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言っていい冗談

作者: タンク
掲載日:2026/10/31

 本文においての主題は、タイトルにもある通りです。

 よくある言葉。特に子ども時代に聞いた、あるいは子どもと接する職業の人は言う側になっているもの。


「言っていい冗談と悪い冗談があるよ」


 これに対して、私自身、昔から疑問ではあったのです。

(冗談の良い悪いはどこで判断するんだろう?)

 と。


 幼い頃、これを周囲の大人に聞いても答えはなかった記憶があります。


 しかし最近わかった……というか、学生時代にはなんとなくこの疑問に対しての答えは出ていました。その言語化に、最近になって成功したというだけのこと。


 今回は私が他者とコミュニケーションをするうちに気付いた、「言っていい冗談」と「言ってはいけない冗談」の明確な違いを、ここに書き記しておこうと考えています。




 ①冗談の秘密。


 冗談とは、コミュニケーションにおいては必要不可欠のものではありません。日常の会話の中で、ちょっとしたアクセントになるだけ。相手を笑わせることができれば、友好的な関係をより築きやすくなるという類のものです。


 会話を人間にとってなくてはならない塩と例えるなら、冗談は香辛料(スパイス)になります。塩は摂らなければ生きていけない。香辛料はなくても困りはしないけど、あった方が刺激的になる。

 そんな立ち位置にいるのが冗談というコミュニケーション手段です。


 そして冗談には、一つの隠し事が存在します。



 それは「侮(・)辱(・)を(・)内(・)包(・)し(・)て(・)い(・)る(・)」ということです。



 一つの例を挙げて、その説明をしましょう。


 休み時間にグラウンドでサッカーをしようと集まった男子が、誰をキーパーにするかを決めかねている状況があるとしましょう。

 キーパーはゴールからあまり動かないため誰もやりたがらないのは、子ども時代の思い出を振り返れば容易に想像できると思います。


 しかしそんな状況で、少しぽっちゃりした太田(おおた)くんが周りの子たちに向かって、

「ゴールはおいどんに任せるでごわす! どんなシュートも止めるでごわすよ!」

 と、相撲取りの真似をしつつ冗談を言ったとしましょう。


 この場合、上述した冗談には「太田くんが太っている」ということに対する侮辱が内包されています。

 しかし太田くん本人がそれをネタにして冗談を言ったため、これは「言ってもいい冗談」になるということになります。


 これが冗談に隠された一つの秘密です。

 あらゆる冗談には、こうした側面があり、必ず「誰かに、あるいは何かに対しての侮辱を含んでいる」のです。


 また上述したような、自分自身に向けられた侮辱を含む場合は、どれも「言っていい冗談」ということになります。


 自身の身体的特徴を挙げて笑いを取ろうとする行為は、他でもない自分が許容しているためです。



 これの代表例は芸人さんであれば、「トレンディエンジェル」のお二人がわかりやすいかと思います。


 若くして毛髪が薄くなっているお笑いコンビのお二人は、そのことをネタにして数々のお笑い番組に出演。今や名前を聞いただけで顔が思い浮かぶほどの有名人であることに、疑問を投げかける人はいないでしょう。


 世間一般には他者を「ハゲ」と表現するのはとても侮辱的であると、言ってはいけないことであると教わるし(事実、私自身もそうだと思うのですが……)、本人がそれを「笑いのネタになる」と判断して笑いを取ろうとするならば、それは「言ってもいい冗談」へと変化するのです。



 私はこれを「自己許容型の冗談」と呼んでいます。自分が許しているから成立している冗談。そのまんまですね。


 とはいえこれは、言った瞬間に周りの人が冗談だとわかるため、使い勝手のいいものです。

 ネタにしているのが体型であれなんであれ、「まあ、本人が言ってるならオッケーか」と理解できるため、(その冗談が面白いかどうかは置いておくとして)とても言いやすい冗談になるのです。


 次に挙げる例は対照的に、自己ではなく他者からのものとなります。




 ②冗談の分類。


 ではもし他者が言った場合はどうでしょう?



 先ほどの状況を再利用しましょう。

 キーパーがいつまでも決まらないことに腹を立てたサッカー好きの坂井(さかい)くんが、太田くんに向かって、


「お前デブなんだからキーパーな。ちゃんと守れよ?」

 と言ってしまった場合。この発言は冗談ですらなく単なる侮辱であると誰もが想像できるはずです。


 しかしこれに対して太田くんは怒ることもなく、

「任せてほしいでごわす坂井どの! 横綱級のセービングをお見せするでごわすよ!」


 と返事をすれば?

