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今年のコメはどうなんだよという話

作者: 暇庭宅男
掲載日:2026/09/17

久方ぶりの雨年(あまどし)である。

ここ、4〜5年くらい、夏の渇水が常態化していたから、百姓としては別にそんなに悪くはない気持ちだ。もちろん野菜なんか作ってる人にとっては地獄の天気なのは言うまでもない。(秋野菜作ってらっしゃる方、大丈夫でしょうか。日照不足とか、野菜果物については結構心配してます)


さて9月も折り返しということで、そろそろ今年のコメについて、皆さん気になっていることだろうと思う。こんなにびしょびしょ雨が降って、コメは大丈夫なのかと。


結論から言おう。全国的には大丈夫である。そもそもコメは、雨なんかいくら降っても困らない。夏から秋の快晴があれば、イネ自身の光合成の勢いもなお素晴らしいだろうが、今年くらいの気温であれば、別に快晴なんかいらない。曇りでだってちゃんとコメはできる。


今年、日本全体のコメの供給で良かったことがもう一つ。比較的、北陸……それも、新潟あたりのコメの出来がいいことだ。出来がいいというのは、コメの等級のお話である。


スーパーに並ぶコメは、当然だが一等米と呼ばれる最もよい等級のコメだ。パールライスなどという言葉はもはや死語だが、白さのなかに透明感とツヤがあり、炊き上がればふっくらピカピカのおいしいご飯になる。そういうものしかふつう流通には乗らない。


去年のコメの暴騰を覚えておられるだろうか?あの米価の高騰の仕組みは、テレビでさんざっぱら特集を組んでいたのでわざわざ暇庭が説明する必要もないのだが、テレビでなかなか触れなかったところがひとつあるので百姓として補足させてほしい。


2024年の夏、北陸のコメはフェーン現象の絡んだ高温障害が余りにもひどく、一等米がガクッと減ったのだ。覚えている限り、新潟の半分以上のコメが二等米になった。確かそう記憶している。山形もかなり凄惨な状況で、コメは無くはないが主食用として出せる等級のよいものが少なくなってしまったのだ。だから2025年、コメはあれだけ高くなった。色々粗はあるがそれが百姓からの意見である。


ま、脱線はこのくらいにして。今年は西日本は相変わらず猛暑でとてつもない様相だったが、東日本の米どころは、8月以降は雨が多くなり殺人的な猛暑は免れた。

これは結果的にイネにとってはよかったのだ。特に8月後半からは、夜の気温が24℃以下に下がる日も増えた。夜の気温がしっかり下がると、イネは夜の間、穂に栄養をしっかり送り込むことができ、コメの品質がよくなる。収穫量は平年並みくらいだろうが、主食用として堂々と売ることのできるちゃんとした品質のコメの割合はだいぶ増えたはずだ。


強いて言えば食用米の増産を請われてわざわざ休耕田まで稼働させたような農家さんは、買取価格が下がったので憤懣やる方ないだろう。

しんどい思いして田を作ったのに別に実入りが特別いいわけでもないのだから。

つれーよね……主食生産の哀切さとは、すなわち金持ちも貧乏にも全員分コメを回さねばならぬため買取価格がそんなに上がらないことに尽きる。あっおい脱線2回目だぞ俺、いいかげん本題に戻ろう。


米価は機械の値上がりと肥料の値上がりの2つを踏まえて考えれば、もう2023年以前の水準まで下がることはない。ないが、同時に去年のような異常な暴騰も終わりだ。来年夏までは、10キロ4000円などというとんでもない値段になることはない。断言していい。そんなに供給が追いつかないなどということは今年はありえない。




とまあ。出費に頭を悩ませる主婦/主夫/家庭内会計課の方々には、ひとつ不安要素が消えたということを申し上げたところで、暇庭個人の話に移りたいと思う。


暇庭家は、今年はちょっといつもの年と違う。何が違うのか?ズバリ追(・)肥(・)を(・)し(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)のだ。 


ふつう梅雨の終わりころに1度、硫酸アンモニウムを面積1反あたり15kgほど追肥するのだが、今年はしなかった。というのも暇庭宅男自身が前から患う躁鬱の悪化、父は2年連続で夏風邪をひいてまる1ヶ月も衰弱していたし、母も病状かんばしくなく、祖母は股関節炎で病院にかかり……と、今夏の暇庭家は健康面でボロボロもボロボロ。田んぼは稗の除草剤をやった以降は水の管理しかできなかったのだ。まったくひでー夏だったなあ……。


で、追肥をしないとどうなるか。という話である。当然だが肥料をあげたときよりは収穫量は落ちる。去年水不足でイマイチだった暇庭家の収穫量は、今年は肥料がなかったことでまたもイマイチということになる。1反で10俵(600kg)を目指すコメ農家の中で、暇庭家の田は1反8俵くらいだろう。肥やしを欲しがる性質のあるひとめぼれなんかさらに減る。ガーンである。


嘆き節を語りだすとキリがないので、いいところも語ろう。追肥なしというのは、コメの味という面では実はよい影響がある。

窒素肥料がバチバチに効いていると、コメは穂を大きくするため量が取れるのだが、でんぷんを米粒の中にため込むはたらきが少しだけ鈍って食味が落ちる。(コメにこだわりない人も分かるくらい差が出る)逆に肥料のない状態では穂は小さく、収量は減るが、でんぷんをギュッと米粒の中に蓄えるために食味は良くなる。あんまり説明が上手でなくて申し訳ないが、要は肥料が少ないとより美味しいコメになることを主張したいのだ。


今年は田植えの前に入れた肥料以外は、もともと土のなかにあった肥料分で生育後半を乗り切った。多分とっても美味しいお米になっているはずだ。


そんなわけで令和になってから最も美味しいコメを期待できる暇庭家の田んぼ。相変わらずグズグズと続く秋雨に苛立って舌打ちすることもあるが、収量と引き換えに素晴らしい美味しいコメになるだろう。肥料代を払わなかった事を考えれば差し引きのマイナスも大したことはあるまい。田植機のローンも返せる。あんまりネガティブになることはない……ないはずだ。たぶんね。


仕事をやっていれば、それがいつでも順調ではないのはむしろ自然なことだ。ヨットが向かい風に対してもジグザグに前に進めるように、ゆっくりでいいし回り道をしてもいい。道行きを楽しむのがお得というものだろう。

肥やしをやれなかったのでハッキリ減収するだろうが、なに、こんな年もたまにはあるものだ。


ちなみに硫酸アンモニウムも価格を見ると3年前のほぼ2倍近くの値上がりとなっている。来年からはそもそもの追肥計画と収量目標を見直さねばならないだろう。もしかしたらペレット鶏糞の元肥えのみで走り切るやり方は悪くないのかもしれない。

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