公演団-3
※結構えぐい描写があるのでご注意ください
公演団-3
「ミレリアがさらわれた!」
公演団が騒ぎになった。街中で攫われたので、それを見た住民が公演団に伝えたらしい。団員が手分けをして、ミレリアを探すことになった。
ルシエラが青い顔をしながら、団員が探す場所を、それぞれ地図で割り当てている。リュウはその割り振りを聞く前に、すでに飛び出していた。
・・・・
ミレリアは川沿いの廃屋に連れ込まれていた。口に猿ぐつわを掛けられて声が出せない。体を動かそうとしても、手が背中で縛られて、何もできない。周りの男たちを見ると、以前、舞台裏でミレリアを襲った男がいる。ミレリアは全てを察した。ミレリアはこういった時にどうすればいいのかを考える。・・・そして、以前聞いた、ルシエラの言葉を思い出した。
「どうしてもね、力が違うからね。逆らうと体力を使い果たして死んじまうのさ。だからね・・・力を抜いて・・・頭を空っぽにして・・・耐えるんだよ。アイツらが・・・飽きるまで・・・」
目を閉じて、ミレリアはルシエラの教えに従う・・・
抵抗をやめたミレリアを見て、男たちが口々に囃し立てた。
「お、こいつ諦めたぜ」
「もう少し抵抗してくれた方が楽しいんだけどな」
「まあいいや、さっさと脱がそうぜ!人魚のアソコってどうなってるんだろうな?」
「横になってる、とか聞いたことあるぜ」
ガハハハッと男たちが野卑た笑い声を挙げた。
ミレリアには、何も聞こえていない。それは一晩中、続いた。
リュウがその廃屋を見つけたのは、すでに明け方だった。中に入ったとき、それを目にした。
何人かの男はすでに飽きてしまって、半裸で雑談をしていた。三人ほどの男が、一人の少女にのしかかっている。少女は虚ろな目をして、こと切れた人形のように動かない。少女はミレリアだった。
リュウの頭の中が真っ白になった。そして昔、父と交わした会話を思い出した。
・・・・
「お父さんはどうやってドラゴンになったの?」
幼いリュウは父親の背中を見て聞いた。
父は思い出すように、言葉を紡いだ。
「昔な・・・仲間に馬鹿にされたんだ。海竜なんて何の役にも立たないだろう、と」
リュウの一族は海を泳ぐ海竜だった。父は続ける。
「それで・・・キレちまってな。その時にどうしてか分からんが、ドラゴンになっていた」
リュウには、普段はとても温厚な父がキレるなんて、信じられなかった。
「その時に、馬鹿にしてきたやつを殺してしまってな・・・それでこんなところまで流れてきちまった。母さんにも苦労を掛けた・・・」
父は後悔するように、噛みしめていった。
「お前も気を付けろよ、リュウ。俺たちドラゴンが何にキレるかは、キレるまで自分でも分からない」
・・・・
「コロス!!!!!!」
リュウはブチ切れた。
リュウはドラゴンだった。
乱痴気騒ぎをしていた男たちの目の前に突如として、クマのような大きさのドラゴンが出現した。ドラゴンは爪を振り上げると、雑談をしていた男たちを一瞬で血まみれの肉塊へと変えた。ドラゴンはそのままミレリアの周りにいた男たちに向かっていく。男たちは着るものも着ず、裸足で逃げ出した。ドラゴンはそんな男たちを容赦することなく、背中から襲う。逃げ切った一人を除いて、男たちは皆、死体になった。
全てが終わり、人型へと戻ったリュウは、頭が真っ白になったまま、全ての機能を停止したかのように膝を付いて止まった。
近くに来ていたルシエラ達は、悲鳴を聞きつけて廃屋までやってきた。ルシエラは血まみれになった廃屋の光景に青ざめながらも、目の片隅に移ったミレリアを見つけると急いで駆けつけた。息があることを確認して安心すると、持っていた毛布でミレリアを包み、泣きながら抱きしめた。
「頑張ったね、ミレリア・・・アンタはよく耐えた。偉いよ、ホントに・・・よく・・・」
他の団員達もやってきた。凄惨な光景に、膝を付いて止まっているリュウ、ミレリアとそれを抱きしめるルシエラ。どうしていいか分からず、皆は呆然とその光景を見つめていた。




