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僕は君の何なのさ

作者: 枕返し

「海斗、一緒の班になろうぜ。」

「うん。ありがとう。翔真に声かけてもらえて助かったよ。」

「俺が海斗を誘うのなんて当たり前だろ。じゃあ他に入ってくれそうな人探すか。」

「うん。・・・でも、僕あんまり皆と仲良くないから、僕と一緒だと難しいかも・・・。」

「大丈夫だって。・・・まぁ俺もあんま仲いい人いないけど、でも大丈夫だって。」


俺と海斗は幼馴染だ。

俺たちは幼稚園の頃からずっと一緒の親友。

海斗は本当に良い奴で、真面目で優しくて、頭がいい。

だけど大人しくて引っ込み思案な性格だから友達があまりいない。

そんな海斗の態度につられて皆も海斗に距離を感じるんだと思う。

俺は海斗が傷つくのを見たくない、だから海斗は俺が守ってやらなきゃならない。

海斗に俺以外の友達ができるようにしてやらなきゃならない。

俺はこれで間違ってないって、友達のためだから良いことなんだって、そう思ってた。




ある日、海斗が事故に遭った。

怪我は大きくないけど頭を強く打ったらしい。

しばらくして、俺は病院にお見舞いに行った。

「海斗、大丈夫か?」

「はい、えっと、大丈夫、です。」

「海斗?」


その時の海斗の俺を見る目は、俺の見たことのないものだった。



海斗は記憶が一部混濁しているらしく、いわゆる記憶喪失になったらしかった。

「お医者さんによると脳に異常はないし一時的なものらしいです。」

「あ、ああ、そうか。それは、それなら、よかった・・・ですね。」

海斗の他人行儀な話し方に違和感を覚えつつ、そんな海斗に俺自身が距離を感じていた。

まるで俺の親友の海斗ではなくなってしまったような、そんな気がした。

俺の親友は、いなくなってしまったんだろうか?



しばらくして海斗は退院して学校に登校するようになった。

だけど、まだ記憶は戻っていなかった。


「海斗、事故に遭ったって、平気なの?」

「はい。記憶がないとこあるけど、普通に生活はできます。」

「そっか、大変だな。何かあったら言えよ。手貸すからさ。」


退院した海斗はしばらくの間、皆の注目の的だった。

記憶喪失というのも皆の興味を引いた。

俺はそんな海斗に、何故か声をかけづらかった。



「海斗、今日遊ぼうぜ。」

「うん。」

海斗は今日も俺じゃない奴と一緒に帰る。

海斗は変わった。

明るく快活で、友達もいっぱいできた。

俺のことを忘れた海斗は、俺がそうなってほしかった海斗になった。

ただ、その海斗の隣に俺はいなかった。

俺は、一人ぼっちになった。


俺は海斗にとって何だったのだろう。

友達?

親友?

縛り付ける重荷?

それとも・・・。

俺がいなければ海斗は元からああなのだとしたら、俺は今まで、何をしていたんだ。

むしろ海斗がいなければ友達がいないのは、俺の方じゃないか。

俺は海斗を手放したくないから無意識に海斗をああいう性格にしていたのか?

俺にとって都合のいい友達に。

そして、守るんだなんて思っていたのか?

俺が海斗をああしていた張本人なのに?

俺は、海斗の何だったんだろう。


俺はもう、海斗に近づけなくなった。

俺がいない方が海斗は幸せなんだ。




そう思っていたある日、

「翔真、最近僕を避けてる?」

突然海斗に話しかけられた。

「え、な、なんのこと?」

「僕、少しずつだけど昔の事を思い出してきたんだけど、前はもっと翔真と一緒に遊んでたような気がするんだよね。」

「そう、かな。」

「一緒に遊ぼうよ。」

「それは・・・皆と?」

「?そうだけど?」

「俺は、いない方がいいんじゃないかな。」

「なんで?」

「だって、俺、皆とあんまり仲、よくないし・・・。」

あまりにいたたまれず俺はそう言ってその場を去った。

まるで立場が逆だ。

でも、決定的に違うのは海斗は俺以外にも友達がたくさんいるってことだ。





「ねえ!」

俺が一人に慣れたころ、海斗に呼び止められた。

「翔真、どうして僕を避けるの?僕たちずっと友達だったじゃん。」

「それは・・・。」

「僕、記憶なくして変わった?もう全部思い出したよ。そしたらなんで翔真は一緒にいてくれなくなってるんだよ。ねえ、僕、変わった?もう僕は翔真の友達の僕じゃなくなっちゃった?僕は今でも翔真が一番の友達だと思ってるのに。」

友達・・・今の俺にはその言葉は重すぎる。

「でも、海斗には俺がいない方がいいと思うんだ。全部思い出したならわかるだろ?今の方が海斗のためなんだよ。俺と一緒にいたときは・・・間違いだったんだ。」

「なんだよそれ。翔真は僕の・・・・・・友達じゃないのかよ!」

「・・・」

わからない。俺は海斗のことを何だと思っていたんだ?

友達だったら今の海斗のことをもっと喜んで見れたハズだ。

俺は・・・、友達のフリをしてたのかな?

孤独を紛らわすため?

優越感を得るため?

俺には友達なんて、初めからいなかったのかな?


「何か言ってよ!」


「・・・」


「なんだよ、それ・・・。わけわんないよ。・・・翔真にとって、僕はなんなんだよ。」


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