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第九話 早起きは三文の徳

朝目が覚めると豪華な自室に居た。孤児院にいる時とは全然違う景色。愛人として部屋に閉じ込められていた一度目の人生を思い出すからこの部屋は好きじゃない。あの時はここまで豪華ではなかったけど。

 顔を洗って服を着替えて部屋の外へと出る。部屋の外には見張りの騎士が居た。

 「おはようございます。」

 「うわっ!!どこに逃げるつもりなんですか!」

 「逃げるつもりだなんて失礼だなぁ…。」

 「まだ夜中の四時ですよ!?」

 「朝の四時だよ。」

 「夜中に逃げ出すつもりだったんでしょう!?」

 「違うってば!私は孤児院の時も毎朝四時起きだったわよ!」

 「何故?」

 「シスターと朝ご飯を一緒に作る為にね。」

 「………。」

 信じられないという目でこちらを見てくる。信用ないなぁ。まぁ昨日この屋敷に来て、二階から飛び降りた上、髪を自ら切ったり問題行動だらけだから仕方ないのかもしれないけど。

 「貴方の名前は?」

 「ガリバーです。ルナお嬢様の専属護衛になりました。よろしくお願い致します。」

 「そうなんだ!じゃあ仲良くしようね!よろしくお願いします!」

 私はガリバーの手を取り握手をした。

 「じゃあ朝ごはんを作ろうかなー。」

 「朝食はここのシェフが作るので…」

 「じゃあ一緒に作ろう。暇だし。」

 そう言ってキッチンへと向かう。キッチンには誰もいなかった。

 「誰もいないけど。」

 「朝四時に出勤はしませんよ…。朝食は朝の七時頃ですから、朝の六時頃に朝食は調理されるはずです。早すぎますよ。」

 「うーん。でもお腹空いちゃったからご飯買いにいこう。」

 「えぇ!?今の時間はどこの店も開いてるわけないじゃないですか。」

 「パン屋なら開いてるでしょ。」

 「パン屋もまだパンを作ってる時間ですよ!」

 「今から街へ降りたら丁度出来立てのパンが焼けるぐらいだから。」

 「本気ですか?勝手に外出なんてしたら怒られますよ…」

 「勝手になんかしてないじゃん。ガリバーが一緒なんだから。一人で脱走したら大問題だけど。」

 「俺の目を盗んで脱走を企んでいませんか?」

 「信用ないなぁ。首輪でもしていく?」

 「そんなことにしたら虐待で俺がこの屋敷から追い出されますよ!」

 「冗談に決まってるでしょ…」

 「ルナお嬢様は冗談みたいなことをやるからシャレになりませんよ!昨日も二階から本当に飛び降りて俺が保護魔法間に合わなかったら大怪我するところでしたよ!!」

 この人、昨日保護魔法で私を助けてくれた騎士だったんだ。

 「近づくなって言ったのに近づいたからでしょ?」

 「本当に飛び降りるなんて思わなかったから…心臓止まるかと思いましたよ…」

 「ごめんね。助けてくれてありがとう!私あんまり考えなしに行動しちゃうからさ。これからも心臓止まりそうになるかもしれないけど……仲良くなる為にとりあえずパン屋に行こうよ!ね?」

 「………わかりました。今ダメと言って今度は本当に脱走されたら困りますからね。」

 街のパン屋にガリバーと行くことになった。馬車に乗って本来なら行くようだけど、馬車の従者もまだいない為、馬に乗って行こうと言われた。でも私は馬に乗ったことないから断った。歩いたら二十分はかかると言われたけど、普段からそれぐらい普通に歩いてたから全然構わなかった。私達は歩いて移動した。パン屋さんは五時開店だから少しだけ待ったら入れた。ガリバーと一緒に焼き立てのパンを食べた。めちゃくちゃ美味しい。パンプキン達とパンを作って食べたことを思い出す。少しホームシックになって泣いてしまった。

