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作戦完遂!!

 米アジア艦隊上空に現れた新手の航空機群。それは台湾南部の基地を発進した台湾海上警備隊所属の96式陸攻と、99式双軽だった。


 台湾海上警備隊は台湾総督府直轄(後に台湾自治政府に移管)の海上警察組織であるが、有事には第二軍の働きが出来るよう、装備は軍の使用する物に引けをとってはいない。


 今回飛び立った航空機もそうである。これらの航空機は、台湾海上警備隊へ影響力を持たせる意味で、日本陸海軍が供与した機体である。


 平時は救難、国境警備を主任務として働いているが、戦時には対潜、対艦攻撃が行えるよう常に訓練を行ってきた。そして今回それが試されようとしていた。


 出撃機数は陸攻が雷装を施した12機。双軽は500kg徹甲爆弾を爆装した同じく12機であった。99式双軽は爆装出来る量こそ少ないが、操縦しやすく急降下爆撃も可能な優秀機である。


 それら計24機が瀕死の米アジア艦隊に襲い掛かった。


「全機突撃せよ!!」


 隊長である鄭中尉の命令が出され、同時に各機は攻撃を開始した。


 真っ先に狙われたのは、沈没した「ヒューストン」に次いで大型である2隻の「オマハ」級軽巡だった。


 鄭中尉率いる陸攻隊は6機ずつにわかれて2艦を攻撃した。


 両艦とも、義勇艦隊との戦闘では最小限の被害しか受けてなく、100パーセントに近い戦闘力を発揮できた。しかし、所詮は対空砲をあまりもたない第一大戦直後に計画された旧式軽巡である。結局96陸攻を一機も撃墜できぬまま、逆に魚雷の発射を許してしまった。


 この魚雷攻撃に対し、「ミルウォーキ」はなんとかかわしせたが、「マーブルへット」は2本が命中し、航行不能に陥った。


 また、魚雷を避けえた「ミルウォーキ」も数分後には99双軽の500kg爆弾1発を機関室に喰らって大破した。また、駆逐艦1隻も同様に爆撃で大破ししたため、事実上アジア艦隊は壊滅した。


 艦隊司令官代行のルックス大佐はなんとか駆逐艦「スチュワート」に移乗する事は出来たが、もはや日本艦隊に戦闘を挑める状況ではなく、やむなく駆逐艦の魚雷で航行不能の「マーブルヘッド」を自沈処分し、残存艦艇を率いてダバオまで交代した。


 もっとも、アジア艦隊はその後米軍制海権への脱出が困難となり、やむなくオランダ領のインドネシアのスラバヤに逃走し、そこで抑留されることとなる。


 こうして、海戦一日目にして日本軍はフィリピンの制海権、制空権をほぼ手中に治めたのであった。


 だが、大勝利の影で義勇艦隊も未帰還機3機を出し今回の戦争での初めての犠牲を記録した。また、台湾海上警備隊も未帰還こそなかったが、機上戦死者を出している。


 いくら少ないとはいえ、やはり犠牲をだしてしまった。戦争の厳しさと残酷さを改めて思い知らされた場面であった。それでも、大勝利には違いなかった。


 この日、艦隊内では非直の乗員や航空隊搭乗員に対して特配の菓子や酒が振舞われ、また海戦の戦果も知らされたために兵士たちの士気は大いに盛り上がった。


 翌日、上陸予定地点に到着した義勇艦隊は、早朝から航空隊による空爆と、艦艇の艦砲射撃を行った。


 もっとも、米軍主力は既にコレヒドールの要塞へと転進していたため、ほとんど無血上陸と同じであった。


 たった一回だけB24爆撃機6機が飛んできたが、「飛龍」の迎撃を受け、爆弾を適当にばら撒いて撤退した。損害は皆無であった。


 こうして、義勇艦隊第一回目の任務は最小限の犠牲を出しただけで大成功の内に終わった。


 だが、空になった輸送船を台湾へと戻すための準備に入ったとき、艦隊司令の木村中将のもとへと緊急信が届けられた。


 それを一読して、木村は表情を厳しい物にした。


「何があったのですか?」


 副司令の蜂谷が怪訝な表情で尋ねた。


「マーシャル沖で日本の連合艦隊と、米太平洋艦隊の主力が激突した。」


 米軍は開戦に合わせて、太平洋艦隊主力を投入して、日本の委任統治領のマーシャル諸島へと侵攻した。それに対し、日本側も全力で反撃した。その戦闘の結果が届いたのである。


「結果はどうなったのですか?」


 蜂谷が恐る恐る聞いた。


「結果は・・・・・・何と言えば良いのかな。」


 海戦の結果は沈没艦艇の数だけみれば日本の勝利だった。


 米軍は新鋭艦2隻を含む戦艦7、空母3、巡洋艦11、駆逐艦13を失った。対する、日本側は「扶桑」「山城」「伊勢」の3隻に空母「加賀」に巡洋艦5、駆逐艦8の損失だった。


 これだけ見れば日本の勝利に見えるが、日本側も戦艦「大和」を始めとする多くの艦艇が損傷し、最低でも半年以上の戦力回復期間を必要とすることとなった。


 このため、当面動ける艦隊は今回フィリピン方面作戦へ投入された第2艦隊と、ウェーク島攻略を成功させた第4艦隊だけであった。(加えて実際には無傷の空母4隻からなる第3艦隊がこの直後に編成されている。)


 そして、義勇艦隊はこの時点で有力な戦力を持ちえて、かつ即戦力として使える艦隊となっていたのであった。


 連合艦隊が壊滅したかのように書きましたが、一時的に戦闘能力を失ったと考えていただければ結構です。また、詳しく書いていませんが、機動部隊も半数以上が健在です。

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