 そしてそれによって周囲を笑わせてしまえば?



 この場合は少し褒められた状況でこそないものの、冗談にはなると理解していただけるでしょう。

 坂井くんの発言に含まれた「太田くんが太っている」ことへの侮辱を、太田くん自身がネタ振りと解釈してボケた。ということです。


 太田くんは自身が太っていることを特段気にしていない人物であり、端的に言ってしまえば「器の大きい子」であるという印象を受け、また周囲の子たちを笑わせようとする「明るい子」という印象も受けるでしょう。


 こうした他者の身体的特徴などをからかう形の冗談を、「他者許容型の冗談」として私は名付けています。


 しかしここで一つ、覚えておいてほしいことがあります。

 上述した「自己許容型の冗談」が、自分が許しているから成立するもの。であるのに対して……「他者許容型の冗談」は、相手が許してくれないと成立しないもの。という形を取ります。



 そう、坂井くんと太田くんのやり取りには……一つの観点が欠落しています。


 もし太田くんが自身の体型を気にしていたら?

「デブだ」と、「ぽっちゃりだ」と言われることに拒否感を覚える人物であったら?


 もしそうしたコンプレックスを太田くんが抱えていたら……先ほどの状況で彼は坂井くんの発言に対して怒ってしまうでしょうし、周囲の子たちは「おい坂井、今のは良くないって」と注意するはずです。


 こうした「他者許容型の冗談」は、相手がそれを嫌だと拒絶してしまった瞬間に破綻し、ただの侮辱に成り下がります。

 そして坂井くんが、


「いや冗談だろ。伝わんねえかー……」

 と言い訳をしたところで、他者を傷つけた事実は変わりません。


 周囲の子たちは坂井くんのことを「口が悪いうえに性格も悪いやつ」と評価するでしょう。少なくとも私であればそう判断します。


 では「他者許容型の冗談」は一律で「言ってはいけない冗談」になるのか? と言えば、そうではありません。要するに、相手が受け入れやすい形にすれば良いわけです。




 ③冗談の巧拙。


 これまで書き記した事で、「冗談には侮辱が内包されている」ことと、「冗談には自己許容型と、他者許容型がある」ということは理解していただけたかと思います。


 そして自己許容型の冗談に属する全てが「言っていい冗談」であるのに対して、他者許容型の冗談は、状況や言い方などによって「言っていいもの」と「言ってはいけないもの」に分けられます。


 先ほどの坂井くんの発言はとても褒められたものではありませんでしたが、もし坂井くんと太田くんが仲の良い友だちだったら、もっとわかりやすい冗談にできたはずです。


「ひが〜し〜……太田の山〜」

 と坂井くんが言えば、太田くんは塩を撒く動きをしながらキーパーを買って出てくれるでしょう。


 また別のパターンも例に出すのなら坂井くんが、

「さ、出番ですよ! ドドリアさん!」

 と有名某悪役キャラを真似しつつ太田くんに目配せをすれば、


「へへっ! 任せてくださいフリーザ様!」

 と言いながら太田くんは応えてくれるでしょう。


 こうした形であれば、「体型を揶揄(やゆ)する冗談」であっても許容しやすいものになります。

 要するに、しっかりとオブラートに包めばいいということです。


 もししっかり包めていなければ、内側に隠した侮辱が外側に漏れてしまい、受け入れ難くなってしまう。

 もしオブラートが薄すぎれば、内側に隠した侮辱が透けてしまい、相手は拒絶してしまうでしょう。



 スポーツで例えるなら、「他者許容型の冗談」はサッカーやバスケ、バレーなどのチームスポーツにおける「パス」に似ています。


 良いパスならシュートやスパイクがしやすく、悪いパスであればそもそも受け取ることさえできない。


 しかもその状況において「いやー今のパス受け取れないかー、お前じゃ無理か」と言うのは良くない言い方だとわかるように、「いやー今の冗談のつもりだったんだけど、お前には伝わんねえか」と言うのもまた、言い訳がましく侮辱的であるということが伝わるかと思います。


「自己許容型の冗談」は自分で直接シュートやスパイクを狙って得点に繋げるものであり、「他者許容型の冗談」は他者へパスをする事で得点を狙う協力プレイであるということです。