 「ルナお嬢様…。」

 「大丈夫。孤児院のみんなのこと思い出してちょっとセンチメンタルになっただけだから…。」

 私が急に引き取られることになってみんなは驚いただろうな。パプリカは泣いちゃったかな。

 「ねぇ孤児院のみんなの分のパンも買ってもいい?」

 「すみません…。ルナお嬢様が孤児院へ帰ることは禁止されています…。」

 「じゃあパンだけ孤児院へガリバーが持っていってよ。お願い。」

 「その間、ルナお嬢様が一人になってしまいます。許可できません。」

 「ねぇ!ここのパン屋さんは宅配って出来ますか?」

 「近くなら宅配しますよ!宅配の別料金は頂きますがよろしいですか?」

 「ね?これならいいでしょう?」

 「そうですね…わかりました。やっぱり孤児院の暮らしに戻りたいですか?」

 「ううん。この屋敷で暮らすことは実は私が決めたことなの。孤児院で暮らしてもいいって言ってくれたわ。だから後悔なんてしてない。でもやっぱりずっと暮らしてきた家族と急に離れることになったから寂しい気持ちはあるの。」

 「そうだったんですね…。二階から飛び降りる程嫌がっていたのに、結局王家で暮らすことになったから、逆らうことも出来ずに半ば無理矢理引き取られたのだと思っていたので。昨日髪を自ら切ったと聞いて自暴自棄になっているんだと思っていました。」

 私が十二歳までの期間限定だということはほんの一部の人間しか知らない。秘密にしている。だから普通に働いてる屋敷の使用人から見たらそう見えるのは当たり前だ。ガリバーは私のことを心配してくれたんだ。私はガリバーを抱きしめる。

