第4話『放課後の怪異と、先生の影』
放課後。教室はすでに人気がなく、カーテン越しの夕日が長い影を落としている。
あかりと一緒に帰ろうとしていた僕は、何か違和感を覚えた。
(……あれ、さっきまで教室にあった机の位置、微妙に変わってないか?)
廊下に出ると、空気がひんやりしていた。
視界はいつもの通り、女性の瞳は霧に覆われ、輪郭だけが鮮明に見える。
(なんか……昨日より強くないか? 輪郭視……)
廊下を歩いていると、遠くの方からかすかな足音が聞こえた。
だが振り返っても、誰もいない。
「あれ、誰だろう……?」
あかりも同じように顔を見回すが、やはり誰もいない。
ただ、廊下の端に置かれたロッカーの影だけが妙に濃く見えた。
近づこうとすると——
「……誰かいる……?」
廊下の奥で、ロッカーがスッと揺れた。
風はない。
揺れ方も、人が触れたような自然さではない。
(……怪異だ……?)
背筋にぞくっと冷たいものが走る。
僕は思わず目を逸らした。
だが輪郭視のせいで、あかりの体のラインまで不自然に強調され、理性ギリギリ。
「あ、悠斗、見すぎ! こわっ!」
「いや見てない!! 見てないってば!!」
小さなパニックを抱えつつ、廊下のロッカーに目をやる。
すると、その陰から淡い人影の輪郭がスッと浮かび上がった。
(……まさか……人影まで輪郭化……?)
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その時、後ろから声がした。
「悠斗くん、あかりさん……放課後まで残っていたのね」
三条先生だった。
彼女は静かに、しかしどこか冷たい微笑を浮かべて立っている。
輪郭はくっきりしているのに、瞳は霧に隠れたまま。
「えっ、先生!? どうして……」
「見えないのね、あなたたちには……この世界のほんの一部しか」
先生の言葉に、寒気が走った。
同時に、廊下の人影がゆらりと揺れる。
輪郭だけが鮮明で、瞳は見えない。
「悠斗くん……あなたの目、確かに異常ね。
でも、その“異常”は偶然じゃない」
(……偶然じゃない……?)
あかりが小さく声を上げた。
「悠斗……なんか……見ちゃった……?」
見たくなくても、輪郭視が暴れ、理性ギリギリの状況で人影の輪郭まで浮かぶ。
僕は頭を抱えながら、息を呑んだ。
そして三条先生は、にやりと笑う。
「この現象は……始まったばかりよ」
廊下の人影が、ゆっくり僕たちの方に近づく。
瞳は霧に隠れたまま、輪郭だけが異様に鮮明に揺れる。
(……これは、ただの視覚トラブルじゃない……
世界そのものが、少しずつ変わり始めている……!)




