勇者と王さま
「おお、勇者よ! 死んでしまうとはなにごとだ!」
目が覚めると見覚えのある広い部屋にいて、目の前には僕を魔王討伐に送り出したあの王様がいた。
この王様はただの村人だった僕を勇者に祭り上げたくせに、量産品の剣一振りと小銭だけ持たせて追い出したとんでもないケチである。
「あれ……? 僕は魔王に負けて死んだはずじゃ……?」
「実はお前が心配でこっそり後をつけておったのだが、お前が負けたのを見て回収して戻ってきたのだよ」
「あの場からって、そばに魔王がいたはずでは!? いったいどうやって……」
「魔王を昏倒させてその隙にな。なに、背後から一撃しただけだ、おそらく気づかれておらん」
「そんなことができるんなら、そのまま魔王を倒したらよかったのでは……?」
「よく聞け、勇者よ。わしはこの国の王だ。国民を守る義務がある。そのわしが魔王を倒したところで、称賛は得られても一銭の得にもならん。しかし、平民のお前が命を懸けて戦うとなるとどうだ。その姿に心打たれた民や貴族たちから寄付ががっぽり集まるのだ」
「寄付って、そんなの僕、受け取ったことないですけど……」
「おかしいと思わなかったか? なぜ魔物しかいないダンジョンの奥に人間用の武器や道具が落ちているのかを。あれこそ寄付(のごく一部)を利用して用意したものなのだ」
なにか一部聞き捨てならない言葉が聞こえた気がしたけれど、とにかく僕が目の前の王様に助けられたのは確かなようだ。
「とにかく王様、助けてくださりありがとうございました。僕はもう一度鍛えなおしてから、今度こそ魔王を討伐してみせます。それでは」
踵を返し再び旅立とうとする僕の背中に王様が声をかけた。
「そうだ、勇者よ。ひとつ言い忘れておった。今回の回収と蘇生の手数料は徴収しておいたからな」
僕はそう言われてはじめて気づいた。
最後の記憶からちょうど半分ほど軽くなった財布の重さに。




