20話 尋常に勝負
魔法大会、決勝戦。リリーとエルは闘技場に立っていた。
「エルちゃんだからって容赦しないよ!」
「うん。無駄な情けは、相手を侮辱するだけ」
二人はやる気マンマンだった。
準決勝もあったのだが、二人とも3秒以内に試合を終わらせた。相手は涙目である。
『それでは、決勝を始めます!』
ドォォォォォン
銅鑼の音が鳴り響いた瞬間、二人は闘技場からいなくなった。──ように見えた。
本当は、教師や、観戦に来ている高ランクの大人でさえ視認できないスピードで動いている。
そのため、観客からは、何もない会場から時々爆発音がなっているという現象に見えるだろう。
「エルちゃん、やるね!もうあれ使っちゃうよ!」
「·····じゃあ、私も」
「え?」
二人が同時に止まったかと思ったら、二人とも髪の毛が銀色に染まっていった。そう、二人ともである。
「ええええ!?なんでエルちゃんがこれ使えるの!?」
「わかんない。でも、昨日やってみたらできた。」
「えぇ~·····まあいいや!いくよ!」
そう言うと、リリーは両手を大きく広げ、エルは右手を上に上げた。
「第二の呪、《血界・乱れ桜》!」
「《刻印・時雨》」
瞬間、リリーの両腕が吹き飛んだ。だが、リリーは痛みを感じず、流れ出た血は空へと舞った。
一方、エルの右腕には紋章が浮かび、闘技場にのみ雨が降り始めた。
その直後、真っ赤な花びらが空から舞い降りた。
「この花びらはね、神龍の鱗も簡単に切り裂くんだよ!」
「この雨は、触れたものの時を、つまり命を奪い取る。降参なら今のうち」
「ふっふっふ、残念!私の防御魔法は既に改良済み!空間魔法と時空魔法の力で敵の攻撃を無理矢理相手に跳ね返すのだよ!」
「残念でした。空間魔法系統無効化。」
「なんだってー!?」
こんな物騒な会話をしている間もずっと、音速に近い速度で魔法を撃ち合っているのだから驚きだ。
観客はもはや何が起こっているのかすら理解していない。
こうして3分ほど撃ち合ったあとに、リリーが動いた。
「《フルヒール》!《ギガリジェネーション》!」
そう、《血界・乱れ桜》を解除したのだ。もともとこの技は自分の血液を武器にするタイプの技なので、傷を治したら技も止まる。
エルはチャンスだと思い、強力な魔法を発動する。
「《スターライト・グングニル》!」
一つ一つが星を砕く威力を持つ槍が30程、リリーに光速で飛翔する。だが。
「止められた····いや、止まった?」
「ふふ、時魔法は魔法も止めれるんだよ!そして!」
リリーが手のひらを強く打ち合わせる。すると。
『動けない、何をしたの?リリー』
「ふっふっふ~。時間を止めたのさ!これで私は集中して詠唱ができる!」
『····リリーが詠唱を必要とするほどの魔法?』
「顕現せよ。我は王なり。龍の力を以て、破壊の限りを尽くせ。」
ここまで言って、リリーは時間停止を解除した。そして満面の笑みでこう言った。
「私は、エルちゃんと正面から全力で勝負したいな!終の呪、《血盟・黒龍》!」
闘技場に、おおよそ100体の龍が出現する。だが、それらの体は一瞬で爆散、龍の血がリリーの手元に集まり、一本の槍を造り出した。
「《深淵・龍槍》。この槍は、純粋な闇属性なんだ。私の闇属性最強の攻撃。エルちゃん、光適正だったよね?」
エルはその言葉の意味を理解し、クスリと笑った。
「神の扉、展開」
エルの背後に、先程使った《スターライト・グングニル》が、数えきれないほどに出現した。
そして、それがゆっくりと移動し、エルの手に集まっていく。やがて、それらは一つの槍となった。
「····名付けるなら、《天槍・神撃》」
二人は同時に槍を投げる構えを取る。そして、同時に翼を展開する。
翼の影響で、二人の槍が膨れ上がる。
「···ふふっ、私たちって割と人間辞めてるよね」
「···ん、リリーは、もともと半分龍だから、人間では無い」
「見た目も気持ちも人間だからセーフ!···それじゃ、いくよ?」
「うん、負けない」
二人は槍を持つ手に力を込め、互いの目を見る。そして。
「いざ!」
「···尋常に!」
「「勝負!」」
─────その日、行われた試合は、後に伝説として語り継がれる事となる。




