第1章「新しい春、新しい先生」
*これは実際に経験した中学2年生頃の経験をもとに書いた小説です。「全10章」*
*"二年生になれば、何かが変わると思っていた。でも、学年が変わっただけで、私の心まで変わるわけじゃなかった。"
春。
私は中学二年生になった。
一年生の最後の日から、少し時間が経った。
「二年生になったら、今度こそ変わりたい。」
そんな気持ちは、どこかにあった。
朝から学校へ行きたい。
教室にも入れるようになりたい。
普通に授業を受けたい。
そう思っていた。
けれど、新学期が始まっても、私は朝から学校へ行くことができなかった。
二年生になった最初の日も、私は別室の時間に合わせて学校へ向かった。
学校に着くと、下駄箱で靴を履き替える。
そのまま職員室の前を通って、本館にある別室へ向かう。
廊下を歩きながら、私は少し緊張していた。
一年生のときとは、また少し違う。
先生も変わる。
環境も変わる。
「今年はどうなるんだろう。」
そんなことを考えていた。
別室へ入ると、去年からお世話になっていたT先生がいた。
そして二年生からは、もう一人、別室を担当してくれる先生が増えていた。
N先生。
「おはよう。」
先生たちが声をかけてくれる。
「おはようございます。」
私は小さく返した。
新しい先生がいる。
それだけでも、少し緊張した。
二年生になった初日。
N先生が、
「ちょっと先生連れてくるね。」
と言って、一度別室を出ていった。
しばらくすると、N先生と一緒に一人の先生が入ってきた。
新しい養護の先生だった。
「こんにちは。」
優しい声だった。
私は、
「こんにちは。」
と返した。
最初に思ったのは、
――優しそうな先生。
それだけだった。
まだ、どんな先生なのかは分からない。
何を話せばいいのかも分からない。
だから、少し距離を置いていた。
一年生のときの養護の先生とは、一年間かけてたくさん話せるようになった。
だから、新しい先生ともすぐに同じようになれるとは思っていなかった。
それでも先生は、優しく笑っていた。
無理に話しかけてくることもなかった。
その日のうちに、新しい担任の先生も別室まで来てくれた。
女性の先生だった。
「今年一年、よろしくね。」
「よろしくお願いします。」
それだけの短い会話。
でも、先生がわざわざ別室まで会いに来てくれたことが、少し嬉しかった。
二年生になっても、私の学校生活は大きく変わらなかった。
朝から登校することはできない。
別室の時間になったら学校へ行く。
下駄箱から職員室前を通って、本館の別室へ向かう。
そこでT先生やN先生と話す。
自分のことをしたり、先生と何気ない会話をしたりする。
教室へ行くことはできなかった。
でも、無理に行こうとも思わなかった。
「今はこれでいい。」
そう思うようにしていた。
T先生とは、以前から話していたこともあって、比較的話しやすかった。
N先生とも少しずつ会話するようになった。
「今日どう?」
「眠いです。」
「昨日遅かった?」
「ちょっとだけ。」
そんな何気ない会話。
それだけでも、私は楽しかった。
新しい担任の先生も、ときどき別室へ来てくれた。
「今日はどう?」
「普通です。」
「そっか。」
まだ、たくさん話すことはできなかった。
でも、先生が来てくれることは嬉しかった。
私は一年生のとき、先生との関係を作るのに時間がかかった。
だから、二年生も焦らなくていいと思っていた。
新しい先生とは、これから少しずつ知っていけばいい。
そう思っていた。
そして、新しい養護の先生。
初めて会った日から、先生は時々私の様子を見に来てくれた。
「元気?」
「……はい。」
「無理してない?」
「大丈夫です。」
まだ私は、「大丈夫」という言葉を使っていた。
本当のことを話すのは怖かった。
この先生に話していいのか。
どこまで話していいのか。
まだ分からなかった。
だから、最初の頃は必要最低限の会話だけだった。
でも、先生は急かさなかった。
何度か顔を合わせるうちに、少しずつ挨拶以外の会話もするようになった。
二年生になってからも、私は朝から学校へ行けなかった。
それでも、別室へ行けば先生たちがいる。
「おはよう。」
と言ってくれる。
話をしてくれる。
それだけで、少し安心できた。
一年生のときとは違う。
新しい先生たちとの一年が始まった。
私はまだ知らなかった。
この新しい養護の先生と、少しずつ話すようになることを。
そして、二週間ほど経った頃、私がずっと言えずにいたことを話そうとすることを。
でも、そのときには――
先生は、すでに私のことを知っていた。
二年生の春。
私の新しい一年は、まだ始まったばかりだった。




