第67話 苦手な女
元々女という生き物が苦手だ
特にルナという女が苦手だ
女だから大人しくしておけばいいのに
全然大人しくない
いつもうるさい
すぐに調子にのる
自分勝手
我儘
なんでアーマーがこんな女が好きなのか理解不能
指輪なんてつけて喜んでいるアーマーが
哀れに見えてくる
戦争が始まるからというわけのわからない理由で
ルナは2年後に別れようとしているのに
自分が提案したとはいえ
歪な恋人関係を眺めるのは
俺にも責任がある気がして
なんとなく心苦しくなっていく
ルナが2年後別れるからなんて言わなければ
全員幸せになれるのに
アーマーのことを嫌いなわけじゃないくせに
イライラする
むかつく
今日は明日のこの街でのラストライブ前の最後の練習だ
「ロンリーガールを歌います。」
「おっけー。じゃあ練習しようか。」
俺とジャッカルとルナでいつも通り練習をする
演奏を終えると
「もう1回。」
と言うので、また演奏をする
「もう1回。」
…何が気に食わないのだろかいつもの楽しく演奏して歌う様子はない
「もう1回。」
「あのさぁ!!何が不満なわけ?やる気あんの?」
俺は我慢できずにルナに言う
「こっちのセリフなんだけど。何そのやる気のないドラム。」
「はぁ?俺はちゃんとやってる!!お前だろうが!!やる気なく演奏して歌ってるのは!!」
「カイのドラムがやる気ないから萎えた。」
「いい加減にしろ!!いいがかりも甚だしいわ!!楽譜通りにしっかりと演奏してやってなんで文句言われなきゃいけないんだよ!!」
「そんなんじゃないわよ。明らかにいつもと違うもの。いつもはノリノリで楽しそうに叩いてるくせにさ。今日は何?義務でやってるだけじゃない。つまんない音鳴らしてんじゃねぇよ。」
俺は思わずルナの胸ぐらを掴む
「おい!お前ら音楽だけは仲良くしてたじゃないか!!やめろ!!」
ジャッカルが俺を止める
「私はいつも通りですよ。カイのやる気がないだけです。」
「ちゃんとやってるだうが!!つまらない音とか言ってんじゃねぇよ!!」
「だってつまらないんだもん。そんな演奏しか出来ないならもういい。私1人でステージに立つから。」
「…は?」
「今度のステージは特別なの。そんなやる気ない人と一緒にステージに立つなんて恥ずかしい真似したくないの。」
「な…何言ってんだよ…俺はやる気ないなんて言ってねぇじゃねえか。ちゃんとやってるだろう?」
「やってねぇから言ってんだよ。もういい。私1人でステージに立つから。」
「おい!!何故そうなる!!」
「理由は言ったわよ。」
「俺はお前の曲は好きで…」
「そう。カイは私のことが嫌いでも私の曲は好きでいてくれたから今まで最高の演奏をしてくれてた。でも…私のこと本格的に嫌いになって音楽もやる気なくなったんじゃないの?」
「…。」
「私の人格が破綻してるから私の音楽まで嫌いになった?」
「…。」
「私のことを知れば知るほど嫌いになって、こんな気持ち悪い人間が奏でる音が不愉快になった?」
「…。」
「こっちみろよ。」
ルナは俺の顔両手で掴み、むりやり目を合わせてきた
「私がどんなに最低な人間でも…私の音楽は最高でしょう?何よりも音楽を愛しているんでしょう?私の曲を叩いているときが1番楽しそうだったのに…今はつまらなさそう。何も考えるな。私の曲にだけに浸れ。そうすれば最高に気持ち良く飛ばしてやるから。」
この先、ルナがどんな悪事を働こうと
ルナが音楽を奏でるならば
俺は全てを忘れて
全てを許して
ルナの音楽を奏でるのだろう
それはアーマーよりも強く
俺はルナに執着してしまっているのかもしれない
ルナが音楽作る音楽が
最高に気持ち良くて
気分が良くて
楽しいんだ
「もう1回。」
俺はルナに言う
「やれんの?私のこと嫌いなんでしょう?」
「関係ねぇよ。ルナの音楽がこの世で1番最高なんだ。音楽家の人格が破綻してるなんてよくある話だ。俺は…ルナの作る音楽を愛している。」
「そう。じゃあ…もう1回。」
そう言って演奏を開始する
何もかも忘れて俺はルナの音楽に浸る
ぶっ飛ぶ
あぁ…最高に気持ちいい
「いええええええええい!!カイ最高ー!!!」
「いええええええええい!!ルナ最高ー!!!」
一生敵わないんだろうな
このクソ生意気で自己中で我儘で最低で
それでも音楽だけは死ぬほどかっこいい
このクソ女に




