第6話『輪郭視の副作用 ― 世界がひとつ、ずれていく』
輪郭視の制御に少し自信を持った僕は、
(……これって、他の女子にも通用するのか?)
という、冷静さと煩悩が半々の危険な疑問に取り憑かれていた。
もちろん、真面目な理由だ。
あくまで能力の検証だ。
……たぶん。
休み時間。
教室にいる女子たちを見渡す。
藤堂さん(真面目系メガネ)
夏目さん(陸上部でスタイルがいい)
柴田さん(ちょっとギャルっぽい)
(……よし、順番に“輪郭視ON”だ)
深呼吸。
視線へ軽く意識を集中し——
輪郭を“強調する感覚”を引き上げる。
すると。
女子たちの動きが「遅れる」
藤堂さんの腕の動きが、
ほんのわずかに——0.2秒ほど遅れて残像のように見えた。
(え……? 何これ、バグ?)
次に夏目さんを見る。
走っているフォームが、一瞬だけコマ送りのように止まる。
そして――
瞳の部分だけ、霧が濃くなる。
表情が“消える”。
(ちょっ……やばくない? これは……重い……!)
---
そして、ギャル系・柴田さんに輪郭視を向けた瞬間
強調された輪郭の線が——
ビリッ、と音もなく揺れた。
(……え?)
揺れた輪郭線は、一度“外側にズレて”から元の位置に戻る。
まるで、身体のアウトラインだけが世界から剥がれてしまったかのような奇妙なズレ。
柴田さん本人は気づいていない。
ただ普通に席で友達と笑っている。
(……これ、ただ“身体ラインが強調される”だけの能力じゃない……)
さらに異変が…。
柴田さんが友達に向かって笑った瞬間。
瞳は霧に包まれて見えないのに——
笑っていない“もう一つの口元”が、輪郭視にだけ映った。
(……は? ちょっと待て……!)
本体の笑顔とは違う。
輪郭の裏側に存在するかのように、
“無表情の口元”が浮いていた。
(なにこれ……“二重の顔”?)
心臓が跳ねた瞬間、輪郭視が暴走しはじめる。
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― 女子たちが「二重化」しはじめる
視界の中で、
藤堂さんは“輪郭だけが遅れて残る”
夏目さんは“霧の瞳がさらに曇る”
柴田さんは“二つ目の表情が重なって見える”
そして——
三人とも、表情が同期していない。
笑っているのに、霧の奥の“もうひとつの顔の気配”は笑っていない。
(やばいやばいやばい!!
これ……もしかして、俺が見てるのは……
本体の“裏側”とか……?
人間の輪郭の奥にある、別の層……?)
鳥肌が立つ。
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そして教師・三条先生を見た瞬間
教室の後ろに立つ先生に視線を向けた。
三条先生の輪郭は——揺れない。
二重化もしない。
霧も濃くならない。
ただ一言。
「……見えちゃったのね、悠斗くん」
瞳は霧に覆われているのに、
確かに“こちらを見透かしている”気配だけが伝わる。
「先生……いま、何が……」
三条先生は軽く微笑んだ。
だがその笑みの奥に、
教室の女子たちとは“違う深さ”の霧が揺れていた。
「——そろそろ説明してあげなきゃいけないわね」
(……何を?
俺の“見ているもの”は……いったい何なんだ?)




