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2、運命の華  作者: 月華
1/1

困惑1

夢をみた。

あれはすごく愛しい時間。

あの時間が壊れるなんて夢にも思いもよらなかった。

自分が生きている世界がどんなに残酷なのかまだ知らなかった。


「ねえー、那岐(ナチ)!」

「うわ、何?」

「まーた、本読んでいるの?」

「桜、ちょ、返せ」

「ぷー!って、これ!!」


制服を着ている少女は黒いスーツを着ている20代後半の男性に抱きついた。

長い髪に、目がぱっちりとした二重。誰もが可愛い!と思って立ち止まる一族の花。


「那岐、大好き!!」

「ちょ、声大きい!!」

「いいじゃん!・・それに私もうこんなふうにこっそり会うのとか、いやなの!!」

「嫌って、しょうがないだろ?お前は一族の華。俺は花や樹じゃないんだから。」

「でも、那岐だって一応橘の人間でしょ!?」

「端くれのな。」

「もう!またそんな事!それに那岐は頭はいいし、強いじゃない!」

「そりゃ、どっかのわがまま姫のボーディガードですから。」

「那岐!!」

「それと、一応今度は父親になるしな」

「・・那岐。有難う」

男女が寄り添ってみているのは、名前の付け方と書いてある本だった。

「ねえ、那岐。私ね今度、大御祖母様に言うつもり・・」

「・・分かってる。俺も正直に言う。否定されても桜。お前と生きていきたい」

「うん。それに私がきっかけで橘が変わってくれたら嬉しいの」

「・・桜。」

「この時代に好きな人と結婚できないなんておかしい。菫姉さまだって本当は好きな人がいるのに

違う人と婚約している」

「でも、スミレ様すきになったって・・」

「私も相思相愛だって分かってる。それにもう赤ちゃんもいるって。」

「赤ちゃん?!」

「うん!・・この子と幼馴染になるかもね」

そう言って、桜は自分のお腹に手をあてた。

「・・桜。女の子か男の子両方の名前考えとかないとな。」

「大丈夫!女の子だって分かっているから!」

「何で?」

「んー、女のカン?」

「・・何だそれは?桜って、本当天然だよな・・」

「何それ!でも、この子は女なの!それにもう名前決めているの!」

「え、もう?!」

「うん。女の子の名前は、水華。」

水華ミズカ?」

「うん。桜や、梓、百合のように決まった場所。そこにしか咲けない華とかじゃなくて、水のように

どこまでも自由に流れる華のようになってほしいから・・。」

「・・そっか。」

男性はそう言って、桜の手の上に重ねるように優しく手を置いた。

「桜、絶対幸せになろうな。っていうか、幸せにさせる」

「うん。絶対この子を産むね。」


そう微笑んでくれた一番大切な人。

愛する人。

大切で「愛してる那岐」と言ってくれた。

この世界で守ると決めたただ一人の人。

そして、守れなかった。


「那岐ごめん。ごめんね・・。傷つけてごめん、なさい・・・。」


ボロボロに泣いて、「俺こそ、ごめん。大丈夫。泣くな」と何回も言ったが

桜は聞いてくれず、最後まで首をふって泣いて「ごめん、なさい」と言って、誰にも言わず

消えてしまった。

これから産まれてくるだろう子と一緒に。


「桜・・。」


-------------------------------------------------------------------------------

真っ暗な一人部屋。

コンコンッ


「入って」

「菫、どうした?今日は風川に行って、そのまま京都に行くんじゃなかったのか?」

大きな机、そしてそのソファーに黒いスーツを着たとても綺麗な女性が座っていた。

年30-40代。

そして、部屋に入ってきたのはまた男性も背が高く、同じように黒いスーツを着ていた。

「さっき帰ってきて、棗に聞いて驚いたぞ。」

「ごめんなさい、あなた。明日も早いのに。明日、イタリアへだったかしら?」

「・・全くだ。お前の義母は人使いが荒い。」

「クスクス。橘の女は強いのよ・・。」

そういって、菫は自分の書斎机の上にある一枚の写真を見た。自分達兄妹の写真。

一族から何も言わず消えてしまった末っ子の妹、桜が写っている写真。

あれは自分が今の旦那と結婚して子供を産む時、妹も大学卒業ぐらいだっただろうか?

