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千年竜  作者: ikhisa
第四章
33/46

黒き飛竜オルドロス-2

 広い草原で二人の男が向かい合っている。ヴォルスとオルドロスだ。周りには二人の決闘を見るために、多くのドラゴン達が詰めかけている。例によって、酒も売られているし、賭場も開かれている。レートは6:4くらいで、オルドロスが優勢だった。昔からヴォルスとオルドロスと戦ったらどちらが強いのか?と言うはドラゴンの酒場での定番の話題で、一対一ならオルドロスが勝つのではないか?という事は言われていた。

 突如として二人ともドラゴンになった。決闘が始まったのだ。


 ヴォルス

 飛竜たち一族の長。その姿は巨大な青い飛竜


 オルドロス

 戦場で最も高名な飛竜。その姿は刃物のような漆黒の飛竜


 両者の体躯は、互角!


 飛竜同士の決闘は、二通りに分かれる。地上で戦うか、空中で戦うか。

 地上での戦いは、リュウとアルベストのような巨竜同士のド付き合いになる。だが、空中のでの戦いは、趣が変わる。空中で飛翔能力を失う損傷を受けたら、そのまま落下して死ぬからだ。そのため、勝負が決まるときは一瞬で決まる。どちらになるかは、事前に打ち合わせて決めるのではない。その時の雰囲気で決まる。

 ヴォルスが飛び立った。オルドロスもそれを追うように飛ぶ。今回は空中戦になった。

 オルドロスは、ヴォルスのこの選択が意外だった。ヴォルスは片目が見えない。空中戦では無視できないハンデになるはずだ。

(舐めてるのか?)

 オルドロスは、キレはしないが、少しだけイラっとした。


 オルドロスは、ヴォルスのことをエライやつだと思っている。飛竜というピーピーうるさい連中の長なんて、面倒な役割を、文句も言わずにやっている。オルドロスにはそんな生き方は興味ないが、それはそれとして、やっているヴォルスのことを、エライと思っていた。

 なので、ヴォルスがどことなく、自分を軽んじているように見えるのが気に入らない。俺がお前を見ているのに、なんで、お前は俺を見ないのだ、と。


 オルドロスとヴォルスは、空中で互いの背後を取るために、互いに熾烈な旋回を繰り返す。空中戦なら、背後を取った方が圧倒的に有利だからだ。

 攻防の最中、オルドロスはふと疑問に思った。ヴォルスは片目が見えていないはずだが、本当は見えているんじゃないか?オルドロスはこれを確かめることにする。

 オルドロスは自然に演じられる攻防の最中、一瞬だけヴォルスの片目の死角に出入りする。少しだけヴォルスの首が動いた。死角を補うために首を動かしたのだろう。オルドロスはもう少し確かめるために、次は本格的に死角に潜り、軽く溜めない複数の魔法弾を放った。威力は無いが、空中戦ではこれでも決定打になることがある。ヴォルスはこれを避けられずに、喰らった。かろうじて急所は外れている。オルドロスは死角から出た。やはり、見えていないと考えて良さそうだ。

 オルドロスは、通常の熾烈な攻防に戻る。死角は意識しない。ヴォルスの脳裏から、死角に潜られた、という意識が薄れるのを、待たなくてはならない。オルドロスは、次に死角に潜るときは、勝負を決める時だと決める。


 長く続く攻防。そろそろ頃合いだろう。オルドロスは、急旋回してヴォルスの死角に潜る。魔法弾は使わない。使うと魔力の波動が出るし、外れることも多い。首元に突っ込んで嚙み砕くつもりだ。

 突っ込む前に、軽くフェイントを入れる。見えなくても、タイミングだけで合わせられるのを防ぐためだ。翼は最小限にしか動かさない。羽ばたき音を最小限にするためだ。オルドロスは、近づく。あと少し。


 その瞬間だった。

 突如として、ヴォルスがオルドロスの方を向いた。


 やっぱり、見えてるんじゃねーか!


 ヴォルスはオルドロスの突撃にカウンターを入れるように、首元を狙うオルドロスの首筋を嚙み返した。


 ヴォルスはオルドロスを舐めてなどいなかった。舐めるはずなどない。ヴォルスは誰よりも、オルドロスの強さ、怖さを知っている。

 だから何年も前から、欺き続けた。この戦いでも、欺き続けた。ただ、いつか来るであろう、この瞬間のために!


「見てねえフリをして、見てんじゃねーよ……気持ち悪りぃな……」

 これが、オルドロスの最後の言葉になった。変化しているので表情は分からないが、きっと笑っていただろう。


 こうして、オルドロスは敗れた。

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