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千年竜  作者: ikhisa
終章
41/46

リュウとミレリア-1

 巨大なドラゴンが帝都に向かっていると聞き、ミレリアと近習の不死隊は、宮殿から出ている最中であった。外の長い階段を下り、踊り場に差し掛かろうとしていた。その時に、凄まじい速さで迫りくる、竜巻を伴ったドラゴンを目にした。

 宮殿から外へと続く、広い階段の踊り場。その巨大なドラゴンは踊り場に辿り着くと、変化を解いた。一人の男がその踊り場に降り立った。

 ミレリアは括目し、杖を構えた。周りの兵士たちも各々の武器を構える。

 男は、構えない。でも多分、そんなことは問題ではない。


 兵士たちは直感した。彼らの全細胞が言っている。絶対に……無理だと。

 ミレリアは男を見て、戦慄し、鳥肌が立った。ドラゴンであることは間違いない。ただ、先ほど見たドラゴンは、百年前に戦った竜王ウロボロスなど比ではない、巨大なドラゴンであった。ミレリアの千年の記憶をもってしても、こんな者、あんなモノは見たことがない。間違いなく、この男は、この時代の新たなる竜王。


 ミレリアは目の前の男の顔を見つめる。ふと、違和感を覚えた。どこかで、見たことあるような気がする。でも思い出せない。とても古い記憶のような気がする。

 それに男の目、アレは見たことがある。いや、見たことがあるというのは、正確ではない。あの目は、身に覚えがある……


 ミレリアは周りの兵士に告げる。

「……私、一人で戦います。皆さんは、下がってください」

 兵士が答える。

「し、しかし」

 ミレリアは、それに、目の圧で返す。二度、言わせるな、と。

 兵士たちは、男を遠巻きにしながら踊り場を回り、階段を下りて行った。

 全員が踊り場から出たのを見ると、ミレリアは踊り場を、巨大な渦を巻く水泡で包んだ。


 踊り場を下る兵士が悔しそうに言う。

「我々では、足手纏いということか……」

 だが、正直なところ、少しだけ、ほっとしていた。

 踊り場の下から、兵士が振り返る。巨大な水泡は渦を巻き、中で何か起こっているのかが、外からでは分からない。

 だが、きっと、あそこで、帝国の最後の戦いが始まるのだろう……


 ミレリアは目の前の男を見た。兵士を逃がしても、水泡で閉じ込めても、男はなんの反応もない。

 暫く様子を見ていたが、攻撃してくる気配はない。

 もう一度、男の顔を見つめる。私は……彼を知っているような気がする。敵ではない。むしろ、親しい間柄だったような気がする。多分、とても古い記憶だ……


 ミレリアは、自身の記憶の図書館に潜り始めた。

 ミレリアは潜る。膨大な記憶を、辿る。


 100年前 傾国の魔女

 いや、もっと古い……


 200年前 水王

 もっと、もっとだ……


 300年前、400年前

 まだ、見つからない……もっと、古い?


 500年前 守護者、国母

 まだ?もっと?


 600年前

 700年前 冥府の女王

 800年前

 900年間 百年寵姫


 深い……とても、深い……記憶の奥底


 1000年前

 ……まだ、ミレリアが、ただのミレリアであったころの記憶


 居た……まさか……そんな……ありえない……でも……



 ミレリアは記憶から浮上する。1000年後の、今、目の前に居る男を再び見た。


「……リュウ?」

 ミレリアの言葉に、ようやく男は反応した。

「ミレリア……」

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