大慶油田発見!
日本軍の南方における快進撃により、英蘭軍はあっという間に追い出され、代わって南方資源地帯は日本側の制圧下に置かれた。
ただし、これらの地域では占領期間は短く、極力早期に現地政府が樹立され日本との国交を結び、対等な関係での貿易を開始している。
これは、現地の抑圧された人民の解放という、いわば一種のプロパガンダ的な要素を含んだ目的が大きかった。実際の所日本人には、南方の人々を馬鹿にする人間は大勢いた。
事実、現地人に対する日本兵や日本人による蛮行が複数発生したことが確認されている。
しかし、これらの蛮行は比較的短期間で鳴りを潜めることとなる。これは、占領後もそのまま現地進駐軍(占領軍ではなく、あくまで現地の防衛体制が整うまで肩代わりするということを強調するための呼称)司令官となった、今村中将の功績が大きい。
彼はスカルノを始めとするインドネシア政府に対する援助を惜しまず、また日本人による現地住民への蛮行を厳しく断罪した。そして正義感が強い兵士の中にはその考えに同調する人間も多かった。
これらのおかげで、後に今村中将はインドネシア政府から建国に関わった重要人物としてスカルノ大統領から直々にメダルを授かる事となるのだが、それは別の話である。
また、この今村中将のやり方に対しては、内心反発を招く者も軍部にいたが、それによる利益(貿易の活性化や、何より日本に対する住民感情の良好)の方が大きくクローズアップされ、さらに陛下も公にそれを褒める声明を発表している。こうなっては、表立って言う者はいなかった。
そして、満州国やタイ王国はこれら日本の政策を過大に賛辞した。
もっとも、この評価には日本に対して今後も同じような政策を続けてくれという、言葉ではない方法で訴えたメッセージが込められていた。
さて、そんな中昭和17年9月、満州国ではある重大事件が起きていた。それはなんと、油田の発見であった。
「何!?油田とな?」
急遽開かれた内閣の閣議で、張首相は報告してきた資源炭鉱大臣である光大臣に向かって放った第一声である。
「はい首相。しかも埋蔵量はとてつもない量です。現地調査班の報告では、推定年間産出量は日本と我が国で必要とするあらゆる石油の量の7〜8倍です。」
「な、なんと!!」
7〜8倍となれば、充分輸出できる量だ。しかし、何故か報告している光の顔色は少しさえなかった。
それに気づかず、張は悦に浸っていた。
「そうかそうか。それはめでたい。これで我が国の将来も安泰だな。石油という戦略物資が手に入れば、日本に対しても大きな外交カードを持つことになるぞ。」
しかし、それに対して参謀総長の石原は反論した。
「残念ですが首相、逆です。そのような資源が我が国にあると知れば、ソ連や中国が黙っておりますまい。」
その言葉に、張首相もハッとした。
「な!・・・そうか、確かに石原将軍の言うとおりだ。」
さらに、光も言う、
「それに、実は・・・この油田。量は凄いのですが、質に問題があります。」
「質だと?」
張より先に質問したのは石原だ。
「はい将軍。実は今回見つかった油田の石油は調査の結果重質油でした。これは粘り気が強く、重油ならともかく、航空燃料には精製しにくい油です。加えて精製するにしても、上質の油を混ぜて行う必要があります。これは最低でも現在蘭印から輸入している石油が必要となります。ですから、完全なる石油の自給自足は不可能です。」
その言葉に、閣議参加者は一様に落胆した。
せっかく見つけた石油だというのに、商品にするためには石油を輸入しなければいけない。これではたちの悪い皮肉である。
しかし、商工大臣の内田弘樹が聞いてきた。
「光大臣。先ほど重油ならとおっしゃりましたよね?」
「はい。」
「では、重油に精製するだけならあまり問題はないのですか?」
「ええ。そうなります。」
「とすると、完全自給は不可能でも、我が国にとってはやはり大きなメリットになる事には違いないでしょうね。国内で生産すれば石油価格の値が下がる。さらに重油なら今軍艦でバカ食いしている日本海軍は喜んで買ってくれるでしょう。」
その言葉に、一度は落胆した張も表情を和らげた。
「ふむ、では、採掘可能までにどれくらいかかるかな?」
その質問に、光大臣が報告書をめくって答えた。
「現在試掘が既に始まっています。予算さえ度外視すれば、多分半年で可能です。精製工場の整備も不可欠です。」
「わかった。諸君、石油採掘ならびに精製工場建設のための臨時予算成立に賛成の者は手を上げてくれ。」
すると、全員が手を上げた。
「よし、では後は議会を通して・・・陛下に上奏するだけだ。」
満州国の議会は上院と下院の2院制で、女性の参政権もちゃんと存在する。
この後、臨時予算案は議会でも賛成多数で可決した。そして、皇帝溥儀によって、油田の地名が新たに定められた。その名も大慶油田であった。
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