 「ありがとう。ガリバー。こんなに優しい護衛騎士が付いて私は幸せ者だね。」

 「王家は命を狙われる可能性が高いから有能な騎士がたくさんいますが、その中でも成績のいい俺が貴方の護衛に選ばれたのです。何故かわかりますか?」

 「急に王家の養子になったから命を狙われやすいのかな?」

 「違います。」

 「じゃあなんで?」

 「保護魔法、追跡魔法は騎士の中でも俺がトップクラスです。つまりルナ様が飛び降りたり、逃げたしたりした時に役に立つからですよ。」

 「…………。」

 「ルナ様が逃げ出したら俺も俺の家族も路頭に迷うことになりますからやめてくださいね。」

 「自分で王家に入るって決めたんだからそんなことしないわよ。」

 「やっぱりつまんないから出ていくー!とか言って逃げ出しそうです。」

 「………逃げることになったらガリバーの家族が路頭に迷わないようにフォローしてからにするから。」

 「逃げないでくださいと言ってるんです!」

 「わかってるわよ!私は意外と常識人なのよ?孤児院でも家事はなんでもできる優等生キャラだったんだから!」

 「飛び降りる常識人はいません。」

 私のこと問題児にしかガリバーには見えていないらしい。これから信頼回復するには時間がかかりそう…

 帰ろうとパン屋を出ると目の前に馬車があり、アーマーが乗っていた。

 「ルナ。こんなに早起きだなんて知らなかったよ。パン屋に行くなら俺も誘って欲しかったな。」

 「アーマー!どうしてここに?アーマーはまだ寝てるみたいだったから、ガリバーとパンを食べに来たの。ここのパン屋さんとってもおいしかったよ!」

 「そう………ガリバー外出許可はしていないはずだけど?」

 「申し訳ございません…独断で行動してしまいました。処罰は受けます。」

 「え!?なんで!?ガリバーは悪くないよ!私のお腹が空いたからパン食べたいって言ったんだよ?」

 「やだな。処罰なんてしないよ。ルナを守ってくれてありがとう。でもこれからはルナが外出する時、必ず報告してね。俺のこと起こしてもいいからさ。」

 「承知致しました。」

 「ルナ。帰ろう。屋敷の朝食も美味しいよ。」

 「うん!楽しみだなー!」

 私達は馬車に乗り、屋敷へと帰った。アーマーは私が屋敷に来てから一回も喜んだ顔を見たことない。街で遊んだ時はあんなに楽しそうにしていたのに。昨日は目の前で髪の毛切った時に泣かせちゃったし…。今日はアーマーが喜ぶようなことをしてみよう。色々迷惑かけちゃったし。アーマーは毎日退屈だから私を養子に迎えたんだし。私の一番の役目はきっとアーマーを退屈な毎日から解放してあげることだから。つまらない日常程辛いものはないと私も思ってる。少しでもアーマーに笑顔が戻るように頑張らないと。

 馬車での移動の時にアーマーに話しかけられた。

 「ルナって結構誰にでも抱きつくよね。」

 「え?そうかな?」

 「さっきガリバーにも抱きついていたし。」

 「たしかに言われてみればそうかもしれない。」

 孤児院のみんなにも抱きつきまくってた気がする。

 「警戒心とかないの?ガリバーは昨日会ったばかりなのに。そんなに心許して平気なの?」

 「だってガリバーは私のこと心配してくれたいい人だもん。私の護衛騎士になるんだし仲良くなりたいじゃん。」

 「世の中にはルナを騙すような悪い人もいるんだからもっと気をつけた方がいいと思うよ。」

 「誰にでもそんなことしないよ。私だって苦手な人はいるよ?」

 「誰が苦手なの?」

 「貴族。」

 「ふーん。平民なんて虫ケラのような扱いをされるとかそんなことを言われたの?」

 「まぁそんな感じ。」

 「実際に貴族に会ったこともないのに嫌いなんだ。ルナがそんな偏見を信じてるなんて知らなかったな。」

 「………なに?喧嘩売ってんの?」

 「まさか。正直な感想を言っただけだよ。」

 馬車の内の空気が悪くなる。これから仲良くしようって思ってたのに。なんでアーマーは私を怒らせるようなことばかり言うんだろう。

 「ねぇ。なんで私を養子にしたの?」

 アーマーの表情が強張る。

 「………街で過ごした時間が楽しかったから。」

 「じゃあもっと仲良く過ごそうよ。なんでそんないつも怒ってるの?」

 そう言うとアーマーは睨んで答えた。

 「ルナだって俺と仲良くしようだなんて思ってないくせに。黙って外出なんてして逃げるつもりだったの?」

 「ただパンを食べたかっただけだから。」

 「本当はこの家の養子に呼んだ俺を恨んでいるんだろう?俺が一緒に暮らしたいなんて言わなければルナは今頃孤児院で幸せに暮らすことが出来たんだからな!」

 そう言われて気がついた。私が二階から飛び降りた時、一番責任を感じて辛い思いをしたのはアーマーだったんだじゃないかって。たしかに孤児院に連れて行かれるってなった時に仲良くなんてしなかったらよかったって思ったけど。でも……それ以上にあの日は一生忘れることはないだろうと感じる程、楽しかった。あの一日を無かったことになんてしたく無かった。もう一度時間が戻ってもまた私はあの日アーマーの手を引いて遊びに出掛けるだろう。

 「あの日、アーマーと遊んだこと私は宝物のように思ってるよ。もしも、もう一度あの日に戻ることができても私はやっぱりアーマーと一緒に遊びに行くと思う。だってめちゃくちゃ楽しかったもん!だから私はアーマーのこと恨んだり憎んだりしてないよ。また二人で街へ遊びに行こうよ。アーマー忙しいかもしれないけどさ。」

 「俺も…ルナと出会えてよかったと思ってる…。」

 「えへへ!私達きっといい兄妹になれるよ!」

 まだまだ楽しそうに笑ってはくれないけど。少しは距離が縮まったかな?帰ったらアーマーを笑顔にする作戦考えよう〜。

 

 

 

 

 

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