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魚雷艇

 

 大下技師はヨーロッパから文献や写真を取り寄せ、さらにジェーン海軍年鑑にも目を通した。


 そして設計・建造が終了し、試作艇が完成したのは4ヵ月後であった。


 船体は木造、排水量は100t。40mm機銃1門に45cm魚雷発射管2門4発搭載であった。


 苦心して設計しただけあって、復元性、耐波性は良好であった。しかし、エンジンは帝国海軍の92式艦上攻撃機用の水冷を搭載したのだが、騒音と故障に悩まされた。騒音はプロペラシャフトや船体の改修である程度抑えられたが、故障はどうにもならず、さらに出力が低いこともあって、最高速力は29ノットという低速であった。


 結局、1号艇は武装を減らして沿岸救助艇1号となった。しかし最後の最後までエンジンの不調がたたって、2年後には退役となっている。


 大下は、1号の不調は心臓部のエンジンにあると断定した。そこで、次の艇には思い切って外国製のエンジンを採用することとした。


 この次期、満州には英国や独逸企業が進出しており、大亜細亜造船はこれらの企業とも交流があった。そこで、これらの企業経由で水冷エンジンの購入を図った。


 こうして、予備を含めイギリスのマリーンエンジン12基、独逸のダイムラーベンツ10基の購入に成功した。


 実際にはもっと多かったが、数基が奉天航空機製造公司に引き渡されたため、この数になった。


 ちなみに、奉天航空機製造公司というのは、中島や川西等の複数の航空会社が出資して作った航空機製造工場で、その規模はボーイング社のシアトル工場に匹敵するほどの物であった。


 エンジンを手に入れた大下は、早速マリーンを2号艇に、ベンツを3号艇に搭載した。結果、どちらともすばらしい性能を発揮し、速力は40ノットに迫るものを出した。最終的には、整備性で優れるマリーンエンジンの採用が決まった。ちょうど同じころ、奉天製航空機製造公司でも、マリーンのライセンス生産が決定し、早速ライセンス権が購入された。


 その後、燃料タンクの増設等の小改修を行い、最終的に性能は40mm機関砲1門。12,7mm連装機関銃1門。53,3cm魚雷発射管2基、2発。排水量120t。速力37ノットに落ち着いた。


 平時には、機関銃以外の装備を取り外して、速力は39ノット近くで名行動できた。


 その後、これらの魚雷艇を指揮するために強力な無線機を搭載した、排水量160tの指揮艇も建造されている。


 戦前、義勇海軍は指揮艇と併せて、このタイプの高速艇を合わせて8隻建造した。この他に、海辺警察に引き渡された艇も2隻あった。これらは高速艇を操る密輸団の摘発、行動妨害に多大なる貢献を行うこととなる。


 帝国海軍もこの艇の成功に引き付けられたのか、試験的に2隻を購入し、「国東」「渥美」として運用している。また、台湾海上警備隊や朝鮮海上警備隊にも複数引き渡されている。これら引き渡された艇もそれぞれ多大なる功績を残している。特に、帝国海軍では、中部太平洋の諸島防衛作戦に有効という判断を下し、戦略の一部見直しまで行っている。


 一方、この時期世界は大きく動きつつあった。独逸ではナチスが勢力を伸ばし、イタリアではムッソリーニ率いるファシスト党が政権を握っていた。時代は混迷の度を深めていた。


 その間、亜細亜も混沌としていた。満州奪回に失敗した中国では中華民国が支持を失い、変わって共産党が勢力を広げつつあり、蒋介石をいらだたせた。そして、ついに昭和12年7月7日に両軍は再び衝突することとなる。


 この中国内戦は長期化し、結局中華民国が北半分を、共産中国が南半分を分割占領することとなるのは1947年になってからである。


 そして、満州方面でも再び戦火が上がろうとしていた。



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