母にも、好きだった人にも、自分にも何も言わず。一族の情報でも桜の何一つ手掛かりは

つかめなかった。

そして今10年以上たってしまった。


「・・あれから10年以上たつな」

「ええ・・」

「未だに何も分からない。」

「もう諦めてしまっていた。私も、母も、彼も。・・今日風川に行ってきたわ」

「久しぶりの母校、息子の学校はどうだった?」

「・・桜にあったわ。」

「!!??どう、いう・・」

男性、成樹セイジは驚愕して菫をみた。言った菫は苦しそうに目をつぶり顔を伏せていた。

「・・そっくりだったの」

「さく、ら・・にか?」

「ええ・・。瞳は違ったけど。なんというか雰囲気?が似てたのよ」


昔家の庭に大きな桜の樹があった。

桜は自分と同じ名前の樹が好きだった。そしてよく桜の季節には見上げていた。

あのいなくなる前日も。

そして、今日久々に母校に行き時間があったから高等部も少し見て帰ろうと思っていた。

この時期にまだ咲いている桜の花に不思議になり、もう少し近くで思い近寄った。


そして、その少女はいた。

肩過ぎまでのまっすぐな黒い髪。

桜のようにぱっちりな二重と、筋の通った鼻ではないが、どこにでもいるような女子高生。

・・ただ、自分に驚き振り返った瞬間の面影。どことなく彼にも似ていた。

そして、あの雰囲気。

「クス。脅かさないで、菫姉さま・・。」

あのいなくなる前日の桜の感じにすごく似ていた。


「風川の生徒か?」

「多分、高校生よ」

「・・京都に行かなかった理由か?」

「っつ。違うならそれでいい。正直諦めいていたわ。でも、あの少女と、桜の花見た瞬間・・。

 少しでも繋がりがあるなら、可能性にかけたいの。何もできなかった、から・・。」

「・・菫」


あの日

「・・またこんなところにいたの?」

「ッツ!?・・脅かさないでよ、菫姉さま・・」

「・・お母様が呼んでいるわ。彼のけんと、婚約者のけんと」

「・・あんな大騒ぎがあったのに、まだ私に婚約者?」

「桜・・」

「お姉様、私、水になりたいわ・・。」


そう言った妹に何も言えなかった。あの時自分がもっと話しかけていれば、慰めていれば・・。

何度後悔したのだろう・・。

でも、あんな事あった後に、桜自身がいなくなるなんて思いもよらなかったから・・。


「・・その風川の女子生徒の名前とか、特徴分かるのか??」

「あなた・・」

「菫は、もしもの事考えた事あるのか?」

「ッツ、今まではなかったわ。全く持って。でも、あの少女を見た瞬間に・・。」

「そうか。俺は考えた事もなかった。・・彼を知っていた分、な」

「私だってそこまで考えていなかった。でも、桜ならする。ううん、女なら同じこと思うわ」


好きな人が、傷つけられた後ならなおさら

自分の赤ちゃんが、一族に殺されるかもしれない、と。

橘家は、古い時代の教えが生きている。桜は恥ずかしがり屋に見えて実は行動派。

相手が渋っても、桜が無理に誘っていたら・・。

もし、自分の為ではなく子供がいたからと考えれば、誰にも言わずいなくなった事に繋がる

・・信じたくはないが。


「・・もし俺たちの考えが当たっていたらどうするんだ?」

「・・分からないわ」

「桜が必死で逃げて、守った子だ。

 もし一族に、当主に見つかったら縛りつけられるかもしれないぞ?桜とお前は、本家直系、だ」

「本家に戻すなんて考えていないわ。ただ、私は、守りたいし、知りたいだけ。

 それにいずれあの子は見つかるわ」

「・・分かった。っと、もし一族の人間で俺達のカンが当たっていれば、棗の婚約者かもしれないな」

「え?」

棗?自分の息子の?

「え?って、だってそうなるだろ?」

「・・そういえば、あの子にはそんな話まだないわね」

「俺たちの子なんだ。いずれはその話は出る。」

「・・はあ。平成の時代なのにね。あの子には自由な恋愛をさせてあげたいわ」

「俺は、感謝しているが?」

菫は旦那をみた。

「・・有難う」

-------------------------------------------------------------------------------


「ねえ、お母さん・・。」

「どうしたの?もう、食べないの?」

「お兄ちゃん、お姉ちゃんは?」

「お兄ちゃんはバイト。お姉ちゃんは彼氏」

バイトに、彼氏か・・

「それより、今日は遅かったわね?」


う、失敗して先生から罰の手伝いをしていたなんて、言いたくない!

それより・・。

「今日ね、学校で桜を見たの」

「桜?・・まだ咲いていたの?」

「うん・・。それでね、女の人に会ったの」

「女の人?何、先生とか?」

「いやー、なんていうか・・」

「??」

「・・やっぱ、いいや」

「何、なにかあったの?」

「ううん、何でもない。ご馳走様ー」

「・・桜?女の人?」


・・桜ちゃん?・・まさか、ね。


やっぱり、いいや。

会う事ないし。でも・・。

「・・なんか、いやな感じがする」

だいじょう、ぶだよね・・。私は自分のアクセサリー箱を開けた。

そして、一つのネックレスを取り出した。

ピンク色の綺麗な桜の形をしたネックレス。

パールのように、キラキラしている。

ものごころついたときに、お母さんから貰ったネックレスだ。

「お守りよ」


お守り

学校はアクセサリー禁止だけど。

「ネックレスぐらいなら、大丈夫だよね」

いじめられた時も持っていたネックレス。これがあると落ち着くんだよね。

「・・おやすみなさい」

































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