*バラの国のお姫さま~王子さまの独白と心*
~婚約破棄のその後~の、王子さまの独白と気持ちになります。その後と一部被ります。学園編に記載された一部を抜粋し、転載して居ます。途中割り込み失礼致します。
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時折ふと思い出すのは、ミニバラの咲き乱れる温室での出会い。ドレスや手が汚れるのも構わず一生懸命バラの手入れをしていた小さな少女。刺で指先を傷つけてしまい、指を口に含みしかめ面をする少女。庭師かな?選んだバラを小さな花束にして貰い、喜んでお礼を言って駆け出す少女。
私は多分あの時、あの小さな少女に恋をしたのだろう。
私は大国の第一王子として生まれた。このまま行けば、将来は王となる筈だ。社交界デビューをした後は、父王の代理として他国への訪問もしている。各種視察等も補佐付きでは有るがこなしている。順風満帆な王子であった。この時も自国の産業の1つで有るバラの栽培の関係で、ミニバラの栽培が盛んなこの国に視察に来ていた。
実は私はこの視察に大した期待はしていなかった。この国は小国で、正直貧乏な国だ。温室の維持にも苦労していると聞く。しかし巷では、ミニバラでは有るが可憐で品質が良い。流通が少ない為、手に入りにくいと言うプレミアが付いている。これは稀少を売りにしているのか?とも思っていたのだが、単に貧乏故に人手と資金不足で沢山栽培が出来ないだけらしい。今回の視察ではこの辺りの事を探り、資金提供や技術提供の提案をする予定であった。まあこれは建前で実質的には乗っ取りの様なものだ。勿論この国にも利益は有り、今より格段に国も富む筈で有る。
確かにミニバラの品質は素晴らしかった。資金提供を受け栽培量を増やし、我が国の販売ルートで拡販すればかなりの利益が出るだろう。しかしこの国の王は余り乗り気では無い様だ。まあ確かに国ごと乗っ取られてはと心配なのだろう。私はそんな気は無いが、父王は少し考えて居る風が有る。
そんな事を思案しながら温室を散策して居た時に、小さな少女を見つけたのだ。バラの花を眺めながらくるくる表情の変わる少女。多分この国の姫であろう。確か今晩誕生日パーティーが開催される予定の筈。プレゼントにと、自国で栽培されている大輪の深紅の薔薇の花束を持たされてきた。まあ今晩会えるだろう。そんな気持ちであった。
パーティーはこじんまりとした感じで落ち着く雰囲気で進んで居た。やはり少女が姫で有り、父王と共に個々に挨拶しながらプレゼントを貰って居た。私も花束を渡しに行くべきか?そんな事を考えて居た時、姫が居ないと周囲がざわめき出した。数人が探しに出て居たので、私も庭の方へ出てみた。夜風が肌に気持ちが良い。ざわりと風が吹き抜けると、木々の間にベンチが見えた。そのベンチには誰か寝ている様だ。近付くとやはり少女であった。疲れて眠ってしまったのだろう。起こすべきか?少し考えて居ると、少女はがばっと起き上がり私を見てあたふたしている。気恥ずかしそうに真っ赤になり慌てる姿が可愛くて愛しく感じた。私達はパーティーに戻り、私は少女に深紅の薔薇の花束を渡し帰国をした。
父王に視察の報告をした後、我が国は取り敢えず資金提供と販売ルートの提供の申し出をしたそうだ。しかし先にとある超大国から同様な話が行ってしまっていたらしい。その話は纏まっては居ない様だが、超大国の機嫌を損ねる訳にはいかず今回は手を引く事になった。そこで私は父王に進言した。
『私は視察の際に姫にあいました。繋ぎを付ける先々の為にも、私の妃にかの姫を迎えては戴けませんか?』
父王は少し考えた後、それも良かろう。と承諾してくれました。出逢いから約半年後、私はあの少女と婚約を結んだのです。
自分は次期国王となるべく、日々政務に追われて居ました。婚約後も少女とは手紙のやり取りのみ。しかし少女からの手紙からは私への好意を感じ、私も嬉しく思あ返事を返して居ました。
しかし突然父王に呼び出されました。私に別の縁談が来たのです。この縁談は国の友好を繋ぐ為の政略結婚でした。父王は言います。此方の縁談の方が価値が有るのだと。
自分は断ろうとすれば何とか出来たでしょう。しかし国の事を考えたら王様の決定に従うべきとも考えてしまいます。そして引き合わされた妖艶なお姫様に心を惑わされてしまっていたのも事実でした。
私は最善と考え、少女との婚約破棄を決め、他の姫と結婚したのです。
私は無難な結婚生活を続けて居ました。結婚した姫は気位が高く我が儘で、安らぎを感じる事が出来ません。日々憂鬱になる中、かつての少女の姿が思い出されます。少女は幸せになったのだろうか?自分が少女を裏切ったのにと後悔しながら想いを馳せました。
そんなある日、超大国の王から驚愕的な事実を知らされました。少女が自分との婚約破棄を知った夜、湖に身を投げた事を漸く知ったのです。妃すら知って居たのに、私には全く知らされて居なかったのです。
私は少女の想いのバラを受けとりました。
ピンクとホワイトの沢山の花びらを重ねた大輪のバラ。ミニバラが特産のかの国で育てられたこのバラの意味。少女の想いに気付き愕然としました。私は少女が好きだった。自身で婚約破棄と他の姫との結婚を決めたのに、辛くて少女の顔も見ずに婚約破棄をしてしまった。私より少女の方が余程辛かったのに、自身の気持ちばかりに拘り少女の気持ちに気づけなかった。後悔ばかりに止めどなく涙が頬を伝います。
少女の命日、墓前に一際目立つ花束が2つ捧げられました。
【ブルーとホワイトのグラデーションが美しい八重の花びら。神秘的な大輪のバラの花束。】超大国の王からでした。
【ピンクパール色の大輪のバラに真っ白なミニバラ。優しい感じのバラの花束。】大国の王子からでした。
王子は王の花束を見て少女への愛を感じました。そして王も王子の花束を見て、少女への愛と後悔の気持ちを感じたのです。
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