終章の序章-2
リュウが、テントから出てきた。客人の対応をしていたハスキルがそれに気が付いて、竜王となったリュウに近づいてくる。
「もう起き上がって大丈夫なのでしょうか?酷い怪我でしたが」
そう言って竜王の顔を見たハスキルは、その表情に気が付いて、恐怖して目を見開いた。
表情のない、虚ろな、それでいて、何者にも止められない、それを確信させる表情。
ハスキルは内心で呟く。
(不味いぞ、不味い。この男……壊れた)
竜王はハスキルに、そのままの表情で聞く。
「ミレリアは……どこに?」
ハスキルは慌てて、答える。
「……今は……帝都に居るようです」
竜王はハスキルに、そのままの表情で聞く。
「帝都の……どこ?」
ハスキルは知らない。目配せをして、他の者に聞く。その者が言った。
「……どうやら、帝都の中心にある、宮廷に居るようです」
それを聞くと、竜王は突然、ドラゴンに変化して、その場から飛び立った。
「追え!」
ハスキルが周りの飛竜に指示をした。悔しいが、岩竜である自分たちでは追いつけない。
ハスキルは、その巨大なドラゴンを見送るしかなかった。
リュウ
竜王。虚ろな表情のない、力の塊。信じがたい、巨大な海竜。その体躯、間違いなく、歴史上最大
竜王はその巨体をうねらせながら、帝都に向かって行く。凄まじい速さだ。飛竜ですら追いつけないものが出ている。
帝国軍の守る砦が近づいてきたが、そんなものは気にも留めない。帝国のバリスタが竜王に狙いを付けようとした瞬間だった。突如として巨大な水柱が現れ、バリスタを、兵士を、砦を、飲み込んでいく。もはや水柱というレベルではない。これは竜巻だった。
竜王は竜巻を伴って、ただ、ただ、進んでいく。何も気に留めない。誰にも止められない。竜巻を誰が止めらるのか、台風を誰が止められるのか。それはもはや、災害だった。
河が溢れ、堤防が決壊してく。家が流され、人々の悲鳴が聞こえる。
冷徹にして無慈悲。善もなく、悪もない。なん意志もない、巨大な力の塊。ただ、その物理演算に従って、ただ、そこに存在する。こういった災害を、人々は古来より、こう呼んで恐れる。
これは、神の裁きなのだと……
帝都の中心まで来た。洪水で、もはや帝都中が水浸しだ。一頭の飛竜のみが、竜王に追従していた。四竜を除き、最速の飛竜。名をボロスと言う。
「ミレリアは、あの宮殿に繋がる長い階段の途中にある、踊り場に居るようです」
ボロスはミレリアの場所を竜王に伝える。それを聞いた竜王は、一言だけ言った。
「俺、一人で行く」
竜王は、階段に向かって飛ぶ。
ボロスはほっとした。もう行きたくなかったのだ。ここまで羽ばたいてきた来た自分を、褒めてやりたかった。
ボロスはかつて、オルドロスの部下だった。彼は、最強のドラゴンはオルドロスだと信じていた。彼に憧れていた。
リュウは史上最強だろう。オルドロスよりも間違いなく強い。だが、彼は、アレは、ボロスが憧れていた強さではない。
なんなんだ、アレは!
もう竜王だけでも構わないだろう。帝国最強であろうが、仮に四竜が蘇って、まとめて立ち向かおうが、あんなもの、止められるはずがない。もう決闘だろうが、なんだろうが、興味などない!
ボロスは、今になって、ようやく震え始めた。




