公演団-4
公演団-4
ミレリアは公演団の一室のベットで横になっていた。そのそばを、ルシエラが付きっ切りで看病している。
強姦犯を殺したリュウにお咎めは無かった。非は明らかにあちらにあったし、肝心の首謀者であった有力者の馬鹿息子が、唯一逃げおおせた一人であったことが幸運だった。
とはいえ流石に人を殺してしまったという事もあり、この街で外に出るのは控えるように、とのことになった。
他の団員も、リュウを少し遠回りに見つめるようになった。父親がリュウを売るときに、売値が下がらないように、リュウがドラゴンであることは伏せていたのだ。リュウがドラゴンであることは、誰も知らなかった。公演団のオーナーは「騙されたな」とブツブツ言ってはいたが、それでも売れっ子のミレリアを守ったのは事実ではあるので、それ以上は何も言わなかった。
リュウはミレリアの部屋の前で壁にもたれかかっていた。ルシエラには部屋に入らないように言われていたのだ。リュウはルシエラが苦手だったが、この言葉は正しいと思っていたので、それに従った。
ルシエラが他の用事のために部屋から出ていった。リュウが壁を見つめていると、部屋の中からミレリアの、か細い声が聞こえてきた。
「リュウ・・・そこに・・・居るの?」
「うん・・・」
リュウはそれだけを言った。ミレリアが続けた。
「部屋に・・・入ってきて・・・」
リュウは部屋のドアをそっと開けた。リュウが入ってくる音を聞くと、ベットで壁側を向いていたミレリアの体が、一種だけこわばった。
それを見たリュウは、少し離れた場所に椅子を引いて、そこに腰かけた。ミレリアが壁側を向いたまま、リュウに喋る。
「リュウが・・・私を助けてくれたんだね・・・ありがとう・・・」
「うん・・・」
リュウはそれだけを言った。ミレリアは自分の恩人に、恐怖に負けて礼も言えない自分、などというものを許せないのだろう、とリュウは考えた。ミレリアが続けて言う。
「リュウ・・・そんなところに居ないで・・・もう少し近くに来てもいいよ」
「いや・・・ここでいいいよ」
リュウはこれは断った。きっとそれには耐えられないだろう、とリュウは考えた。
ミレリアは体を震わせて泣いていた。屈辱と怒りで、アイツらに対して、何もできなかった自分に対して・・・
リュウはそんなミレリアを、そっと見守っていた。




