何かあってもそれは画面の中で
掲載日:2025/11/25
何かあってもほとんどのことは現実感がない。
手のひらより少し大きな、光る板の上の色が変わるだけだ。
そして、大した話でもないことを、さも重要に大げさに言っていたり、何を言いたいのかわからないリアクションだけしていたりもする。
そうしてまたすこしだけ板を擦ると、違う色違う音、手触りなく香りなく。
窓から見える信号が変わる。
赤から青へ。
大した何かはないけれど、何だか理解している気もするし、それにつられて車が走り出す音の響きも腑に落ちる。
さっき見てた、今年一番のニュース?なんだっけ?
可愛い猫の動き? どうだったっけ?
見ていたときはとても楽しくて次から次へとショート動画を流し、しかし、見終えても何も残らず時間が経った後悔ばかり。
この光る板で得たものは後悔ばかり。
何か得ようと指を擦るも、魔法のランプを擦るように願いを叶えてはくれない。
自分の願いさえ、ショート動画の雑音に飲み込まれていく。
眠りにつこう、夢のほうがまだ現実感がある。
気づくと、夢の中で思い出すのは、日中の自分の行動だけだ。
後は光る板を擦る指先。
現実であった失敗と、無駄な時間を感じた後悔。
ふわふわとする、まとまらない意識。
わずなだけど現実に着陸して、脳内の火花が飛び散る。
これだ。これを火種にして世界を、意識を見渡す灯りとしよう。




