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黄海対潜作戦!

 今回から若干文体を変更します。読みにくいなどの意見ございましたらお寄せください。

 ノモンハン事件は最終的に日本の勝利で終わったが、その間に義勇艦隊も戦闘を行っていた。


 ソ連軍潜水艦は対馬海峡を突破し、黄海にまで潜入していた。数こそ少なかったが、もちろん看破できる問題ではない。現に満州国籍や日本国籍の潜水艦が襲撃を受けている。ただし、黄海には英国や独逸船籍の船舶もいないことはなかったので、日本海ほど思い切った行動は取らなかった。


 さて、義勇海軍は帝国海軍ならびに朝鮮海上警備隊と協力して黄海における潜水艦狩りを行っている。


 潜水艦狩りでは、文字通り相手が小型で単独行動を行っている潜水艦が相手なので艦隊を組んだりはしない。単独、もしくは2隻程度の戦隊単位で行動した。


 ただし、この潜水艦狩りで確実に撃沈戦果を上げられたのは義勇海軍のみであった。


 これは、もともと進入した敵潜水艦の数が少なかったのも原因だが、帝国海軍とその帝国海軍をお手本にした朝鮮海上警備隊の対潜能力の低さにあった。特に93式聴音器の性能が低かったのが大きな原因だった。


 ところが、義勇海軍では独自に兵器の改良を行い、一部の兵器は子会社を作って独自生産さえ行っていた。彼らが使用していたのは39式聴音器であった。


 39というのは西暦1939の事で、つまり開発されたばかりの新兵器であった。開発されたばかりの兵器を全ての艦艇に設置できたのも、艦艇数が少ない義勇海軍ゆえだった。


 また、対潜哨戒に航空機も多用した。ただし、これは義勇海軍のみではなく、帝国海軍も朝鮮海上警備隊も同様である。特に、帝国海軍の97式飛行艇や96陸攻、陸上基地配備の艦攻や艦爆も幾度か哨戒任務に使われた。

 

 ノモンハン戦終了直前のその日、不審な潜水艦を最初に発見したのは朝鮮海上警備隊所属の水上機であった。


「平壌の西90kmに潜水艦と見られる不審な艦影を発見。爆撃を加えるも効果不明。」


 この報告によって、付近の艦船に警報が発せられた。


 ちょうどこの時、警戒中だった義勇海軍所属の漁業保護船「蒼洋」「大洋」の2隻がただちに現場に急行した。


 この2隻は朝鮮総督府から黄海の沿岸警備任務を委託されていて、この時一番近くにいた。


 この2隻は500t級漁業保護船で、8cm砲1門。40mm機関砲2門。爆雷48個を搭載し、最高速力は22ノットだった。後に英国が建造するコルベットやスループ、漁業トロールに近い船であった。


 この時、2隻を指揮していたのは「大洋」船長の永島英輔少校(少佐)だった。まだ若干28歳の若い艦長だった。彼は元帝国海軍元中尉で、海軍兵学校時代から成績は優秀であったが、専攻したのは潜水艦と対潜戦術で、研究会の発表で日本駆逐艦の対潜能力の低さを指摘したことで同級生と喧嘩となり、それがもとで除隊し義勇海軍に入っている。


 義勇海軍に入ってからも対潜戦術や対潜兵器の研究に関するレポートを上官に提出している。本人は駆逐艦艦長の職を望んでいたが、洋上勤務の経験が浅かったため、現在の職に就けられた。


 さて、彼らが現場海域に着いたのは通報から3時間後だった。


 もちろん、敵潜水艦は既に潜っているのかいない。


「聴音器の感度を上げ、速力を下げろ。見張り厳重にせよ!!「蒼洋」にも伝達。」


 永島が最初に下した命令がそれだった。


 聴音器の感度を上げたのはもちろん潜水中の敵潜水艦の音を補足しやすくするためで、また速力を下げたのは自艦の雑音を極力下げるためだ。それに伴い敵潜水艦に攻撃を受けやすくなるので、見張りを厳重にした。


 それからしばらくの間、大きな動きはなかった。


 潜水艦狩りは根気がいる作業である。例えばこの後の第二次世界大戦では連合国が独逸のUボートと死闘を繰り広げたが、その際連合国護衛艦艦艇はUボート一隻を撃沈するのに、長いと1日近い時間をかけている。


 つまり、潜水艦を撃沈するにはそれだけの長い時間相手を追い詰めるだけの忍耐力が必要となってくる。


 永島はその忍耐力を持つ帝国海軍では数少ない男だった。


 今回も、聴音手が相手の尻尾を掴むまでの間、じっとブリッジで待っていた。


 これに対し、航海長の沢村中尉は落ちつかない人間だった。


「聴音手!敵はまだ発見できんのか?」


 しきりに聴音手や見張りの兵に尋ねて回る。


 その行動に、永島は諭すように言った。


「航海長、そんなに焦っても敵がいないのだから仕方あるまい。兵を焦らせるだけだ。」


「はあ。」


 航海長は一応わかってはいるようだが、気の無い返事を返してきた。と言うよりも、沢村はあまり年下であるせいか、永島の事を好いてはいないようだった。


 沢村中尉は32歳で、元は帝国陸軍の船舶工兵だった。上官との折り合いが悪く、除隊。しかし船が好きで流れてきた人間である。


 小型船の操船技術が高く、また学科試験もそれなりに優秀な成績を収めたので、今の地位に就いている。


 ちなみに、元軍人の場合、入隊すると軍隊当時の階級が尊重され、能力に秀でている者はそれに1から2階級上の階級が渡される。


 永島は除隊時中尉。沢村は少尉だった。


 閑話休題。


 さて、動きがあったのはさらに2時間後の事だった。


 御意見・御感想お待ちしています。

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