第74話 ハッピーバースデー
「なぁ…アーマーって瞬間移動できるんだよな?」
ナイルが言う
「はい。」
「じゃあ…もしかして次の街までひとっ飛びなんて…まさか出来たりするのか?」
「出来るよ。」
「え!?俺達とこの楽器を乗せた馬車も一緒に!?」
「俺に不可能なんてない。」
アース音楽団のみんながその一言で大騒ぎになる
「うおおおおおおおおお!!すげええええ!!もう生死を彷徨う旅とはおさらばだ!!」
「旅費が浮く!旅費がかからないなんて最高すぎる!!」
「やったーーーー!!ずっと宿に泊まることが出来る!!」
「ま…魔法で瞬間移動するなんて!!!す…凄い!!空間ごと移動するのか!?どういう仕組みなんだ!?魔法に理屈なんてないのか!?」
全員大喜びしているが私は違った
「えぇ…あの生死を彷徨う旅が楽しいのに。移動中が1番楽しいじゃん。やだよ。瞬間移動なんて。」
「ルナが嫌ならやめとく。」
アーマーがそう言うと
「おい!!俺達を殺す気か!!」
「せっかく旅費が浮くのに!!意味がわからないことで駄々を捏ねるな!!」
やいやいと全員で私に抗議してきた
「だって…全員瞬間移動で現れたら大騒ぎになりますよ?魔法使いがいるの知られたら面倒事に巻き込まれそうじゃないですか。私は反対です。」
「じゃあバレない少し手前に瞬間移動して貰えばいい!!」
ジャッカルが言う
「旅がしたいのに…」
「死にたいのか?」
「本当に死にそうになったら瞬間移動すれば良くないですか?」
「アホか!!じゃあ初めから瞬間移動すればいいだろうが!!効率悪すぎだろうが!!」
「旅がしたいの!!生死を彷徨わないと音楽が書けない!!」
「宿にいる方が書けるに決まってるだろうが!!」
「人生にスリルが必要なの!!いい音楽が浮かばない!!」
「安心しろ!ルナの人生は旅をしなくてもスリル満点だ!!」
「宿でごろごろしていい音楽奏でられんのかよ!!」
「当たり前だ!死にかけた方がいい音楽奏でられんわ!!」
「ううぅぅ…。」
「ほら!アーマーにお願いしろ!瞬間移動で次のサーラン街へ連れて行って下さいって!!」
「私が?」
「ルナの言う事しかアーマーは聞かねぇからな!」
「しょうがないなぁ…」
私はアーマーにお願いをする
「私達アース音楽団を次のサーラン街へ連れて行ってくれる?」
「もちろんさ。ルナ。」
光に包まれて私達は瞬間移動する
着いた場所はサーラン街のすぐ近くの道だった
アース音楽団のみんなは初めての瞬間移動魔法に大興奮して騒いでいた
少し歩いて私達はサーラン街へと到着する
「やぁやぁ!!お待ちしておりました!アース音楽団の皆様!!僕はリリーさんの大ファンで!!本当にこの街へ来てくれてありがとうございます!!いい宿をご用意致しましたのでゆっくりと休んでください!!」
サーラン街の町長に大歓迎されて私達は宿へと入った
リリーのファンであろう町長さんは私とリリーの部屋はグレードが1番高いとても広くて快適な部屋を用意してくれていた
荷物を置いて昼食を食べようと出かけようとすると
「ルナ。」
アーマーに声を掛けられる
「アーマーどうしたの?」
「今日はルナの誕生日でしょう?」
「あ。そうだっけ?」
忘れていた。音楽をして旅をしながら生きていると月日の感覚がよくわからなくなってきている
今日が何月何日かなんて確認しないからな…
「これ…俺からのプレゼント。」
アーマーから渡されたものはテディベアだった
しかもこれは…
「もしかして…手作り?」
「うん。ルナのことを思って毎日作るテディベアはとても楽しかったよ。」
「とっても可愛い!!嬉しいわ!!ありがとう!!」
初めてのアーマーに贈った誕生日プレゼントを手作りの花冠にしてから手作りプレゼントの魅力に気づいたのか私へのプレゼントも毎年手作りのものを贈ってくれる
年々クオリティが上がってきていて
今年は遂に手作りのテディベアまで作れるようになっていた
本当に凄い
私はハンカチの刺繍で精一杯なのに
「今夜は俺とデートしてくれない?」
「いいよ。楽しみにしているね!」
今夜は誕生日デートになった
私は今夜着る服を購入しに行かないといけない
「ねぇジャッカル〜。買い物ついてきて〜。」
「仕方ねぇなぁ…。」
私とジャッカルはサンドイッチを軽く食べて服屋へと向かう
服屋に向かう途中、蹲って座っている男の子がいた
銀髪の髪にグレーの瞳
年齢は…10歳ぐらいだろうか
ガリガリに痩せているし
服装もボロボロで今にも死にかけているような様子だった
「ねぇ。大丈夫?」
私は声をかける
「…僕のことはほっといてくれ。」
「だってこのままじゃ死んじゃうよ?」
「いいんだ。死にたいんだ。自分で死ぬ勇気がないからこうして餓死するのを待っているんだ。」
「へぇ〜。」
「…何?そんなの間違ってるとか説教でもするつもり?」
「じゃあ今ここで貴方は死んだ。」
「は?」
「こんにちは!今日から生まれ変わって新しい貴方になったわ!ハッピーバースデー!!」
「頭湧いてんのか?」
「名前はそうねぇ…グレイ!!貴方の名前はグレイよ!!」
「何言って…」
「今日から私がグレイの母親よ!!お母様と呼びなさい!!」
「…。」
私はグレイの手を引っ張り無理やり立ち上がらせる
フラフラとふらいていたので
私はお姫様抱っこで抱えた
軽すぎたので余裕で抱っこすることが出来た
「育ち盛りだから〜パン食べ放題とかにしようか!!」
そう言って私はグレイを抱えてパン屋へと歩き出す
「ルナ…いくら何でも人を拾うのはやめろよ…。」
隣で歩くジャッカルが言う
「はぁ?ジャッカルだってリリー拾ったくせに。」
「それは…!!!」
「私はね。グレイに運命を感じたの。私が育てるからお金の心配ならしなくていいわよ。」
「あのさ…年齢差あんまりないのにお母様と呼ばせるのはキモいからやめろよ…」
「私が育てるんだから当然でしょう?」
「グレイだって嫌だろ…なぁ?」
「…お母様。」
「ほら!聞いた!?私のこと初めてお母様って呼んでくれた!!嬉しい〜!!」
「小さい子に変なことを吹き込むな!!」
「ハッピーバースデー。グレイ。私の名前はルナ。私がたくさん愛情を注いで育ててあげるからね。これからよろしくね!!」




