*バラの国のお姫さま~婚約破棄の結末*
此方のみ、ゆうかちゃんの夢では有りません。
誰かの夢なの?
*バラの国のお姫さま*
~婚約破棄をした王子さまの気持ち~
昔々ある小さな国が有りました。この国は領地が余り豊かで無く、可憐なミニバラの栽培を頼りに、皆が寄り添い暮らして居ました。そんな小さな国に、可愛いお姫さまが誕生しました。素直な愛らしいお姫さまは皆に愛されてすくすくと成長しました。
お姫さまの10才のお誕生日。お城ではささやかなパーティーが開かれて居ました。パーティーのお客さまの中には、バラの大好きな隣国の王子さまが居ました。温室の視察に同行していたのです。
王子さまは温室で見た可憐なミニバラの様なお姫さまに一目で恋をしました。王子さまはお姫さまに、自国で育てている大輪の赤いバラの花束をプレゼントし帰国しました。
それから半年後、隣国の王子さまから婚約して欲しいとのお手紙が届きました。2人は周囲に祝福され婚約しました。
お姫さまの国は貧乏です。持参金も余り出せません。でも皆でお姫さまの為に何かをしたい。バラの大好きな隣国の王子さまの為に、協力しあい難しいバラの品種改良に励みました。そして完成したのです。
ピンクとホワイトの沢山の花びらに包まれた大輪のバラ。一本でも存在感抜群。キラキラしてます。明日の王子さまの来訪に間に合いました。皆で大喜びです。
早起きしたお姫さまは、そのバラを摘んで花束にし、王子さまの到着を今か今かと心待ちにして居ました。
しかしやって来た王子さまは、王様に厳しいお顔でひと言。婚約を破棄させて欲しいと伝えたのです。しかも王子さまはお姫さまを見ず声もかけず、1度も振り返らずに帰国してしまいました。
その夜王子さまに渡せなかったバラの花束を胸に、悲しみにくれたお姫さまは、湖に身を投げてしまいまったのです。お姫さまの国葬では、国中の皆が悲しみました。
時が過ぎても、お姫さまの訃報は中々隣国の王子さまの耳には届きませんでした。
婚約破棄後、王子さまは他国の姫様と、既に結婚していました。
お相手は大輪の深紅の薔薇が似合う妖艶な姫様です。彼女が好んでその身に纏うドレスは、奇しくもバラのお姫さまの10才のお誕生日に、王子さまがプレゼントしたバラの花束の様な色でした。
この結婚は王様に決められた、国の友好を繋ぐ為の政略結婚でした。しかしバラのお姫さまとの婚約が先に交わされて居たのです。王子さまは断ろうとすれば何とか出来たのです。でも国の事を考えたら王様の決定に従うべきとも考えます。そして妖艶なお姫様に惑わされてしまっていたのも事実でした。
王子さまはバラのお姫さまとの婚約破棄を決めました。そして赤バラの姫様と結婚したのです。
2人は無難な結婚生活を続けて居ました。さかし王子さまの心は晴れません。日々暗くなるばかりなのです。
バラのお姫さまの訃報は、王子さまに中々伝わりません。結婚したばかりな事を周囲が配慮したのです。しかも王子の赤バラの妃も、詳細な噂を事前に止めて居たのです。
王子さまは婚約破棄を後悔し始めて居ました。赤バラの妃は気が強く、王子さまに我が儘ばかり。政務で多忙な王子さまは、妃に安らぎを求める事が出来ずに憂鬱が募るばかり。そんなある日、有る超大国の王様が王子さまに謁見を求め来訪しました。格上の国の王様との突然の謁見に、王子さまは狼狽えるばかりです。
ピンクとホワイトの沢山の花びらに包まれた大輪のバラを、王様は王子さまに1輪差し出しました。王子さまは不思議そうに見ています。王様は辛そうなお顔で話し出しました。
超大国がバラのお姫さまの国と、バラの花を挟み盛んに交易をして居る事。きっかけはこのバラの花で有る事。このバラはお姫さまがかつて王子さまを思い品種改良をし育てた事。お姫さまは婚約破棄を伝えられた日、プレゼントする筈のバラの花束を抱えて湖に身を投げてしまった事。自分はこのバラに込められた思いを、王子にも知って貰いたい。出来ればお姫さまのお墓に花を供えて欲しい。
王子さまは自分のしてしまった事に愕然としました。自分はバラのお姫さまが好きだった。自分で婚約破棄と他の姫との結婚を決めたのに、辛くてバラのお姫さまの顔も見ずに婚約破棄をしてしまった。自分より何倍もお姫さまの方が辛かったのに、自分の気持ちばかりに拘り他の人の気持ちに気づけなかった。後悔ばかりに涙が流れて来ました。
『こんな若輩者に教えて下さり有り難うございます。必ず墓前に参ります。何故貴方はこの事を私に伝えに来て下さったのですか?』
『私はバラのお姫さまに、生前お逢いしているのです。私にもお姫さまの想いを伝えられなかった辛い気持ちが解るのです。なのでお姫さまの気持ちを貴方に伝えに来ました。』
『重て有り難うございます。知らせて戴き本当に感謝にたえません。私がこの事実を知らなかった事は許される事では有りません。彼女にはもう償う事は出来ませんが、誠意を持ってかの国と墓前に伺います。』
2人は固い握手をして別れました。
バラのお姫様の命日。墓前に2つのバラの花束が供えられていました。
ブルーとホワイトのグラデーションが美しい八重の花びら。神秘的な大輪のバラの花束。
ピンクパール色の大輪のバラに真っ白なミニバラ。優しい感じのバラの花束。
王様と王子さまからのプレゼントです。お互いがバラのお姫様の為、品種改良し丹精込めて育て上げました。お2人のお姫さまに伝えきれなかった想いが詰まって居る様です。
お姫さまは天国で気付いてくれたでしょうか?お2人の気持ちが届きます様に。
王様はバラのお姫様を想い、生涯独身を貫きました。王子さまは命日の外出をも妨害する妃を戒め、離婚後再婚はしませんでした。
お2人の国とバラのお姫さまの国は、その後友好を結びました。交易も栄え3国のバラの花は世界中に広がり、末長く幸せに繁栄したとの事です。