終章の序章-1
ヴォルスとの激戦を終えて、大きな怪我を負っていたリュウは、しばらくの間、意識が無くなっていた。三週間ほどして、ようやくベットから目覚めた。
頭がボーっとしている。リュウはテントの中にいた。周りには、誰も居ない。
リュウは、自分の手を見つめる。ヴォルスを喰った感触が残っている気がした。
リュウは、感情の無い目で、空間を見つめる。少しづつ、頭がはっきりとしてきた。
(ようやく、ここまで来たのか……これでやっと、ミレリアの元へ行ける。長かった)
1000年を越えて来てからの、今までの旅路を、リュウは回想していく。
最初にヴォルスとルネに助られた。そして戦場に行き、オルドロスとミレリアの戦いを見て、自分の無力さを知った。リュウの胸に刺さった、ルシエラの言葉。それと現実を見て、リュウは力を渇望するようになった。
次にフローゼの元で魔術を学んだ。反魂の研究に嫌悪感を抱いて、彼女を裏切って、喰った。
アルベストのところには、招待されていった。初めての決闘で勝ち、彼を喰った。
ヴォルスとは親友になった。互いに約束をして決闘をした。それで勝って、彼を喰った。
……あれ……?
フローゼ
今思い返せば、魔術のこと以外にも色々と話しをしていた。もっと彼女と向かい合えば、もしかしたら、もっと楽しい時間もあったかもしれない。
アルベスト
弱点を探すための会話だったけど、それでも彼との会話は面白かった。もっと色々な話を聞きたかった気がする。
オルドロス
一方的に嫌っていたけど、よく考えたらあんまり喋ったこと無かった。一度、ちゃんと話してみるべきだったかも。
ヴォルス
親友になった。初めてできた親友だった。あんなに心から楽しかった時間はもうないだろうな。
……あれ……?おかしいな…………変だな……
俺…………
なんで
あの人たちを、喰ったんだろう…………
人は罪を犯すとき、
それが罪だと気が付いていない
終わってから、それが罪だと気が付くのだ
気が付かずに罪を犯し続けると
それは自分の後ろに負債として残り続ける
そして、気が付いて振り返ったときに、それに直面することになるのだ
積み上げられてきた罪、その濁流に
リュウは振り返った。
「喰うとは、喰われる側ももちろんだが、喰う方にも覚悟が必要なのだよ」
濁流に飲み込まれる瞬間、アルベストが言った言葉が、リュウの脳裏によぎった……
何かが、リュウの思考リソースを喰いつくした。リュウは、その機能を、停止した。
リュウは、無表情のまま、その演算の片隅で、自分が何をすべきだったのかを考える。
俺は……俺は……俺は……
俺は……俺は……俺は……
俺は……俺は……俺は……
そうだ……
俺は……ミレリアへ会いに、行かないと……




