南鳥島沖海戦 激闘編
偵察機が米機動部隊に接触した1時間後、「白虎」艦載機の出撃態勢が整った。
「全機発進!!」
八島少将の命令の下、爆装した「飛龍」戦闘機隊を先頭に、稼動する計30機の攻撃機が一路米機動部隊へ向けて発進した。
この時、義勇艦隊と米機動部隊の距離はお互いが全速離脱したため100km程まで離れていた。
既に義勇艦隊も米偵察機の接触を受けているから、航空攻撃を受ける可能性が高かった。ここでどちらが先制攻撃をするかで勝敗はつく。
発進した攻撃隊の隊長は新たに着任した東康介少佐だった。
「全機へ、敵艦隊は目と鼻の先だ。敵戦闘機の襲撃に充分注意しろ!!」
100kmといったら巡航速度で飛んでも20分あれば着いてしまう距離である。それだけに敵戦闘機と接触が早くなる。東はそれを警戒した。
しかし、天は義勇艦隊に味方した。
攻撃隊が襲い掛かる10分前まで米艦隊上空には12機のF4Fが待ち構えていた。しかし、この戦闘機隊は燃料補給のため着艦していた。そして新たな戦闘機隊を出そうとした時、攻撃隊が襲い掛かった。
東が周りを見回しても敵機の姿はどこにも見当たらない。
「天佑だ!!戦闘機はいないぞ!!全機へ、とにかく敵空母の甲板を潰せ!!飛行機さえ使えなくすればどうとでもなる。突撃せよ!!」
隊長機からの突撃命令に従い、攻撃隊は残る無事な空母である「ヨークタウン」に殺到した。
しかし、米艦隊もただやられているはずがなく、ただちに対空戦闘を開始した。開戦以来の教訓を元に、米艦隊は著しく対空兵装を強化していた。各艦に搭載された多数の12,7cm砲、40mm機関砲、28mm機関砲が攻撃隊に襲い掛かった。
凄まじい弾幕に絡め取られ、数機の「飛龍」や97艦攻が火を拭いて墜落していく。しかし、それにもめげず、攻撃隊は突撃する。
最初に攻撃を開始したのは「飛龍」戦闘機隊だった。
彼らは前回のフィリピン沖海戦での教訓を元に開発した新戦法を駆使する。後に米軍も多用する事になる反跳爆撃だ。これは石の水きり遊びのように爆弾をスキップさせて敵艦にぶつける戦法だ。
「用意、撃て!!」
戦闘機隊長の佐伯中尉がまず攻撃を開始した。高度10mという低高度へ降下しての攻撃である。
隊長機に続くように、他の「飛龍」も攻撃を開始した。しかし、まだ開発されたばかりの戦法であったために搭乗員たちが不慣れだったせいか、命中したのは佐伯中尉の一発だけで、しかも彼がこの時装備していたのは60kg爆弾を装備であったため、効果は爆風で舷側の対空火器数門を沈黙させるに留まった。
「クソ!こんな小型爆弾じゃ、大した損傷を与える事が出来ない。」
彼は操縦席で舌打ちした。
その後も空振りが相次いだが、最後の最後で突入した加古芳江軍曹が大金星を挙げた。
彼女はこの時250kg爆弾を装備していたが、2発とも命中した。しかも、一発は格納庫のシャッターから格納庫内に飛び込んだ所で爆発した。これは彼女がギリギリまで近づいて投下したからであった。
そして、この一発が「ヨークタウン」の運命を決めてしまった。
この時「ヨークタウン」艦内ではようやく義勇艦隊への攻撃準備が済んだ攻撃機群が甲板へとあげられようとしていた。つまり、格納庫内には燃料・弾薬をフル装備していた攻撃機が並んでいた。そこへ250kg爆弾が2発飛び込み炸裂したのだからただで済むはずがなかった。
500ポンド爆弾を積んだ「ドーントレス」が、魚雷を積んだ「デバステーター」が次々と誘爆を起こし、そのエネルギーはエレベーターを突き破って空中に吹き上げられた。
一瞬にして「ヨークタウン」は浮かぶ活火山へと変貌した。
「こんなのってあり?」
これには攻撃した芳江だけでなく、その光景を見ていた全ての人間が唖然としてしまった。
まさかたった一発で3万t近い空母が大破するなど誰も信じられなかった。ただ火災こそ激しかったが、さすがにダメコンが優れていただけあって、この3時間後には消し止めた。しかし、その直後に急行してきた日本の「伊168」潜水艦に沈められる事になるのだが。
しかし、両軍兵士が唖然としていられたのも短時間だった。
空母2隻ともがこれで戦闘不能になったため、東少佐は雷撃隊の目標を変更した。
「雷撃隊は敵巡洋艦に狙いを集中しろ!!」
空母こそ潰したが、まだ巡洋艦や駆逐艦が残っており、その戦力は義勇艦隊を圧倒していた。
洋上に残る2隻の重巡と、1隻の軽巡に雷撃隊の矛先は向けられた。
しかし、やはり10機程度の雷撃機の攻撃では効果不十分だった。しかも、半数近くは水平爆撃隊だった。
結果は重巡「ポートランド」の艦首に一本命中、浸水により速力を5ノット低下させたのと、軽巡「ボイシ」に至近弾で小破させただけであった。
空母「ヨークタウン」大破から15分後、攻撃隊は弾薬を使い切ったため「白虎」に帰還した。
最終的に「飛龍」3機、97艦攻2機が対空砲火によって失われ、4機が被弾が激しいため帰還後破棄となった。
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