故郷-1
故郷-1
数か月後、ドラゴン族は再び同じ都市を攻撃した。今度は事前に情報収集を行い、ミレリアが不在であることを確認した上での攻撃だった。ミレリアは多忙であり、一つの戦場に居続けることは不可能なのだ。
この攻撃にはリュウも参加して、活躍していた。以前の戦場の様子を見た際に、城壁の上の兵士はバリスタやクロスボウ、と言った武器が主体だったのを覚えていた。そこで野営地で仲良くなった剣士達と、飛竜に変身できる戦士たちと組んだ。飛竜に城塞の上まで運んでもらって、剣士組が離脱して突撃、そのまま小回りの利かない兵士たちを制圧。その区間の占領を成功させた。
都市の帝国軍が撤退気味で兵数が少なかったこともあり、今回の攻撃は成功し、都市は陥落。ドラゴン族の手の内に落ちた。
・・・・
野営地では祝勝会が開かれていた。ヴォルスも珍しくご機嫌だった。あれほどの大怪我を負っていたオルドロスもそこにいた。何なら今回の戦闘にも参加していた。なんでも「俺たちの重症は、アイツの軽傷だから、あんまり深く考えるな」という事らしい。
リュウも祝勝会に居た。リュウはヴォルスに聞いてみたいことがあったので、ヴォルスの席に近づいた。
「おー、リュウじゃねーか。今回は活躍したみたいだな。俺も鼻が高いぜ」
ヴォルスは酔っぱらいながら、リュウを褒めた。海竜であるリュウは、ドラゴンになっても地上の戦闘ではあまり役に立たない。ヴォルスもリュウの戦闘力に関してはあまり期待はしていなかったので、思わぬ成果を出したリュウを見直していた。
「ありがとうございます」
リュウは素直に礼を言った。そして続けた。
「そういえば以前から聞きたいことがあったんですが・・・」
ヴォルスは「ん?なんだ?」とジョッキを空けながら聞き返す。
「俺たちドラゴン族は、何の理由で帝国と戦っているんでしょうか?」
リュウは以前から持っていた疑問をヴォルスにぶつけてみた。この野営地で目覚めてから様々な人に聞いてみたのだが、皆が「理由は知らないが100年前くらいから戦っている」と言っていたのだ。いい加減に理由を知りたかったので、ヴォルスなら知っているだろうと思って、思い切って聞いてみたのだ。
ヴォルスが酔っ払いながらも、真面目な顔に戻っていった。
「そうだな。そういえば、最近の若いやつは知らないのが多いのかもしれないな・・・」
かつてドラゴン族にはウロボロスという王が居た。その王はミレリアに一騎打ちを挑んだのだが、汚い手段によって一瞬で倒されてしまったと言われている。それ以来、ドラゴン族たちにとって、帝国とミレリアは宿敵として、その名が刻まれた。特にウロボロスの一族にとっては・・・
「・・・一族の誇りのため、ですか・・・」
リュウは少し意外だった。確かに恨む理由にはなるかもしれないが、100年も戦う理由なのか?とは思ってしまったからだ。考え込んでいるリュウを横目に見て、ヴォルスが言う。
「・・・まあ、それは切っ掛けに過ぎなかったのかもしれないな。単純に俺たちが力を付けてきているのに対して、帝国は明らかに弱体化していた。戦争を仕掛けるにはちょうどいい口実だった、のかもしれん」
ヴォルスも原因自体にはあまりこだわっていないようだ。リュウは続けて聞いてみる。
「この戦争はいつまで続くんでしょうか?」
ヴォルスは即答する。
「俺たちが勝つまでだな。ミレリアは強いかもしれないが、奴の居ない戦場では俺たちが優位だ。俺たちが手を止める理由が無い。今回攻め落とした都市は、そのミレリアの故郷らしいからな。これは俺たちドラゴン達にとっても、攻勢を進めるための象徴となる」
ミレリアの故郷?リュウは思いがけずに得た情報を、頭に刻み込んだ。ヴォルスはもう一つのジョッキを全部空けて、ゲップをしてから言った。
「かつての帝国は強かった。強いから、他者から奪ってこれたし、他者も従ってきた。今は逆だ。強くなった俺たちが奪って、何が悪いんだ!」
ヴォルスが一つしかない目を見開いて言う。
ヴォルスはドラゴンだった。




