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開戦への坂道

 日米の緊張の高まりは、満州国にも影響を与えていた。アメリカ政府は満州国を独立国としては承認しておらず、あくまで日本の保護国という見解を示していた。


 アメリカが日本に宣戦布告、またその逆を日本が行った場合、満州国も戦争に巻き込まれる可能性があった。


 義勇海軍では、万が一に備え艦艇の増産準備が行われていた。また、かねてから日本海軍から依頼があった場合に備え、船団護衛マニュアルや航路マニュアルの作成もされていた。


 そして、自社の兵器開発部門(奉天兵器製造公司)では、戦時に備え、艦載用の砲や機関砲に加えて、商船に搭載する兵装の生産にも取り掛かっていた。


 大亜細亜通運の所属船舶は、全て英国の造船方式を真似て船首、船尾の甲板強度を戦時の砲座設置の為に強化してある。また、一部の高速船は補給艦として転用できるようになっていた。


 これら大亜細亜通運の船舶の中でも後年有名になるのは「白虎」級10000t貨物船であろう。この船は竣工が昭和14年からであったが、全長が150mと大きく、速力も24ノットの高速を誇っていた。そのため、建造された4隻全てが後に航空母艦に改造されている。


 ただし、日本の商船改造空母の様な本格的な改造は施されず、どちらかというと後に貨物船に戻すことを前提にしたイギリスやアメリカの護衛空母に似ていた。この艦の活躍は後々に語ることとなるだろう。


 一方、日本海軍でも竹島沖海戦の教訓から、対潜兵器や対潜攻撃の見直しが行われていた。


 例えば、特型駆逐艦では爆雷の定数を36から48に増強している。また、沈降速度を速めた爆弾型爆雷の開発も行った。それに加えて、義勇海軍開発の99式聴音器を購入し、改良の上零式聴音器として採用している。


 そうした既在艦の改良や装備の更新を行う一方で、新型護衛艦の建造も始まっていた。


 この新型護衛艦は後に海防艦と呼ばれる艦種で、当初は北方水域における漁業保護を目的に建造され、さらに当初の増備計画でも、あくまでウラジオストックから出撃するソ連太平洋艦隊の潜水艦を敵とみなしていたため、北方水域での使用が念頭に置かれていた。


 この計画が変更されたのは、米国に宣戦し中部太平洋や南方との海域を結ぶ通商路護衛の必要性が出た昭和15年12月になってからで、その月から建造された海防艦は北方水域での活動に必要な装備を取り去り、加えて大亜細亜造船からの技術供与を受けて、大量建造可能な方式に設計変更されている。


 当初、大亜細亜造船や義勇海軍からの装備や設計技術の供与は艦政本部等を激怒させたと言われているが、日満親善とさらに若手技師の要望により実現したとされている。


 もっとも、技術供与が成功した背景には、上記以外にも上層部の無関心があったからとも言われている。竹島沖海戦での潜水艦の脅威を知りながらも、上層部の頭を切り替えるのは容易ではなかった。


 船団護衛の準備が進められる一方で、帝国海軍では主力艦隊の装備更新も行われていた。


 世界最強の46cm主砲を搭載した「大和」級戦艦1番艦の「大和」は昭和16年8月に竣工予定であった。また、最新鋭の「翔鶴」級空母2隻も建造が急ピッチで進められていた。


 「大和」級戦艦はさらに3隻が竣工予定であり、空母も新たに改装空母2隻(「瑞鳳」と「祥鳳」)が計画されていた。また、巡洋艦以下の建造や陸上基地航空隊の増設も予定されていた。


 こうした新型艦艇や装備は既在の物と代替されるということで予算を得ていた。日中戦争もなく、数回の紛争のみしか経験しなかった日本の軍事予算は、平時より僅かばかりしか増していなかった。


 大和級戦艦にしても、3、4番艦は「扶桑」級戦艦の代替。改造空母2隻も旧式化した「鳳翔」の代替として予算を申請していた。また、20,3cm三連装砲を始めて採用した「伊吹」級は「青葉」級の代替。軽巡「綾瀬」、「大淀」等も5500t級軽巡の初期型の代替として計画されていた。


 対する米国は新たに艦艇大増備のヴィンソン計画を発動し、新型の「サウスダコダ」級戦艦や「エセックス」級正規空母他多数の艦艇の建造に取り掛かっていた。


 こうして、日米の戦争準備は進行しつつあった。


 


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