 そうしたことを踏まえると、相手のことを理解すればするほどに、仲良くなればなるほどに、「この人はこういう言い方を嫌がるな。こういう言い方が好きだな」ということが分かってきます。


 他者への理解度がそのまま「他者許容型の冗談」の成功率をとなり、良いパスを出すための準備になるわけです。


 こうしたことを理解せず、

「自分が冗談だと思ってるからオッケー」

「むしろこれを冗談と思えない相手の器が小さいだけ」


「これ愛あるいじりだから」

「冗談ってわかんねえか、お前は」


 などと言うのは言語道断であり、「冗談が侮辱を内包している」ことを理解していないことを証明しています。


 何より成長途上にある子どもたちにとって、こうした言語化は難しく、大人でさえこの仕組みに気付いていない人がいるのです。


 しかしながら、この後に書くことを踏まえてコミュニケーションに臨めば、笑いを取る……とまではいかないまでも、「この人は明るい人だな」と、「コミュニケーションに前向きだな」と相手に思ってもらえるはずです。




 ④実践編。


 さてそれではこのあたりで、普段私が冗談を言う際に気を付けていることを伝えておきます。


 冗談を言うにあたって最も簡単な方法は、ズバリ「架空の属性を付与する」ことです。

 これは長々と説明するより、状況を用意する方が理解しやすいでしょう。



 これは私の学生時代に実際にあったことです。掃除中にふざける男子に向かって真面目な女子が、

「ちょっと男子ー、ちゃんと掃除してよー」

 と声をかけた状況がありました。


 私はその女子と仲が良く、また真面目に掃除をしている側だったため、すかさず、

「ほんと……男ってバカばっかり……」

 と腰を捻りながらアンニュイな表情とともに彼女に冗談を言いました。


 すると、彼女だけでなく近くにいた子たちを取り巻いていた不満そうな雰囲気は笑顔とともに霧散し、楽しそうに笑ってくれたのです。


 この場合、私は自分自身に「オカマである」という架空の属性を付与して冗談を言いました。今回は自己許容型での一例ですが、こうした手法はかなり応用が効きます。


 たとえば、


「そういえばお前ってさー」

「なに?」


「歴史上の人物でいえばジャンヌダルクな所あるよな」

「この例えで海外に飛ぶことある!?」


「そういうとこが」

「どこが!?」


「旗持って突っ込んでいくのが基本戦法なとこ?」

「ツッコミ違いでしょ!?」


「ま、とはいえヒロイン感が足りないか」

「殺すぞ」


 という会話があった場合、友人に対して「ジャンヌダルクである」という架空の属性を付与したため、これは他者許容型になります。


 そしてこのような形で冗談を言った場合は、自己であろうと他者であろうと、すごくわかりやすい冗談になるため、相手側も非常に受け入れやすいものとして理解してくれます。


 なぜなら「そんなわけないだろ」という部分が前提に存在しているからです。

 また自分でも他者でも、対象にとってあり得ない前提であればあるほど、いわゆる「ツッコミどころ」が多くなり、会話を発展しやすくなります。


 ちなみにこうした「他者許容型の冗談」の代表例は、モノマネ芸人さんです。

 彼らのネタは、歌手や俳優といった芸能人の仕草などを誇張して笑いを取る形であり、いわゆる「ご本人」が許してくれて初めて成り立つネタです。


 もしそのご本人が不快感を示して「やめてほしい」と言った場合は、そのネタを封印することもあるそうです。


 学校などの教育機関ではよく「人の真似をしてはいけないよ」という言葉を耳にするように、他者の真似をするという行為自体が、侮辱を内包することは明白です。

 それでは文字数も多くなってきたので次で「まとめ」といたしましょう。




 ⑤まとめ。


 それではこれまで書いたことをまとめておきましょう。


 一つ、「冗談には侮辱が内包されている」


 二つ、「冗談には大きく分けて二つの種類があり、自己許容型と他者許容型がある」


 三つ、「自己許容型は全て言っていい冗談になるが、他者許容型は状況や言い方を工夫する必要がある」


 四つ、「冗談には侮辱が内包されているため、他者が拒絶した際に言い訳は通用しない」


 これくらいでしょうか。

 それではこれで終わりとします。思ったよりも長くなりましたが、もしこれを読んだ方がいれば、ここに書き記したことを記憶の片隅にちょこっと置いて置いてください。


 それではさようなら。

 今日も良い一日を。

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