リュウとミレリア-2
ミレリアはリュウを見つめる。未だに信じられないが、記憶の中の彼と、目の前の彼の姿が一致する。
ミレリアの呼びかけに答えた、その声も、記憶の中の彼の声と一致する。
なぜ、1000年前の彼がここに居るのだろう?それは気になる。
ただ、それよりも……彼の目。あの目は、間違いない。罪の濁流に呑まれた者の目。かつて、自分も陥った、その目
どうすればいい?私は、どうすればいい?
ミレリアは考える。再び記憶の図書館に潜る。探し物は1000年前の書架にあるはずだ。
ミレリアは片っ端から記憶を漁る。
懐かしい記憶
楽しかった記憶
辛かった記憶
屈辱の記憶
別れの記憶……これだ……
「あの時の廃屋の近くの広場で待ってます」
リュウに送った、最後の手紙の記憶。宮廷に献上されたミレリアが、最後にリュウと会うために送った、手紙の記憶。
ミレリアは、その記憶を、書架から取り出した……
「あの手紙、読んでくれたんだね?」
ミレリアは、リュウに語り始める。これが正解は分からない。でも、これしかない。
「まさか1000年もかけて来てくれるとは……思わなかったけど」
リュウの反応は無い。だが、ミレリアは、続ける。
「会えて……嬉しい。あの時……最後に、話を、お礼をしたかったから……」
リュウが、少しだけ、反応した。ミレリアは、続ける。
「あの廃屋で、アイツらに襲われた私を助けてくれた時のことを……ちゃんと、目を合わせてお礼を言えていなかったから……」
リュウが、一言だけ、呟いた。
「あの時……守れなくて……ごめん」
ミレリアは、かぶりを振った。
「いいえ、貴方は助けてくれた。守ってくれた。アイツらは、なんで河沿いの、あの廃屋に私を連れ込んだか、分かる?アイツらは事が終わったら、私を殺して、河に捨てるつもりだったのよ。でも、貴方が来てくれたから、私は助かった。貴方は私を守ってくれたのよ。悪いのはアイツらなんだから、貴方が謝らないで。貴方は、私の、命の恩人なのよ。今、私がここに居るのは、貴方のおかげ。ありがとう。本当に感謝しているわ。だから……もう……謝るなんてやめて……」
「お前は!ミレリアを!守れなかっただろうが!!!」
リュウの心に突き刺さった、ルシエラの言葉。ルシエラの刺。
それが、リュウの心を、蝕み続けていた……
力が無いことが罪だと、言われている気がした
無力なお前が悪いのだと、言われている気がした
だから渇望した。力を。罪悪感から逃れるために、力を欲した
「渇望」
渇くものが水を欲するかの如く、望み続ける。
しかし、飲んでいるものが、海原で飲む海水の如くあれば、渇きなど癒えようはずもなし。
リュウが本当に欲しかったもの……
「貴方は、私の、命の恩人なのよ」
「だから……もう……謝るなんてやめて……」
それは、ミレリアの、この言葉だった
リュウの目に涙が浮かび始めた。その顔に、表情が戻り始めた。
竜王は、リュウは、泣いた。声を上げて、子供のように、泣いた。
リュウは、救われたのだ……
ミレリアは、リュウを見つめた。とても優しそうな目で。まるで、母親のような目で。




