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千年竜  作者: ikhisa
終章
42/46

リュウとミレリア-2

 ミレリアはリュウを見つめる。未だに信じられないが、記憶の中の彼と、目の前の彼の姿が一致する。

 ミレリアの呼びかけに答えた、その声も、記憶の中の彼の声と一致する。

 なぜ、1000年前の彼がここに居るのだろう?それは気になる。


 ただ、それよりも……彼の目。あの目は、間違いない。罪の濁流に呑まれた者の目。かつて、自分も陥った、その目

 どうすればいい?私は、どうすればいい?


 ミレリアは考える。再び記憶の図書館に潜る。探し物は1000年前の書架にあるはずだ。

 ミレリアは片っ端から記憶を漁る。


 懐かしい記憶

 楽しかった記憶

 辛かった記憶

 屈辱の記憶

 別れの記憶……これだ……


「あの時の廃屋の近くの広場で待ってます」


 リュウに送った、最後の手紙の記憶。宮廷に献上されたミレリアが、最後にリュウと会うために送った、手紙の記憶。

 ミレリアは、その記憶を、書架から取り出した……


「あの手紙、読んでくれたんだね?」

 ミレリアは、リュウに語り始める。これが正解は分からない。でも、これしかない。

「まさか1000年もかけて来てくれるとは……思わなかったけど」

 リュウの反応は無い。だが、ミレリアは、続ける。

「会えて……嬉しい。あの時……最後に、話を、お礼をしたかったから……」

 リュウが、少しだけ、反応した。ミレリアは、続ける。

「あの廃屋で、アイツらに襲われた私を助けてくれた時のことを……ちゃんと、目を合わせてお礼を言えていなかったから……」

 リュウが、一言だけ、呟いた。

「あの時……守れなくて……ごめん」

 ミレリアは、かぶりを振った。

「いいえ、貴方は助けてくれた。守ってくれた。アイツらは、なんで河沿いの、あの廃屋に私を連れ込んだか、分かる?アイツらは事が終わったら、私を殺して、河に捨てるつもりだったのよ。でも、貴方が来てくれたから、私は助かった。貴方は私を守ってくれたのよ。悪いのはアイツらなんだから、貴方が謝らないで。貴方は、私の、命の恩人なのよ。今、私がここに居るのは、貴方のおかげ。ありがとう。本当に感謝しているわ。だから……もう……謝るなんてやめて……」


「お前は!ミレリアを!守れなかっただろうが!!!」


 リュウの心に突き刺さった、ルシエラの言葉。ルシエラの刺。

 それが、リュウの心を、蝕み続けていた……


 力が無いことが罪だと、言われている気がした

 無力なお前が悪いのだと、言われている気がした

 だから渇望した。力を。罪悪感から逃れるために、力を欲した


「渇望」

 渇くものが水を欲するかの如く、望み続ける。

 しかし、飲んでいるものが、海原で飲む海水の如くあれば、渇きなど癒えようはずもなし。


 リュウが本当に欲しかったもの……


「貴方は、私の、命の恩人なのよ」

「だから……もう……謝るなんてやめて……」


 それは、ミレリアの、この言葉だった


 リュウの目に涙が浮かび始めた。その顔に、表情が戻り始めた。

 竜王は、リュウは、泣いた。声を上げて、子供のように、泣いた。

 

 リュウは、救われたのだ……


 ミレリアは、リュウを見つめた。とても優しそうな目で。まるで、母親のような目で。

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