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対策会議

 



 満州国を震撼させたニュース。それは中華民国海軍が米国と独逸から戦艦ならびに巡洋艦を手に入れたという物であった。


 その後、さらに具体的な情報が入り、戦艦は誤報と判明したが、巡洋艦は事実であった。蒋介石が新たに入手したの艦艇とは、まずアメリカから重巡「ペンサコラ」と軽巡「オマハ」。そして独逸からは軽巡「エムデン」であった。


 「ペンサコラ」は、アメリカの条約型重巡の1隻で、20cm砲10門を持つ。アメリカでは最古参の重巡であったが、義勇海軍からみれば強力な戦闘艦艇である。また、「オマハ」はオマハ級軽巡のネームシップで、世代的には日本の5500t級軽巡に近いが、15,2cm砲を10門持ち、やはり強力な艦艇といえた。


 ちなみに、この「オマハ」に対抗して、日本は重巡「古鷹」を建造している。


 そして「エムデン」は独逸が第一次大戦後に始めて造った大型艦艇である。しかし、ベルサイユ条約下での厳しい条件から、戦闘艦艇ととしては性能が今ひとつであった。ただし、やはり小形艦艇のみの義勇海軍にとっては脅威に違いない。


 これらが戦力化されれば、義勇海軍、ひいては満州国は蒋介石軍に大きく遅れをとり、さらに青島に軍港を作られれば、それこそ黄海の制海権を奪われかねない。


 義勇海軍ではさっそく対策会議が開かれたが、戦力増強と情報収集による敵動静の徹底研究以外、方策はなかった。


 義勇海軍ではただちに戦力増強策が協議された。


 艦隊司令の白根少将。教育隊司令の尾張上尉。戦隊司令の大貫中校に各艦の艦長。大亜細亜造船の北上技師ともう一人、満州国軍の将校が集まり対策が協議された。


「艦艇の戦力増強についてはどうなっている?」


 会議が始まると直ぐに白根は北上に問う。


「まず後4ヶ月もすれば「流星」級3,4番艦が竣工します。また、新たに5,6番艦の建造も承認され、既に資材の発注に移っています。この他に漁業保護船、つまり対潜艦についても新たに2隻が配備されますが、こちらは艦隊戦には数としては含めれません。」


 北上が書類をめくりながら現況を話す。


「わかった。では人事面ではどうか、尾張上尉?」


 尾張上尉も海軍からの流れ組であるが、6年ほど海軍兵学校で教官をしていたので現在教育隊司令である。彼の訓練は厳しいの一言であるが、反面をユーモアもわかる人物で、生徒からも評判の良い人物である。


「人事面では、現在の建艦計画であるなら、乗員に不足は生じません。むしろ余裕があるくらいです。さらに、教育教範も整備しつつあるので採用枠を大きくするのも不可能では有りません。」


 これは満足すべき報告である。


「わかった。では北上技師。早急に中国海軍の艦艇を凌駕できる艦艇を設計、量産できるかな?」


 白根は視線を北上に向ける。


「残念ながら無理です。時間無制限なら可能でしょうが、時間が限られていると考えるなら不可能です。」


 中国海軍の購入艦艇を凌駕する性能となると、最低限重巡クラスの船を作らねばならない。しかし、そうなると設計や建造の手間は駆逐艦の比ではない。加えて、乗員の育成も急がねばならない。


「王少尉。中国海軍の艦艇がこちらに回航されるのはいつかな?」


 今回ただ1人出席している正規軍人、満洲国軍の王情報将校であった。満州国軍は、中華民国やソ連の侵攻を警戒しているので、早いうちから情報収集組織を作っている。もちろん、日本軍の肝いりだ。


「最初の艦艇が回航されるのは2ヵ月後と見られています。少なくともその4ヵ月後には最後の艦艇が青島に到着するでしょう。」


 王少尉の情報が正しければ、その後艦艇の乗員育成に1年と見積もっても16ヵ月後には戦力化されてしまう可能性が高い。それに対し、義勇海軍は少なくとも同等の戦力を揃える必要があった。





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