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千年竜  作者: ikhisa
第三章
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研究施設

 リュウとハスキルは馬車に揺られている。帝国外にあるフローゼの研究施設の1つに向かっているのだ。

 フローゼは帝国にあった屋敷以外にも複数の拠点を持っていて、そのうちの一か所で反魂の研究を行っていたという事が、リュウの持つ情報と、ハスキルの調査によって分かったのだ。

 リュウは馬車に揺られながら、目の前のハスキルを見つめた。アルベストはリュウに、自分の部下のように使ってくれ、と言ってハスキルを付けたのだ。アルベストの密偵、と言ってもいいかもしれないが、彼は有能でもあった。気を付けつつも、しばらくは世話になることとなりそうだ。

 馬車が止まった。やや手入れが怠っているが、そこそこ大きな屋敷だった。リュウは馬車を降りて、ハスキルと一緒に屋敷へ入っていた。


 リュウは屋敷の最奥の部屋で、フローゼの研究記録を確認している。量が膨大なので時間がかかるが、専門的な内容であり、ハスキルに見せたいものではない。なので全て一人でやっている。

 記録を読んでいると、研究をしているフローゼが何を考えていたのかが、何となく分かる。フローゼの反魂の研究は、上手くいっていなかった。


「生命力を魔力に変換する、その逆」


 理屈ではそうかもしれないが、それは「物が上から下に落ちるのだから、下から上にも動かせるだろう」というくらい、乱暴な物言いである。やらないといけないことが、全然違うのだ。反魂の研究を皆がやらないのは、禁忌であり研究をすると罰せられるというのもあるが、単純に研究しても見込みがなさそうという点がとても大きい。

 フローゼがリュウを欲した理由は色々とあるが、行き詰まりを見せていた研究に協力できる者が欲しい、と言うのは単純に大きかったようだ。

 ただ、全く成果が無かったわけではないようで、ドラゴンがドラゴンを喰って力を取り入れる特性を応用することで、多少の効果はあるようだ。フローゼは自身が不死を欲していたので、この方向でもよかったのだろう。

 

 何となく状況は分かったので、リュウはハスキルの居る部屋に向かった。ハスキルはフローゼの顧客名簿の方を調査していた。こちらは反魂の研究結果を欲しがる者たち。帝国外の貴族もそうだが、帝国内の貴族の名前もある。アルベストが反魂の研究にこだわっているのは、こちらの関係から来ているようだった。

 リュウには四竜たちによって作られた、彼らの利害関係が分かってきた。

 ヴォルスとオルドロスが帝国に対して戦争を仕掛けて、領土を奪い取る。そこから出た収益で、フローゼから魔術関連の武器を調達する。フローゼはそれで得た資金を使って、反魂の研究を行う。アルベストがその反魂の研究を餌にして、帝国の貴族たちを切り崩す。

 誰かが示し合わせたわけでは無い。それぞれが、自分の個性を生かして好き勝手にやった結果、たまたま歯車が噛み合ってできた、ドラゴンが帝国を喰らうメカニズム。

 この歯車の1つである、フローゼが落ちた。ヴォルスとオルドロスの武器調達は、質は落ちるが代替は効く。魔術は既に、帝国のみの専門分野ではないからだ。しかし、反魂の研究はそうでない。フローゼが落ちて最も影響が大きいのはアルベストだったのだ。

 だが、フローゼの研究はあまり上手くいっていなかった。多少出ていた成果も、ドラゴン以外にはほぼ意味が無い。顧客にはどうやって説明していたのだろうか?顧客名簿と一緒に、顧客への報告書などもあったので、リュウはそちらにも目を通す。

 中を読むと……専門分野の情報量格差を利用した、とても巧妙な嘘八百。「これを飲めば、少しだけ寿命が延びます」と言って、良く分からない錠剤を送ったりしている。どうも、こういった関係は20年ほど前から続けているようなのだが、20年くらいなら不死かどうかなんて証明出来ないので、これで大丈夫だったらしい。

 こんなに簡単に人をだましてもいいのだと、リュウはその独創性に感心してしまった。


 リュウ達は屋敷から出た。リュウの研究施設に関する方針は決まった。リュウにとって帝国とは、ミレリアが居る、以外の意味は何もない。反魂の研究を欲しがる者たちなど、それに輪をかけてどうでもいい。ここはフローゼのやり方をそのまま使って、適当にごまかしておこう。

 後はアルベストをキレさせる方法を探す必要がある。これをどうしたものだろう。リュウにとっては、こちらの方が重要だった。

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