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死闘!南方戦線

 昭和17年10月。米軍は思ったよりも早く反攻を開始した。ラバウルからおよそ1000km地点にあるガダルカナル島に上陸し前進基地を設営したのだ。


 この時期米太平洋艦隊は再建途上にあったが、すこしでも日本軍に対して有利に立ちたかった。


 そこで、この時点で日本軍の進出南端であるラバウルの基地機能を奪うための作戦を開始していた。


 しかしながら、このガダルカナル基地は兵站線の端であるということが問題であった。


 実は英国が対日参戦した直後に、オーストラリアとニュージーランドは中立を宣言してしまった。


 これに対してルーズベルトはチャーチルに文句を言ったが、元々対日参戦に乗り気ではなかった英国としては、太平洋方面の利権を少しでも無傷で残して置きたかったのだ。


 結局、米国はフランス領のニューカレドニア、それにエスプリット・サントに後方基地を設営したが、それでもオーストラリアが直接使えないことは痛い打撃であった。


 ただ、それでもこうした前線基地の存在は開戦以来負け続きの米国としては貴重な日本へ向けての橋頭堡となるべき物だった。


 その機械力に物を言わせて、ガダルカナル島に建設されたヘンダ−ソン飛行場は短期間の内に拡張され、最盛期には500機近い米軍機が駐留した。


 しかし、いざラバウル爆撃を開始すると問題が起きた。戦闘機の航続距離が足りなかったのだ。


 米軍の戦闘機は軒並み航続距離が2000km程度だった。つまり、ラバウルまで飛んでいけても戦闘は出来ない。


 唯一出来るP38にしても、いかんせん数が足りなかった。


 この時期ラバウルには海軍の零戦だけで120機。同じく零戦の陸軍機使用の「隼」が50機近く展開していた。


 対して米軍のP38はどんなに揃えても70機程度と大きく劣勢だった。


 いくら高性能の重戦闘機であるP38でも、相手が3倍近い数では話にならない。


 米軍の爆撃機であるB17やB24がいくら頑丈でも、100機近い零戦に迎撃されてはたまらない。


 加えて、ラバウルには対爆撃機用の重戦闘機である「しょうき」に「雷電」も60機。双発多目的戦闘機の「屠龍」や「月光」も40機程度配置されていた。


 まさにラバウルは大航空要塞となっていた。


 米軍は少しでも航空戦力を有効に活用するために、さらに前進したブーゲンビル島ブインにも航空基地建設を始めた。


 しかし、この基地はラバウルに近すぎた。建設が始まった日から猛烈な爆撃が始まった。さらに、物資を運ぶ輸送船団や護衛艦隊にはラバウルを本拠地とする第8艦隊や潜水艦隊が襲い掛かり、その運行を妨害した。


 米軍は物量に物を言わせて強引に基地建設を推し進め、翌年6月にこのブイン基地を稼動させるが、そのために戦艦1隻、巡洋艦11隻、駆逐艦22隻、輸送船32隻を失った。


 もっとも日本艦隊も巡洋艦3隻に駆逐艦7隻、潜水艦5隻などを失っているが、米軍の損害に比べればはるかに少なかった。


 また、日本艦隊はガダルカナル近海にもゲリラ的に出没し、同島に進出した艦隊や輸送船団を襲撃した。


 ヘンダ−ソン飛行場には多数の航空機が駐留していたが、それでも大型機が出払い行動圏内が限られる単発機のみになる時間や、またスコールで出撃できない時間などがあった。


 こうした隙をついて日本艦隊は行動した。


 特に、昭和17年11月30日に田中頼三中将率いる第2水雷戦隊が行ったガダルカナル東方海戦は、潜水艦や陸軍の偵察機との連携の上、護衛空母を含む大規模な護送船団を襲撃し、駆逐艦「高波」を失うも、護衛空母1隻を含む5隻を撃沈、11隻撃破という大戦果を上げた。


 この海戦では本格的なレーダーによる魚雷発射が行われ、日本駆逐艦にレーダーを標準装備する前哨戦ともなった。


 もっとも、このガダルカナル方面への出撃はリスクの高い戦闘でもあった。


 昭和18年3月3日に大森仙太郎中将率いる第三水雷戦隊が行った、ガダルカナル東方における海戦(第三次ガダルカナル東方海戦)では、敵が新型レーダーを装備していたため、駆逐艦を双方1隻ずつ失う痛み分けに終わったが、海戦が長引き、米軍の航空機行動圏内からの脱出が遅れ、攻撃を受ける事となった。


 米軍はこの時新戦法の反跳爆撃を採用したため、旗艦であった駆逐艦「白雪」を沈められ、他に2隻が損傷する被害を追ってしまった。大森中将も負傷している。


 こうした犠牲が出たのも現実であった。一方的に戦える戦争などないのだ。


 また、潜水艦もガダルカナルへの輸送船団を襲撃した。この潜水艦戦は最終的に7隻を失ったが、それでも50隻近い輸送船や護衛艦艇を撃沈している。


 特に、「伊19」潜水艦は回航されてきた戦艦「マサチューセッツ」を撃沈する武勲を立てている。


 一方、こうした前進基地への兵站戦攻撃で米軍の戦力を消耗させる戦法を取った日本海軍に対して、義勇艦隊や海上護衛総隊はこれら前進基地から進出してくる潜水艦との戦いに入っていた

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