四竜-2
四竜-2
出発の準備を整えたリュウは、見送りに来てくれたヴォルスに礼を言った。
「本当に・・・色々とお世話になりました。こんな手紙と路賃まで用意してもらって・・・何から何まで、ありがとうございました」
ヴォルスは親指を立てながら、笑って言った。
「まあ、気にするな。俺もフローゼには連絡する用事があったからな。そのついで、ってやつだな」
ヴォルスが続ける。
「それと・・・もう俺とお前の関係は、雇用関係じゃない。もう敬語は使わなくていいぞ。実は、俺はあんまり好きじゃない」
リュウは笑って言った。
「分かったよ、ヴォルス。じゃあ、またいつか会える日まで!さようなら」
ヴォルスはリュウを見送ると、議事堂に向かって歩き始めた。しかめっ面の多かったヴォルスだが、久々に晴れやかな気分になっていた。リュウに関しては、出来れば手元に置いておきたい気もしていたが、それでもリュウの意志を尊重した方が良いのではないか、と考えたのだ。
(なんで強くなりたいのかは知らないが、あれは覚悟を決めた目だった。もしかしたら、化けるかもしれな・・・)
ヴォルスが議事堂の階段を上っていくと、途中でルネが階段に腰かけていた。ルネが寂しそうに言う。
「・・・リュウ、戻ってくるよね・・・」
罪な男だな、アイツも、と内心で呟きつつヴォルスが答える。
「しばらくはフローゼのところで世話になるだろうし、まあ、すぐには帰ってこないかもしれんな」
フローゼ、と言う言葉にルネが反応した。
「リュウは、強くなるために出かける、って言ってたけど、なんでフローゼのところに行くの?ねえ、なんで?」
ルネの思わぬ態度にびっくりしたヴォルスが、ルネを見返した。よく見ると、ルネの首元に、見たことのない銀のペンダントが着けられていた。ヴォルスは嫌な予感がしてきた。
「どうしたんだ、そのペンダント・・・」
ヴォルスの質問に、ルネがうっとりしたように答える。
「リュウが、買ってくれたの。今までのお礼だって言って・・・銀だから、黒髪に似合って、素敵なんじゃないか?って」
戦果によって、まとまった報酬を手にしたリュウは、お世話になった礼として、ルネに贈り物をすることにしたのだ。リュウにしてみれば、純粋にお礼のつもりだった。だが、ルネの認識ではそうではなく、もっと特別な意味があることになっている。
「フローゼ?なんで?リュウがフローゼのこと、知っているわけがないよね。私はあの人、嫌いなんだけど。ねえ、ヴォルスが教えたの?ねえ、なんで?」
とうとうルネが、見開いた眼でヴォルスを問い詰めだした。
ルネはドラゴンだった。
ヴォルスは頑張って説明した。なんで俺が・・・、と思いつつ、説明した。
そして決めた。
アイツ・・・次に会ったら、絶対にぶん殴ってやる!




