表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/88

満州事変

 昭和6年9月15日。満洲にて大規模な紛争が発生した。


 ラストエンペラー溥儀を主席とする、清朝亡命政府を名乗る組織が突如として清朝再興をめざし,満洲各地の張学良軍に襲い掛かったのだ。世にいう満州事変の勃発である。


 もちろん、この計画には関東軍の暗躍があった。


 この時関東軍は、紛争から満鉄沿線の邦人保護することを目的に、満鉄沿線および租借地各方面へ出兵したが、その行動はほとんど清朝亡命政府の蜂起と同じ時であり、さらに出兵後は張学良軍が治安維持活動中の関東軍を攻撃したとして、張学良軍を攻撃し清朝亡命政府軍を支援している。


 しかも、戦後この張学良軍の攻撃は虚偽であったということがわかっている。また、蜂起を起こした清朝亡命政府軍とされる軍隊も、実際は名ばかりで日本人が部隊の8割を占めていたとも言われている。


 つまり、この事変は関東軍の謀略であった。関東軍(特に参謀の石原莞爾)は、清朝政府の蜂起であれば日本の侵略行為とならないと踏んでの行動であった。そして自分たちが、あたかも巻き込まれたように装ったのだ。そうすれば万が一国際連盟の調査団が来ても言い訳が聞くと思ったようだ。


 実際,日本の証拠隠蔽や工作は完璧で、後のリットン調査団も、「関東軍はあくまで自衛行動を取ったのみ」と国際社会に公表している。


 この時、満州を支配する張学良軍は29万という大軍勢であった。しかしその実態は教育の不充分な寄せ集めの兵であり、関東軍と清朝政府軍の前に次々と敗走した。その結果、清朝亡命政府はわずか3ヶ月で満洲全域の掌握を宣言することとなる。


 さてそんな中、大亜細亜造船の2隻の駆逐艦、「流星」と「彗星」(武装を施し戦闘艦となったため丸をとった)は渤海へ向けて出撃していた。


 実は石原莞爾は事変勃発前に、2隻の駆逐艦の建造黙認と武装の一部提供の見返りとして、白根に出撃を要請してきたのだ。


 当初、白根は出撃に対し難色を示した。2隻は商船として使われていたため、戦闘艦艇としての錬度が足りないし、また乗員の中には朝鮮人や台湾人なども混じっており、出撃する理由という物がないため士気にも不安があった。


 しかし、石原との懇意や見返り条件のメリットも捨てがたい物であった。そこで彼は乗員にこう説明した。


「まもなく起こるであろう満州での独立紛争には、おそらく関東軍が関与するのはまず間違いない。そうなれば、満洲に出来る新しい国は日本の傀儡国家にさえなりかねない。諸君らが今回出撃し、戦果を上げることは、今後出来るであろう新国家に置いての諸君らの地位を高め、関東軍への抑止力になるはずである。それを信じて私についてきて欲しい。」


 この演説が功をなしたかはわからないが、結果幸いにも乗員の脱落者は最低限度で済んだ。


 そして9月14日夜、2隻は密かに母港である旅順を出港していった。


 さて、2隻にはこの時点で一応武装は施されていた。当初計画では5インチクラスの小口径砲2,3基。魚雷発射管1基に爆雷、そして機銃若干という予定であった。しかし、そうした武装を塔載するためには大きな困難が立ちはだかっていた。


 まず主砲は艦艇用の砲の入手ルートがなく、仕方なく石原大佐が回してくれた陸軍の10,5cmカノン砲をそれぞれ1隻に1門ずつを前部の甲板に設置した。もちろんこれだけでは不足である。しかし元々火砲が不足している陸軍から提供されたのはこのカノン砲のみであった。


 そこで、白根や北上らは極秘裏に欧米での武器購入を図った。もちろん、相手には怪しまれかねないが、国産兵器の入手が絶望的である以上、他に方法がなかった。


 海賊退治用と称して、スウェーデンのボフォース社から40mm単装機関砲6基をなんとか買い込み、極秘裏に満州に輸送すると、これをそれぞれ一隻に2基ずつ後部砲塔予定位置に設置した。6基全部を塔載しなかったのは、コピーのためのサンプルとしたためだ。


 魚雷については高価で入手ができず今回は無しだ。爆雷も潜水艦が相手ではないので積んではいない。あとは若干数の機関銃のみである。


 その機関銃さえも、様々なルートで入手した形式も生産年度もバラバラな物であるから、如何に武器の調達に苦労したかわかるものだ。


 通信設備も軍用無線機など搭載出来るはずもなく、民生品の転用となった。


 これらの急ごしらえ火器は出撃1ヶ月前にはなんとか配備されたので、砲員の練度は最低ランクであり、また操船についても、貨物船からの引き抜き乗員が多いため、集団行動には不慣れであった。船を扱えると、海戦が出来るというのは、まったく違う問題なのだ。


 そんな不安で一杯の戦隊指揮をとるのは、元海軍中尉で最近まで貨物船船長をしていた大貫小校(少佐)である。ちなみに階級は訓練や筆記試験の成果からあくまで大亜細亜造船内部で暫定的に定めた物である。


 彼らに与えられた任務。それは渤海から脱出する可能性の高い張学良軍の外洋艦艇を撃滅することであった。


 御意見・御感想お待ちしています。

 なおこの作品で史実の歴史に似ている所はあっても全く関係ないことをお知らせします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