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11話 ガルーダを使い魔にしたい(前)

「この杖使ってみたい」


ロイギスとの世間話を終えて町に向かって歩いていたリリーは、突然そんなことを言い放った。

あまりにも唐突だったので、エルも困惑の表情を浮かべる。


「いきなり、どうしたの?」


エルがそう尋ねると、リリーは目を輝かせて語りだした。


「この前、ペットが欲しいなーって思ったんだよね。それで先生に訊いてみたら、使い魔なら寮に入れてもいいらしいんだよ!それで私ね、昔からワンちゃん飼ってみたかったんだ!でも、犬型の魔物なんて居るのかなーって思って調べたんだよね。そしたら狼型のばっかりだったんだよ!でも狼でもいいかなーって思ったんだけど、皆顔が怖いの!だからね、可愛いい魔物ならなんでもいいやーって事にしたんだけど、この大陸の魔物みんな可愛くないんだもん!それでね、魔物図鑑のメルタクラス大陸のページめくってたらね、たまたまスゴい可愛いのが目に入っちゃって!もうその子を使い魔にするしかないよねーって!で、その魔物っていうのがー·····って聞いてるー?」


「·····ハッ、聞いてるよ。それで?」


正直話が長すぎて途中から聞いてなかったが、あまりにリリーが楽しそうに話すため止めるのも酷だと思い、エルは続きを催促した。そして、リリーの口から驚きの一言が発せられる。


「で、その魔物ってのが確か、ガルーダってやつなんだけどね、その」


「ちょっとまって、ストップ」


リリーから余りに現実味の無い名前が出てきたので待ったをかけるエル。


「今、ガルーダを使い魔にするって言った?私、聞き間違えてない?」


「うん、言った。さっきの塔から遠視魔法使ってね、巣で卵が孵った瞬間を見ちゃったんだ。これはもう行くしか無いでしょ!」


────今、ガルーダが孵ったと言ったか。

ガルーダは10~1000年周期で目覚めるとされている魔物だが、そのあまりに広い振れ幅に、実際にガルーダを見たことがある人は片手で充分数えられるほどだ。

だが、リリーが孵ったと言うのなら本当なのだろう。エルの心配はそこ以外にあった。


「リリー、ガルーダのサモン条件、知ってる?」


サモン条件、というのはその名の通り魔物を使い魔にするための条件だ。

ガルーダ並みの魔物になると知能も備わっているため、条件をクリアしたうえで本人を納得させなければならない。そして、上級の魔物になればなるほど条件は厳しくなっていく。


「えっと、炎系統の魔法で圧倒しなきゃダメなんだっけ」


「そう、そしてガルーダは炎を10%までダメージを抑える。普通、無理。」


·····どうしてレアな魔物の情報がそんなに揃っているのか、と思う者もいるだろう。

ガルーダは、目覚める度に性格が変わる。アホな時に人間に言いふらしたそうだ。


「まあまあ、狂暴な魔物じゃないらしいし?行くだけ行ってもいいよね?」


「はぁぁぁ~·····危なくなったらすぐ帰る、わかった?」


エルが大きなため息をついたあと、お母さん的な発言をした。

リリーは嬉しそうに返事をするのだった。



◆◆◆



ロイギスのいた塔から南東に約30km。そこにある高台の上にリリーたちはいた。


「わぁ~、高いなぁ~。ここから落ちたらミノタウロスでも無事じゃ済まなさそう····」


そんな時に、ふと何かの気配を感じて上を向くと、そこには大きな枝が一本岩から生えており、そこに大きな赤く輝く鳥がいた。


「あ、ガルーダ!会いたかったよ!」


「リリー、落ち着いて····キャラ若干変わってる」


ハイテンションになったリリーをエルが落ち着かせていると、ガルーダがゆっくりと降りてきて、二人の前にふわりと着地した。人の頭ほどの大きさだった。


『君たち、僕に何か用?』


頭のなかに声がいきなり響いてきたので、二人はきょろきょろと辺りを見回す。

だがすぐにガルーダの声だと気がつき、驚く。


「え、ガルーダって喋れるの!?」


『そりゃ、神の遣いとか呼ばれてるからね。それで、なんの用かな?』


リリーは忘れかけていた本来の目的を思いだし、慌てて用件を話す。


「ああ、忘れてた!私、ガルーダに使い魔になってほしいんだ」


それを言うとガルーダはうーんと唸りはじめた。


『僕は良いんだけど、条件を達成して貰わないと創造神様に何言われるかわかったもんじゃないからね。君に達成できるかい?僕に定められた条件が』


「勿論!そうじゃなきゃここに来てないよ!」


するとガルーダは面白そうににやりと笑い、


『へぇ、言うじゃないか。それじゃあこっちも本気でいかせてもらうよ。是非圧倒してくれ。』


そういうと、全身を炎で包んだ。

その炎は宙に浮かび上がったかと思うと、すぐに凄まじい光を放った。


しばらくしてリリーが目をあけると、そこには。



─────幼い少年が立っていた。

赤い髪に紅い瞳。そして、とても整った顔立ちをしていた。

そしてその少年が口をゆっくりと開いた。


『ははっ、これは僕が本気を出す時にしか見せない姿だ!この姿を見せたからには、ちゃんと楽しませてくれよ?』


それは、先程まで話していた鳥、ガルーダの声だった。

リリーはふふっと笑い、まだ目が眩んでいる様子のエルを魔法で少し遠くに飛ばした。


「ガルーダには何がなんでも私の使い魔になってもらうよ!」


そう叫ぶとリリーは、ロイギスから貰った杖を構えた。

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