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千年竜  作者: ikhisa
第三章
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決闘-1

 リュウが研究施設からアルベストの城の部屋に戻ると、使いの者がリュウに声を掛けてきた。

「アルベスト様が御呼びです。部屋まで来るように、とのことです」

 リュウは嫌な予感がした。


 リュウが部屋に入ると、部屋の奥にアルベストがいつものように椅子に座っていた。ただ、それだけではない。他にも何人かの男たちが居る。リュウは直感した。

(バレたな、こりゃ)

 アルベストが机に肘を立てて、両手を組ん見ながらリュウを見つめて言った。

「単刀直入に言おう。君は反魂の研究をやっていない。そうだね」

 今日は珍しく結論が早いな。などと内心で突っ込みつつ、駄目元で答える。

「そんなことはありません。なぜ、そのようなことを?」

 アルベストが少し笑いながら、答える。

「そういうのは、もう辞めたまえ。確かに私は魔術研究には詳しくない。詳しくはないが、君が研究をしていないことは、分かるのだ」

 リュウは、一応聞いてみる。

「どうして、分かるのでしょうか?」

 アルベストは答える。

「人魚だよ。あの研究には人魚が必須のはずだ。フローゼは私に不死の研究成果を提供してくれたが、私も研究に必要なものを提供していた。それが人魚だ。しかし、君から人魚の要求が一切ない。その期間を鑑みると、君は研究をしていない、と結論付けるしかないのだよ」

 やっぱり、それか。リュウは天を仰いだ。リュウもその辺りは分かっていたが、どうしてもそれだけは出来なかった。

(そんなことをしたらミレリアに会う時、俺はどういう顔をすればいいんだ……まあ仕方がない。潮時というやつだ)

 リュウは顔を下ろして、アルベストの顔を見つめた。

(それに、俺は、多分、この人をキレさせることが出来る……)

「私は君のことは嫌いでなかったのだがね。こうなってしまっては仕方がない。私は君を喰うことにしよう。表へ出たまえ。決闘だ。逃げようなどとは、思わない方が良い」

 アルベストが残念そうに言った。


 二人は城の中にある広い中庭の中に立った。城中のドラゴン達はそれを見るために集まっている。長らく四竜の協定によってドラゴン同士の戦いが禁じられていたので、久しぶりに行われる決闘を見るために、皆がやって来たのだ。

 ドラゴンの決闘には立会人も審判も居ない。二人の呼吸が合った時に勝負が始まり、どちらかが相手を喰らうことで終わる。

 リュウとアルベストが向かい合っている。観客のおおむねが、アルベストの圧勝を予想していた。

 突如としてアルベストがドラゴンになった。戦いが始まった。


 アルベスト

 四竜の筆頭。その姿は数多くの古傷を持つ、巨大な灰色の岩竜。300年間、多くのドラゴンを喰らい続けたその体躯は、他の四竜を上回る


 リュウは変身しない。剣を抜いて様子を見ている。ただ、特に慌ててはいない。

 アルベストはそれを見て思う。

(なぜ変身しない。まあ、変身したところで、海竜ではどうしようもあるまい。戦いは始まったのだ。遠慮することもあるまい)

 アルベストが四肢で地面を蹴飛ばして、リュウに突っ込んできた。リュウは突っ込んできたアルベストの頭に飛び乗ると、そのまま頭部を走り抜け、アルベストの首筋にある古傷めがけて、剣を突き立てた。少しだけ突き刺さったが、剣が途中でポキリと折れてしまった。リュウは柄しかない剣を捨てると、アルベストの上から飛び降りて、自分もまたドラゴンに変身した。

 アルベストが勢いのまま右手を軸にして1回転する。リュウが背後でドラゴンになる気配を感じたのだ。だが、居ない。

(一体どこへ……)

 周りの観客が上を見ている。アルベストはそれに合わせて顔を上げて上空を見た。そこで信じられないものを見た。


 リュウ

 四竜を喰らった青い海竜。長い体、長い頭に、長い角。両足は尾と一体化しており、前腕には長い鍵爪がある。その体躯は四竜と比べても何ら遜色ない。


 リュウは空に浮いていた。正確には、自身の魔術で作り出した空中の水隗の中で、泳いでいた。その水隗は、太陽の光を背後に反射しており、神々しさすらある。

 彼は自身の魔術とドラゴンとしての特性を組み合わせることで、海竜でありながら、飛竜のごとく空中を疾走することが可能となったのだ。


「ハアァ?なんで、テメエが、飛んでるんだ?アァァァァァ!?」

 アルベストの言動が、荒々しくなってきた。

 そう、アルベストは、飛竜が、飛べない自分が、大っ嫌いだったのだ。


 かつて、ドラゴン族と言えば岩竜だった。その頑強な体は他のドラゴンとは一線を画し、戦闘においては無類の強さを誇った。彼らに比べたら、飛竜など蝙蝠のようなものでしかない。

 しかし、魔術が広まるにつれて状況は変わってきた。飛竜たちは、その飛翔能力に、魔術による遠距離攻撃を加え、戦場の花形へと躍り出た。彼らに比べたら、岩竜はもはや、ただの露払いでしかない。

 この状況は、ドラゴンの中でも長い歴史を誇る、岩竜達一族の誇りを著しく傷つけた。


「なんで、なんで海蛇野郎が上から目線で飛んでんだよ!舐めてるだろ!あ!?お前、俺のこと舐めてるだろ!実は俺、飛べるんですよー、サーセン、ってか!?どいつもこいつも、コケにしやがって……許せねえ、許せねえよな、おい!聞いてのか!聞いててんのか、つってんだよテメーはよ!あ!?俺は飛んでるから、下からの声は聞こえません、ってか!?お前ホント、マジでムカつくな!駄目だ、コロス!絶対にコロス!ブッコロス!!!」

 アルベストはめちゃくちゃブチ切れた。

 アルベストはどうしようもなく、ドラゴンだった。


 それを見て、リュウはこう思った。

「よし、思った以上にキレたな!」

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