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頭の中でレディは殺された  作者: 華矢
一章 容疑者の処刑
9/28

口論





五郎も怪しい……そう思い始めたのだ。

今日の五郎は日頃と違い、やけに口が滑らかで、まるで別人のように頭が回っている。

ロープの結び目の異変に気づいたのも五郎だった。



あの五郎が、こんな静謐な観察をするなんて。

これまでの五郎の馬鹿げた振る舞いが、もしこの日のための演技だとしたら……?



「ちょっと待ってください。ぼくは、犯人じゃないです」


「拙者も犯人ではないぞ?」


「嘘つかないで。平気で人を殺すような人間だとは思っていませんでした」


「それはこっちのセリフだ!」


 シンの言葉に、五郎は顔を真っ赤にして反論する。


「二人共静かにしろ!今、言い争ってもなんの解決策にならないだろ?」


 俺は声を張上げ、場を制した。

体内で嘆く疑念を抑え、冷静になろうと努める。

今ここでそんな言い争いをしてもなんの解決策にも導けない。


「まず、ニアの遺体が発見されたのは何時頃だ?」


俺は五郎に目をやった。



「午前5時30分だ。遺体を見た瞬間にシン殿に報告しに行ったぞ」



「昨日と同じくらいの時間だな。シンはその時間帯何をしていた?」



「ぼくは部屋で寝ていたところを無理やり五郎さんに起こされてニアさんの死を報告されたんです」


「何故すぐに俺に報告しなかったんだ?五郎」


「それは....」

口ごもる五郎を、俺はさらに不審に思った。

だが、横からシンが口を挟む。


「第一発見者だから、サブさん見たいに疑われるのが嫌だったって言ってました」



「なるほど、じゃあ何故そんな朝早くに食事処へ朝食を済ましていたんだ?五郎、お前は、昼近くまで寝てるような男だと、ニアがこの前言っている所を聞いたぞ。まさかサブと同じような「音」が聞こえたのか?」



「違うぞ!拙者はただ、お腹が空いて目が覚めたから、食事処に行ったんだぞ」



「本当か?都合よすぎやしないか?」



「ほんとに決まっているだろう!食事処で殺人して第一発見者だなんて馬鹿な真似するわけなかろうっ!」


「お前は馬鹿なんだから大いに有り得るだろ」


「.....バカ?バカとは誰のことを言ってるんだ?シン殿の事だな??」


しらばっくれるような物言いにさらに不信感を抱いた。

怪しい。あまりにも怪しい。

だが、昨日のように早とちりしてはいけない。

無実のサブを処刑した、あの過ちを繰り返すわけにはいかない。


「ねえ...。(勇者)さん。もしぼくと五郎さんのどちらかが犯人って決まったら処刑...今日もするんですか?」


「何を今更、当たり前だ。そんな危ない奴イマジナリー世界において置けない。あまりにも危険すぎる。それに、罪は償わなきゃ、だろ?」


シンと五郎はお互いを敵と見下し、睨み合っていた。



その姿を見ていると、昨夜のサブとニアの激しい口論が能裏に過ぎった。

あの夜、俺はサブを最も怪しいと決めつけ、処刑した。



だが、結局は違って、ニアは殺されてしまったのだ。


シンと五郎、どちらかが犯人である事は間違いない。今回は早とちりせず、用心深く、慎重に判断しなければ。




「ぼく的には、五郎さんが怪しいと思うんです。タイミングが良すぎるし、いつもこんな時間に起きないってみんな言ってました。お腹すいたから朝早く食事処に行ったなんて妙な話じゃありませんか?」



「まあな、そこは怪しいな」



俺はシンの意見に相槌をうった。



「誰だってお腹すいたら食事処に行くのは普通だろ!そこを怪しいと言うシン殿が余程怪しいぞ!こじつけだ!」


この、埒の明ない争いはいつまで続くのだろうか。

そこで俺は、二人にとある提案をした。


「まずは、シン。お前の部屋を調べさせてもらう。」


「部屋...ですか?」



以前見た推理小説では、犯人の自室に証拠が隠されていることが多かった。

例えば、被害者の私物、殺人に関する本、日記帳に隠されたヒントなど。部屋には真実が潜んでいる。





だが、シンの部屋はまるで彼の性格を映し出すように、何も無く、つまらない部屋だった。

ベッド、タンス、本棚。シンプルすぎて、逆に不気味なほどだ。


もし、俺がこの部屋に住んでいたら鬱病になってしまうだろう、きっと。




 殺人の痕跡を探すため、俺は部屋を隅々まで調べ始めた。

タンスの中、ベッドの下、本棚の本を一冊ずつ確認する。

本棚にはグリム童話の本がずらりと並んでいて、一応目を通したが怪しさは何もない。


しかしタンスの奥に、年季の入ったノートを見つけた。

頁をめくると、シンが制作したであろう手書きの童話のような物語が沢山綴られていた。


「ちょっと....それは、読まないでください。恥ずかしいので」


「ダメだ。事件の手がかりが隠されているかもしれないだろ」


最後まで目を通したが、案の定、証拠らしいものは何もなかった。


「ほら....何も無いでしょ?」



 シンは少し気まづそうに、でも安堵したように肩をなでおろした。



「うーん。確かにこの部屋に証拠になるものは何も無いな。次は五郎の部屋に行こう」





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