うん。思い出せない、思い出せない。

「すごく怒られたんだ。ククククククククク。」

 古巣はいつも以上にツボにはまっているようだ。

「明日は水曜か。」

 どうでもいいことを、俺は言った。

 あるだろ?どうでもいいことを言いたくなる時が。

 俺はファストフード店から外を見た。

 オレンジ色の夕焼けが夜に侵食されて、混じりあいそうになっていた。

 今日っていい天気だったんだな。


 愛とはどういうものだろうか。

 そんなこと、ボクに聞かれても困るんだが。

 愛など、本当に存在するのだろうか。

 愛なんて存在するわけがないじゃないか。有体物ではないし、目で見えるものでもないのだから。

 人形使いよ。私は概念的な話をしているのだ。そんな三次元的な話をしているのではない。

 それなら、宇宙人であるボクに聞いたって仕方がないよ。宇宙人には想像力がないのだから。ね?十三番目。いや、君は十三番目ではなかったんだったね。

 愛という言葉は漠然とし過ぎている。愛と愛ではないとの境界さえ、曖昧だ。愛とはなんなんだ。

 どうしてそんなに愛にこだわるんだい?もしかして、ボクにプロポーズでもしているのかな?

 お前は貧乳だが、同い年だ。年下なら求婚しても良かったんだがな。

 絶壁で悪かったな。

 いや、絶壁は悪いことではないぞ。むしろ、この年頃では希少種だ。尊いものだぞ。

 バカにしてるよね?

 私が貧乳好きなのは知っているだろう?冗談なんかではないよ。

 一発殴らせてくれないか?

 私はそっちの趣味はない。

 なら、目覚めさせてやろう。

 止めておけ。本当に目覚めかねん。

 おや?今日はなにやら騒がしいねえ。四百号館からざわめきが聞こえる。そして、百号館の屋上で誰かが騒いでるよ?

 思いやりが愛の正体だろうか。

 動じないね。君は。

 それとも、自己犠牲か。

 でも、それは・・・

 ああ。分かっている。八番目の大罪だろ?

 それがエイプリルフールに君が見つけた答えなのかな?

 そうかもしれない。

 もう、ボクらの戦いは終わったんだよね?

 いや。終わりは始まりの合図だ。我々はまだまだ終わらない。死んでも終わらないのだよ。


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