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7話 命に別状はない

────エルは、走っていた。とてつもないスピードで。

片腕をなくした一人の少女、リリーを抱き、その目には涙を浮かべ。

ただ、走っていた。


「お願い·····無事でいて····!」





───エルがたどり着いた場所は、学校。

彼女ら学生にとって、最も設備が整った施設。

エルは、リリーを抱いて保健室へと急いだ。



◆◆◆



「先生ッ!」


「あら、アスターレイさん····取り合えずカーライルさんをベッドに寝かせて頂戴。」


「リリーが···脈はあるけど息してないんです···!」


保健室の先生は、腕の無いリリーを見ると、すぐにベッドに寝かせ処置を開始した。


「これは····突発的な魔力欠乏ね。ちゃんと処置すれば命に別状は無いわ。安心して。腕も魔法で治せるわ。どうしてこうなったかが気になるけれど···」


その言葉を聞いて安心したのか、エルは地面に崩れるように座り込み、泣き出してしまった。

それをなだめる様に、先生が言う。


「落ち着いたらで良いから、なんでこうなったかを教えてくれる?」


エルは、小さく頷いた。



◆◆◆



リリーの処置が終わり、エルも落ち着いてきた頃。


「さて、この子はどうしてこうなったの?」


先生が質問を始めた。

エルはそれにポツポツ答えていく。


「···暇だったので、闘技場に行ったんです。それで、リリーが魔法を使ったんです。そうしたら、腕が弾けとんで、それで····」


「はい、そこ。使うと腕が無くなる魔法なんて聞いたことも無いわよ?」


「えっと···確か、リリー、オリジナルの魔法、とか言ってて···」


オリジナルの魔法、という言葉を聞いた瞬間、先生は目を見開いた。


「オリジナルの魔法!?····アスターレイさん、カーライルさんが使った魔法の名前と効果は覚えてる?」


「えっと···名前は確か、『血盟・黒獣』で····瓦礫から、黒い、狼が、いっぱい····」


先生は少しの間悩むような動作をすると、うん、と頷き、エルに向きなおした。


「うん、ありがとう。他に、変な所は無かった?」


「····相手選手の魔法の威力がおかしかった、あと、リリーの目が銀色に、なって、ました····」


「······相手選手の件については、先生が調べておくから。目の色については、夏休み、この子の家に行きなさい。恐らく、体質か何かだから、この子の親なら何か知っているはずよ。」


目に作用する魔法は、使えば確実に失明する。古代からずっとそうだ。

エルもそれを知っていたので、先生のアドバイスをありがたく思った。


「ありがとう、ございます····リリーを、お願いします」


「もちろん。そうね、明日までには完治させてあげるから、明日の朝、もう一度いらっしゃい。」



リリーはその夜、眠れるはずも無かった。



◆◆◆



エルは、早朝から保健室に来ていた。

リリーは、まだ目を覚ましていなかったが、呼吸もしているし、腕もはえている。

エルは、改めて魔法の凄さを実感した。


「じゃあ先生、薬草採ってくるから、留守番お願いね」


───先生が保健室を出ていった直後。




「んぅぅ····あ、あれぇ···?ここって····」


リリーが目を覚ました。

先生はこれをわかっていて出ていったのかもしれないが、今のエルにはそんなことどうでも良かった。


「リリー、リリー!」


「あ、エルちゃん、おはよ····って、なんで泣いてるの!?」


リリーは、どうやら何が起こっているのか分かっていないらしい。

だが、そんな事はお構い無しと、エルがリリーに抱きつく。


「リリーっ····ぐすっ、怖かっ、た···!うぅ·····リリーの、ばかぁ····ぐすっ」


「ええっ、な、なんだかわかんないけどごめん!謝るから!落ち着いて!」


何がなんだかわからず、リリーはただおろおろとしていた。

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